俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 (電撃文庫 あ 29-1)

【俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長】 哀川譲/H2SO4 電撃文庫

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このタイトルはアレだよなあ……ちょっと落ち着け!!(笑
妙に忙しの無いタイトルである。
図らずも、なのか。この作品のメインヒロインであるところの伏城野ありすもまた、このタイトルのように忙しない。慌ただしい。というか、ちょっと落ち着け! という所のある娘さんである。容姿端麗成績優秀文武両道、何をやらせてもパーフェクト。性格も男前でかっこよく優しくて女性らしくて可愛らしいときた。まさにどこに出してもおかしくない完璧超人。胸の大きさですら見事な逸品である。
だが、アホの子である。
うん、アホの子だな。どうしようもなく、残念ながらく、申し訳なく、あほの子だ。
こと幼馴染の主人公・兎沢紅太郎の事となると、極端なまでのアホの子と成り果てる。もうちょっと落ち着けと言うくらいに話を聞かず、話を解さず、慌ただしいまでにアホになる。なんでそんな有様に成り果てるのかというと、それはもう残念なくらいにありすさんは紅太郎くんにベタボレなのだ!!
いやあ、昨今ここまであからさまかつベロベロにわかりやすく好き好き光線を発しまくってる幼馴染というのも珍しいくらいだ。というか、早々いねえよ!
それこそ「紅太郎命!!」と着ているシャツの背中にプリントしてあってもおかしくないくらい、のぼせ上がっていると言っていい。この子、そんな好きなヤツと幼い頃から幼馴染として一緒に過ごしてきたんだから、人生ハッピーで楽しかったんだろうなあ。
ところが、そんな完璧超人のありすにベタベタされながら、その影でひっそりと並人としてある意味悠々自適に過ごしてきた紅太郎が、何の因果かありすが勇者として生徒会長を努める勇者生徒会と対立する立場となる魔王生徒会の魔王に就任することになる。もちろん、その正体は隠したままで。
そもそも、この世界には人間と人外が普通に共存している。とはいえ、その文化や生命としての在り方の違いから根深い溝が両者には存在しており、両者の共存をより確かなものとするためにモデルケースとして、紅太郎たちの学校では勇者生徒会と言う人間による生徒会と魔王生徒会という人外による生徒会と言う二つの生徒会が二年次に並列され、両者が一年間戦い勝った方が三年時に真・生徒会として君臨すると言うシステムがとられている。まあ、学校制度の一環としてこれらのシステムが存在しているわけだ。その対決の方法は、正体を隠した魔王が誰なのかを解き明かすこと。魔王生徒会は一年間魔王の正体を隠せ続けたら勝ち、と言うことになっている。
すなわち、紅太郎は幼馴染のありすと、正体を隠して対立するはめに陥ってしまったわけだ。

あの紅太郎スキスキ、超愛してる!! なありすが、仮面を被っただけで紅太郎にまったく気づかねえ、というのには思わず笑ってしまったがw
お、お嬢さん、ちっちゃい頃から常に一緒に過ごしてきた大好きな幼馴染の背格好とか立ち振る舞いとか仕草とか声とか、気づいてやれよ!!(爆笑

まあ、キャラデザインもストーリーラインもベタと言えばベタな流れなんだけれど、読んでいてこれがどうしてどうして、楽しいのなんの。読み心地が素晴らしく快適なのだ。綴られている文章が、何故かしっくりと馴染むというかしっかりと噛み合うというか。この手のドタバタ学園ラブコメディというのは、スカスカすぎて読み応えも何もあったものがない例がママあるのだけれど、少なくともこれはそういうのとは無縁らしい。なんか、うん、面白かったなあ。
紅太郎も、単に流されて魔王を演じるのではなく、無理やり押し付けられた役職であろうと、任されたからにはしっかりと生徒会長としての役割を果たそうという責任感を持つ好漢であり、普段と違う立場からありすと接することで、彼女が自分にとってどれだけ大切な存在かを改めて認識し直し、いつも傍にいる幼馴染という立場ではできない、敢えて対立する立場から彼女を支えようと思い立つその心意気。なにげに気持ちのよい男前だからこそ、完璧超人のありすがベロベロにベタボレ状態でキャッキャウフフしてても、さもあらんという気持ちにさせられたんだろう。主人公がしゃきっとしっかりしているラブコメというのは、やっぱり一本芯が通っていて面白い。

なんか、さらに魔王としての立場とは別に、ありすに引っ張り回されて紅太郎もエライ目にあいそうだし、まだまだ盛り上がっていきそうで、これは楽しみなシリーズが出てきたんじゃないでしょうか。