俺の妹がこんなに可愛いわけがない 6 (電撃文庫 ふ 8-11)

【俺の妹がこんなに可愛いわけがない 6】 伏見つかさ/かんざきひろ 電撃文庫

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電話中の妹を横目に見ながら、「ただいま」と一声かける。
すると桐乃は、ちらっと俺の顔を見て、こくんと軽く頷いた。
「……へっ」
以前はガン無視だったことを考えれば、多少はマシになったのかもしれねーな。

多少はマシ、どころじゃねーですよ! 当事者の兄ちゃんはわかってないかもしれないが、これは劇的に変わってますがな!!

留学先から無理矢理に連れ帰ってきたにも関わらず、あんまり妹の態度が変わらないことに拍子抜けしている京介兄ちゃんだが、これに関しては麻奈美の意見が正しいわなあ。実際、一年前と言わず留学前らへんと比べても、桐乃の京介への態度は驚くくらい柔らかくなってるし、つんけんした態度にも以前にあった鋭利な鋭さはすっかり失せている。見る人が見れば、甘えまくっているようにしか見えないんじゃないだろうか。
変わったといえば、京介自身も相当変わったと言うか毒されたと言うか。思考パターンがかなりおかしくなってきてしまっている。エロゲ脳? 昔はオタク文化に対して非常にフラットな立ち位置に居たはずで、桐乃の趣味が父親に露呈した際にかばった時なんぞは偏見のない客観的な立場から、桐乃をかばっていたものだけど、今となってはあまりに桐乃側に踏み込んじゃってて、きっと同じような事態になっても、あの時と同じ立ち位置では意見出来ないんだろうなあ。
その影響からか、女の子への接し方もなんかおかしくなってきている気がするぞ? 前巻の黒猫への構いっぷりは、自分は黒猫が特別なのかと思う部分があったんだけれど、どうも今回の京介の能動的な走り回り方を見ていると、年下の女の子をお世話して回る喜びに目覚めてしまったとしか思えないところが……。
その分、フラグ立てまくるハメに陥っちゃってるが(苦笑

桐乃としては、幼馴染の麻奈美にだけ目くじらを立ててれば良かったところが、こりゃあ気が休まらんだろうねえ。気がつけば、自分の友人達が軒並みアニキに目を向け始めちゃってるんだから。とはいえ、あからさまに嫉妬しまくる桐乃はずいぶんと可愛いことになってしまっている。麻奈美に対してはキツい態度で当たってれば良かったものの、友達に対してはそうも行かないのだし。自分が留学していない間に、黒猫が兄貴の部屋に入り浸っていたという事実に愕然とし、慣れた様子で兄貴のベッドでゴロゴロと寛ぐ黒猫の姿に狂乱する桐乃の姿は、存分に堪能させてもらったw
まあ、なにげに一番やばいのはあやせだけどな。何がやばいって、京介のあやせ好きっぷりがヤバいw どれくらい好きかというと、桐乃のメルルへのハマりっぷりレベル。こいつ、本気で狙ってないか? 悪いことに、京介を毛嫌いしていたあやせもいつの間にか京介を見直し出しているという悪循環?
この事実に桐乃が気づいてしまった時が恐ろしいw

さて、メインとなるであろう沙織の素顔公開は……長編スペクタクルを期待していた身としてはわりとあっさり何事もなく終わったなー、という印象では合ったものの、沙織の本性については京介並みに「誰だお前ーーーー!?」というなかなかの衝撃だった。
かなり世慣れているというイメージだったので、単純に素顔が美人というくらいだと思っていただけに、これほど性格から異なっていたとはちょっと予想いていなかった。そっかー、彼女もいろいろとイッパイイッパイだったのかー。
なるほど、彼女の事情を知ってしまうと、桐乃が急にいなくなってしまったことは京介や黒猫、あやせたち以上に、沙織にとってはショックだったんだな。ただ、一連の出来事があったからこそ、沙織の演技に隙が現れ、桐乃たちが彼女の素顔に近づけるきっかけになったのだから、禍転じて、という事になるんだろうね。黒猫と桐乃もそうだけど、留学から帰ってきて以来、以前よりもずっと屈託なく遠慮なく見栄もはらずに、距離感が近くなって仲良くなったように見えるしね。

そして、最後に留学先の桐乃のルームメイトであり、桐乃の在り方を一度は崩しかけた相手でもある天才小学生リアが来日してくるお話。
ここでは、妹の桐乃では伺いしれなかった、やんちゃな年下の面倒を見るお姉ちゃんの桐乃という新しい一面を眼にすることに。いやあ、これは新しい魅力だわ。作者はまだ此処に至っても、桐乃のキャラのポテンシャルをさらに引き出しにかかってるよ。サブキャラも活発に動いてきたし、四巻あたりで作品を掌握したと感じてからこっち、このシリーズ、面白さが順調に伸びまくってる。
リアと桐乃。走ることへの二人の考え方の違いの見せ方も、なかなか興味深かった。走ることにすべてを掛けている、というのは言葉足らずか。走ることそのものが生き甲斐ともいえるリアと、走ること以外にも大切なものをたくさん抱えている桐乃。故にか、桐乃は留学先で一度、走ること以外の全部を投げ捨てようとすらしてしまうわけだけど、兄貴が迎えに来てくれたことで彼女は自分にとっての正しいあり方というのを見つけることができたのですね。桐乃の在り方は決して中途半端ではなく、彼女のやり方でとても真剣に打ち込んでいる。生き方の違う二人が、お互いにそれを認め合う事になる今回のお話は、なにげに感動的だったんじゃないでしょうか。
この二人に限らず、この作品に登場するキャラクターというのは、桐乃に代表されるようにみんなそれぞれに趣味にしても仕事にしても生き方にしても、何にしても一生懸命だ。精一杯真剣に向き合い、渾身の力を込めて突き進んでいる。
それが、このシリーズが不思議なほど清々しい空気を帯びている要因なのかな、と最後の話を読んで思ったり。

で、ラストには恒例の桐乃の爆弾発言。この期に及んでこれほどインパクトのあるのがくるとは!!w
さすがに偽装なんだろうが、偽装とはいえ面と向かってそういう事を頼むようになるとはねえ。隔世の感あり、だ。それ以上に、桐乃が内心なにをどう期待しているのかを想像するだけで顔がニヤケてくる。こいつ、そろそろ自分がお兄ちゃん大好き人間であることを隠せなくなってきてるぞw
いや、兄貴の方も最近はタイトルがん無視で「うちの妹はベラボウにかわいいにきまってるだろうが」というタイトルにした方がいいんじゃないだろうか、という有様だけどさw

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