ベン・トー  5.5 箸休め~燃えよ狼~ (集英社スーパーダッシュ文庫) (ベン・トーシリーズ)

【ベン・トー 5.5 箸休め 〜燃えよ狼〜】 アサウラ/柴乃櫂人 スーパーダッシュ文庫

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半額弁当争奪バトルに青春を賭ける佐藤洋は、HP(ハーフプライサー)同好会の面々と共に、従姉の著莪あやめの高校の文化祭に繰り出す。高校生の一大イベントを楽しんでいたが、あの引きが強すぎる少女・あせびちゃんの手作り弁当が事件を巻き起こし事態は一変。佐藤は命懸けの弁当争奪戦に参戦することに…!? その他にベン・トーファンタジー編や、名もなき「狼」をフューチャーした短編、そして禁断の「筋肉刑事(マッスル・デカ)」の一部ストーリーなどを収録! 「狼」たちよ、考えるな、感じるんだ! 箸休めにならない箸休め、庶民派シリアスギャグアクション、灼熱の5.5巻!

ちょっ、巻末の注意書きが本気で怖いんだが!? ま、まあ読者よりも遥かにあせびちゃんに近しい作者や編集部が大丈夫なんだから、読者は大丈夫だよね? ……ま、まさか読者様を差し置いて、自分たちだけお守り実装とかしてるんじゃないだろうな!? 月桂冠半額シールをオマケで付けるよりも前に(いや、これはこれで何気に良かったんだが。ちなみに自分のは槍水先輩Ver.でした)、対あせび用のお守りをオマケとしてつけておくべきだったんじゃないのか!?
これで、そのオマケのお守りシールがボロボロに風化してたらマジ怖いけどw

というわけで、今回は短編集。半額弁当をゲットするために日々スーパーマーケットで激闘を繰り広げる狼ではないために、常に出番の少ない<死神>あせびちゃんも、巻末に注意書き、もしくは責任回避の一文が添付されるほど出ずっぱり。さすがにこんな番外編じゃなきゃあ、彼女が表紙を飾ることはないわなあ。そして、背景のお弁当は劇中を阿鼻叫喚の渦に叩き込んだあせび特製弁当。この弁当の恐ろしいところは、凡百の絶叫手作り料理と違って、味についてはまったく問題ないどころか素晴らしい所なんですよね。食材についても別に特殊なものを使っているわけでもなく、ごくごく普通の食べられるものを使っているに過ぎない。実際、このお弁当の描写ときたら、普段の半額弁当のそれに勝るとも劣らない、ヨダレがたれてきそうな美味しそうな代物で。
それなのに、何故阿鼻叫喚となるのか。それは是非、本文を御覧くださいませ。察しの良い方、観察力の鋭い方は、表紙のお弁当を見たらわかるのかも。<死神>あせびの恐ろしさを、真に味わうはめになるでしょう。いや、マジで美味しそうなんだけどなあ、これ。恐ろしい罠だ。だいたい、「あっちの」お母さんってどういう意味だよ(笑

【鳥になった男たち】
そんなあせびちゃんの大活躍を観覧できるのが、あやめたちの通う高校の文化祭にみんなで繰り出すこの話。淡雪と真希乃の中学生二人組、てっきり佐藤たちの学校に進学するつもりなのかと思い込んでたら、勘違いであやめたちの高校の方だったのか。HP研究会の後輩が出来るのかと思ったのに。まあ、レギュラー化して出番が増えるタイプじゃないしなあ。え? キャラが薄いとかは別に言ってないよ? オルトロス姉妹とか白梅がヤバいとか言ってないよ?
相変わらず、佐藤の中学時代の悪友たちとの武勇伝がアホすぎて面白すぎる。筋肉刑事は風紀的にも危険なのでおいておいてむしろこっちを単行本化するべきなんじゃないだろうか(笑
白梅やオルトロス姉妹にドレスを着せられ、キョドりまくる槍水先輩が、この人はやっぱりかわいいなあ。普段はクールなカッコいい系の美人なんだけど、それが作ったキャラクターというのはもう今となっては明らかで、彼女の本性って間違いなく小動物系なんですよね。いろいろな意味で肉食獣ばっかりのこの作品の女性陣の中で、実は彼女が数少ないカワイイ系というのが、この時の仔犬みたいな先輩の様子からよくわかる。うんうん、かわいいなあ。
一方で白粉はー、この子はーー。黙って大人しくしてれば普通にカワイイ子なのになあ。なんでこんな大残念娘に。なぜかこの子の題材になってしまうようなガチムチなハプニングに巻き込まれる佐藤も佐藤だけど、白粉ははしゃぎすぎだ(苦笑


