鋼鉄の白兎騎士団X (ファミ通文庫) (ファミ通文庫 ま 1-1-10)

【鋼鉄の白兎騎士団 10】 舞阪洸/伊藤ベン ファミ通文庫

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運命の日、来る──。

大平原での戦いでイリアスタに大打撃を与えた白兎騎士団。大陸の勢力図に影響を及ぼす争いは大国、ルーアル・ソシエダイ王国までもを動かそうとしていた。一方騎士団では、レフレンシアが怪しい行動を繰り返し、ガブリエラたち団員間で黒い噂が広がり始める。そして彼女は宣言した──「騎士団を引退する」。果たしてその真意とは、そして騎士団の運命とは!? 保たれていた三国間の均衡は崩れ、遂に歴史が動きだす! 美麗☆絢爛乙女戦記、第1部完結!!

えええっ!? これは早い、いくらなんでも早すぎる! 以前からチラチラと描写されてきたガブリエラが団長となり敵大国との決戦に立ち向かう未来のシーン、てっきり現本編の数年後なのかと思ってたら、実は一年も経っていなかったとな!?
ガブリエラ、一回生の段階で団長にさせられたのか! いやいやいやいや、これは驚いた。幾ら活躍してその黒さが幹部にも知れ渡っていたとは言え、幾ら何でもまだ入団して半年ほどにしかならない新人を、この戦時に団長に奉り立てようだなんて考えられない。幹部連中だって、こんなの認めるはずが無い。
だからこそ、その絶対ありえない、無理に決まっていることを鮮やかにやってのけたレフレンシア団長代理の悪魔じみた手練手管の凄まじさが際立ってくる、というものだ。
今回については最初から最後まで、ガブリエラを団長に仕立て上げるためのレフレンシアの二重三重に入念に準備し、策謀をめぐらし、政略を組み込み、謀略を駆使した暗躍が描かれるわけだが、その巧妙さは御見事の一言。政治的なバランス調整能力もそうだけど、なによりこの人のすさまじさは、団内の空気、雰囲気というものを完璧なまでに手のひらの上で操ってみせたところなんですよね。本来ならば反発必至の一回生の団長就任と言う無理を、無理として押し通すのではなく、皆がいつの間にか気づかない内に、それも仕方ないかあ、と受け入れることに違和感のない空気を仕立て上げた上で通すという、この鮮やかさ。
ここで瞠目するべきは、まだこの段階ではガブリエラの資質と言うものを本当の意味で認知しているのは幹部の中でもレフレンシアをはじめとした一部の人間だけなんですよね。もちろん、他の人達も面白い逸材だ、とは分かっているけれど、その凄まじさを正確に把握しているとは言えず、本来なら団長として受け入れる余地はないはずなんです。つまり、ガブリエラの団長就任という暴挙が認められたのは、ガブリエラならやってくれる、という彼女への期待感ではなく、ガブリエラという人間は殆どまったく関係なしに、徹頭徹尾レフレンシアの手練手管によるものなのです。これは極論ですけど、もしレフレンシアが推したのがガブリエラでなくても、今回のやり口なら通ってしまったんじゃないでしょうか。まあ、それはやっぱり極論か。ガブリエラがナニカやらかしてくれる、という評判のある人材だったからこそ、まだ幹部連も納得したんだろうし。
当然、ガブリエラが団長としてその機能を発揮し始めたら、幹部連もレフレンシアがどうして彼女を選んだかを、阿鼻叫喚とともに大いに認識させられるハメになるのでしょうけれど。

しかし、それより驚いたのはドゥイエンヌの扱いだわ。彼女が団を離れていた件については、完全に彼女の側の事情に寄るものだと思い込んでいたんですよね。実際、アニキがそのように動いていたわけだし。
それが、まさかここまで明確な意図を持って、レフレンシアによって排除されていたとは。ドゥイエンヌがガブリエラの下風には絶対に立たない、というのは自明のごとくわかりきったことだったけど、だからといってそこまでやるとは思っていなかった。だが、必要とあれば躊躇わず非情の決断をきっちり下せる事が組織の長の必須の決断力なんだろうな。何気に、ガブリエラもそういう一面はちゃんと持ってそうだし。


というところで、大国、ルーアル・ソシエダイ王国の予想外の動きに戦雲渦巻く中原の情勢下、急転直下ガブリエラが団長に就任したところで、第一部完結。
火魅子伝と同じく、きっちり十巻で一部完結に持ってくるあたり、作者も大したもんだ。幸いにして第一部完結にして、作品も終了というのではなく、秋頃には第二部開始。ガブリエラ戦役の勃発に伴なう、本格的な戦記物としての様相を呈してきそうな感じなので、これは楽しみにして待つしかないでしょう。
個人的にはアスカ姉の動向に注目中。作中で主体的に動いているのって、実はレフレンシアとこのアスカのふたりだけなんですよね。まあ、アスカ姉は流されまくってますがw

ルーアル・ソシエダイ王国のバロス三世バイバルスも、これがなかなか面白そうなキャラクターじゃないですか。どこかヤンチャで愛嬌のある子供みたいな側面がありながら、強かで豪壮、部下にも慕われる若き英傑、って感じで。非常に大きなスケールを感じさせられます。一応、今後のラスボス的な扱いになるんでしょうけど、悪役というんじゃなくて、ガブリエラと真っ向から指し手を競い合うプレイヤーとして大いに目立ちそうな予感。やっぱり、敵は大物の方が盛り上がりますもんねえ。