放課後の魔術師  (7)スマイル・ウィズ・ユー (角川スニーカー文庫)

【放課後の魔術師(メイガス) 7.スマイル・ウィズ・ユー】 土屋つかさ/ふゆの春秋 角川スニーカー文庫

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なるほどなあ。後書きでも触れているように、この作品は魔術師たちの年代記の中でも徹頭徹尾、遥と安芸の二人のラブストーリーだったんだな。
逆に言うと、二人の人間関係が決着を見た以外は実のところ、円環との関係を含めて非常にすっきりしない終わり方になってしまってるんですよね。
最悪の展開、つまり円環による蒼の氏族の粛清と遥の抹殺は免れたものの、蒼の氏族が企てていた円環に対する優位性を確保するための切り札は放棄させられ、氏族と円環とのパワーバランスは円環側に極端に傾いたままで終わってしまってるのです。
なかなか衝撃的だったのは、円環は遥の抹殺指令を出したように、以前に既に伊予に対しても抜きん出た力を有していると言うだけで抹殺指令を出していたというところ。別に円環に対して反逆を企てている訳でもないにも関わらず、驚異になりかねない力を持つものが現れたらその存在を抹殺しに懸るなどと言うとんでもない行為が円環では常態化してしまっているという事になる。
これは、今後も同じことが行われてもおかしくないワケで、その際にジェシカシステムも遥も失っている蒼は、これに抵抗出来ない事になってしまうわけです。
ジェシカシステムから伊予が救出され、遥は力を封印されたものの安芸と想いが通じ合い、津欧氏は愛する奥さんの元に戻り、斎条先生もあと何年かすれば婚約者が戻ってくる。と、人間関係については万事大団円みたいにはなっているんですが、残念ながら蒼の氏族は円環に対して政治的にはかなり分の悪い降伏を強いられてしまってるんですよね。
確かに、横暴な振る舞いをしていた円環の幹部の一人は失墜したけれども、さらに強かで危険な幹部の思惑通りに状況は進行してしまい、蒼は研いでいた牙を抜かれてしまい首根っこを抑えられたという事になり、それがどうもすっきりしない気分に繋がってしまっているんじゃないかなあ、と考える次第。(とはいえ、密かに遥はアレだし、ジェシカシステムだってこれまでの技術蓄積を考えると、伊予が解放されたからと言って完全に無効化されたかというと、あのお姉さんが早々甘くない気もするので、政治的にはともかく実質的には切り札は失っていないと見ることも出来るかも)
それでも、安芸たち個人の立場から見たら、未来はともかくとして少なくとも現在においては守るべきものを守ることが出来、取り戻したかったものは取り戻し、ねじれて絡みきってしまっていた人間関係の幾つかはうまくほどけて元通りになったわけで、その意味では良かったよかった、という終わり方なんですけどね。
特に、ナツメさんがもう一度登場してくれたのは良かった。斎条先生とナツメさんについては、ふたりとも素直じゃなかっただけに、ナツメが島送りにされて今後離れ離れになった二人の関係がどうなるのか、とても心配だっただけに、ナツメがあの極度の天邪鬼を解消して、素直に斎条への想いを打ち明けてくれたのは、安心させられた。二人が直接顔をあわせて再会することはなかったんだけれど、これならナツメが戻ってきた時、二人は大丈夫だと思えましたしね。
しかし、精神的な余裕を取り戻したナツメ姉さんは、大人の女性らしく……エロいなあw
わりと積極的な方の遥が、かなりタジタジになってたのには笑わされた。
まあ、今回の主演女優は明らかに、ヒキコモリからついに外に出た仄香でしたけどね。いろいろな意味で大暴れだ!(爆笑
あのイドが徹底的にやり込められまくってたのには、笑った笑った。なに、このお笑いコンビw
イドがボクっ子扱いされてるしww さすがにこりゃあ、フラグは立たないわなあ。仄香のあの強烈な個性は、イドくんには刺激が強すぎる。比べて、伊予は悪戯っぽいけど仄香に比べたら優しいよねえ、うんうん、優しいよねえw

次回作は、円環VS鴉のクロニクルの別話になるのか、それともまったく違うシリーズになるのかはわかりませんけど、恋愛模様のドキドキ感や丁寧な内面描写など非常に上質な物語をこのシリーズでは堪能させてもらいましたので、やはり同じかそれ以上のクオリティのものを期待しています。面白かったです、はい。

シリーズ感想