【首なしの白い巨人】
ベン・トーのキャラクターたちが織りなすファンタジー。そう言えば、元々作者のアサウラさんってベン・トーを書く前はかなりシリアスよりのハードボイルドなタイプの作品を手がけてた人なんですよね。もちろん、これはその頃の作品と違って、ベン・トーに沿ったライトな雰囲気の話なんですけど、ファンタジー作品としてお為ごかしで終わらないしっかりとした世界観の話になっているのがまた素晴らしい。此の人が奇を衒った小手先の人じゃなく、しっかりと実力を有した作家だと言うのがよくわかる。そうなんだよなあ、ベン・トーの最初の一巻の感想じゃあ、「なまじ実力のある作家が本気で手抜きなしにバカやるとこんな恐ろしいものが現実に顕現してしまう」なんて風に書いてたんだっけ。
主人公はあやめ。佐藤は何故かひとりだけ人間ではなく犬畜生のブルドックw こうしてみると、あやめの佐藤の扱い方って、人間が相手でも犬が相手でも変わんないのなー。
いやマジな話、あやめって佐藤が人間の時でも流れ次第で普通に一緒に風呂に入ってきそうなところがあるんだよなあ。
そして、ここでも振るわれるあせびちゃんの猛威w そしてここでもわりとひどい目にあっている槍水先輩。此の人いつからこんな役回りになっちゃったんだ?w


【佐藤洋、十六歳の誕生日】
そっか、あやめと佐藤って誕生日も一緒だったんだよな。彼女が初登場した時にそんなこと言ってたっけ。槍水先輩の優しさが身に染みる、何気によいお話。彼女はこの作品の常識と良識の良心だよなあ。


【名もなき狼たち】
掌編。なんか読み覚えがあると思ったら、スーパーダッシュ文庫の公式サイトで掲載されてたのを読んだ事があったんだった。無名にも関わらず、ほぼレギュラー出演している坊主・顎髭・茶髪の三人の無名の狼たちのお話。無名とは言えこの三人は二つ名持ちとなってもおかしくないような実力派なんですよね。雑魚とかモブとかとは程遠い存在感。何気に挿絵で坊主と顎髭のビジュアルデザインが明らかになったのは嬉しかった。でも、肝心の茶髪はこの期に及んで顔隠されてて残念。ううっ、でもしっかりと特徴であるところの胸は描かれていると言う、なにこのわかってる感は(苦笑


【白粉花の週末】
あ、ある意味自分の趣味趣向に対して一途だよなあ、彼女は。探究に余念がないというか、突き詰める意欲に溢れているというべきか。でも、彼女の嗜好って男同士が云々というのとは別に、単純に筋肉フェチという部分もあるんじゃないだろうか、と美容室のエピソードを見ながら思ったり。でないと、あんな風に触られて喜ぶというのがわかんないし。

【著莪あやめのお見舞い】
発熱でぶったおれたあやめを佐藤が見舞うお話。
この二人の仲って、なんかもう幼馴染とか超越しちゃってるよなあ、というのを改めて思い知らされたり。兄弟とかいうのとも違う、この遠慮の無さ。一緒にいることが自然という距離感の近しさ。
普通に佐藤の前でたんすから下着出すし、彼が部屋にいるときにお風呂入ることにも何も頓着しない。風呂上りに佐藤に髪を梳かしてもらうのは当たり前。熱が高くなって動けなくなったあやめをお姫様だっこでベッドで運ぶのも当たり前。どちらかが熱を出したときは、一緒のベッドで寝るのも自然なこと。逆にいないと違和感ありありで、心細い。
とか、もうそこらの幼馴染とは格が違うから!
今後、佐藤かあやめかに恋人なんかが出来たとしても、その相手は恋人に自分よりも遥かに身近な相手がいるという現実に耐え切れるとは思えない。逆に言うと、こいつらの恋人になれるような人間って、それを受容出来る人間じゃないといけないってわけで……とてもじゃないけど、そんな人間がいるとは思えない。
とはいえ、じゃあもう二人がくっついちゃえよ! というのもなんか違うんですよねえ。恋人同士になるというのは、この二人については非常に違和感がある。でも、その過程すっとばして結婚しちゃうケースはわりと易々と想像できちゃうんですけどねえ。


【白粉花の夏休み】
白粉花、夏の祭に出陣する決意を固める! の巻。と見せかけて、普段何を考えているかよく分からない彼女が、HP研究会に入ったことで何を感じ、どう変わったか、その彼女の心境を目の当たりに出来る、ちょっといい話。傍目には奇人にしか見えないのに、案外素顔は普通なんだよなあ。それがどうしてああなるんだ?(苦笑


【電話の後で】
鳥になった男たち、のその後のお話。書下ろしの最後の短編。あやめは、佐藤のことをぞんざいに扱っているようで、その実よく面倒を見てるんですよねえ。まあ、佐藤もあやめの面倒をよくみているので、二人でお互いに甲斐甲斐しく世話しあっているとも言えるのかもしれませんが。
なんにせよ以心伝心、気心の知れた相手の掛け替えのないこと。
仲イイな、ほんとに。
しかし、ジャーキーでポッキーゲーム紛いのことを、遊びでやっちゃってるのは、本人たちほんとに何も思ってないんだろうか。
あまりにもスキンシップが自然すぎて、お互いに意識もしないもんだから、果たして此の二人、この先どうなっていくんだろうか、と言うところが気になってしまう。

シリーズ感想