藍坂素敵な症候群 2 (電撃文庫 み 7-17)

【藍坂素敵な症候群 2】 水瀬葉月/東条さかな 電撃文庫

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第一巻でタイトルやあらすじのユルっぽさに完全に油断していたところに、血みどろグログロの展開を持ってこられてひっくり返った教訓を生かし、今回はさすがに身構えてたし覚悟も完了していたけど、ううう……前みたいな血肉のグログロを警戒していたら、精神的なデロデロで襲いかかってきたで御座るよ。
こ、これはけっこうヘコむ。それまでの、じんわりと胸があったまるような温もりに満ちたシーン描写が秀逸だっただけに、それを無造作に投げ捨てて高笑いしながらグリグリと踏みにじるかのような展開には、かなり胸にくるものがあった。
相変わらず、水瀬さんは容赦ねえ。近年は【シーキューブ】でもそうだけど、特に仲間同士みんなでワイワイガヤガヤ賑やかに楽しく大騒ぎするアットホームなコメディ部分が素晴らしく面白く楽しくなってるから、そこから急転直下の展開がかなりギャップの大きさを感じさせて衝撃的なんですよね。多分、この鬱展開単体だけ見たら本当ならここまで「ウワッ」となるほどエグくもないとは思うんですけど、何分前半のふわふわとのぼる部分があるから、その落差がくるんですよねえ。
人によったら、もしかしたらこの落差に戸惑ってしまうんじゃないかと言うくらい。
なかなかこのレベルの陽気なコメディから、直滑降でこの容赦ない展開に持ってける人はいないんですよねえ。

でも、気分が落ち込んだ侭終わらずに済むのは、やはり主人公の那霧浩介の男気と、医術部みんなの一体感があるからなのでしょう。かけがえのない友人であると同時に、同じ傷を有した同志であり、お互いの幸せを誰よりも望む親愛の共有者。普通の仲間同士とはどこか一線を画した関係性が、この医術部の面々のつながりの奥底には横たわってるんですよね。そこが好きなんだなあ。

というわけで、一巻でちらりと言及されていた、入院しているもう一人の医術部員。症候群の重度罹患からの復帰者がこの巻から新登場。表紙を飾っている涅槃皇終さんである。変な名前。
なんかゲル子が普通に思えてきたぞw
彼女の症候群の真名はラストで明らかになるんだけど……これってシューティング関連では普通の用語なの? 私、東方Projectでしか見たことないんだけど。ただ、知っているとどんなものか非常に理解しやすかったけど。
まだお互いに面識のなく、症候群の知識やそれぞれの事情も知らなかった一巻と違い、伊万里の事件を経て浩介と伊万里が医術部に入部してしばらく経っているからか、この巻ではしょっぱなからラブコメが大盛況である。その分、浩介が変態扱いされて惨劇に巻き込まれるパターンも一気に増殖したわけだけど。こいつ、ラッキースケベではあるけれど変態じゃないんですがね(苦笑
素敵やゲル子、空や伊万里の持つお仕置きパターンが多岐多彩に渡るので、彼女らがドタバタと大騒ぎしているのを見ているだけで、十分楽しい。ぶっちゃけ、後半の急展開がなくてもそれだけで十分満足だったかもしれない。ゲル子は素敵ラブで浩介は眼中になく、新登場のついもまだ初対面でそんなに親しくもないから別として、素敵と伊万里と空が、浩介の事をもうだいぶ意識しまくっててニヤニヤさせてもらいましたよ。特に、意外なことに一番ときめいてたっぽいのは空なんですよね。表面上は攻撃色全開でしたけど、その裏ではかなりの勢いで乙女時空が展開されていたと言う驚き。何気に前半で一番持っていったのは空だったかも。個人的にメイド服属性はあんまりないんだが、空のメイドさんは素晴らしかった、うんグッドジョブ♪
勿論、素敵と伊万里もまだ距離感を測りかねている段階のようだけれど、浩介の事は意識しまくりで、プール掃除でのあの格好は反則だろう(笑
患者用の手術衣でプール掃除とか、誘ってるとしか思えんww
でも、浩介を名前で呼ぶようになって悶えてる伊万里は可愛かったなあ、うん。
畜生、浩介め、大人気じゃないか、ハーレムじゃないか。
だがしかし、この主人公、それだけみんなに惚れられるだけのものを持ってるんですよね。他人の事で心の底から怒ることができ、理不尽を憎むことができ、体を張る事ができる、熱い正義感の持ち主。医術部の面々はみんな症候群の重度罹患で一度は人としての在り方を踏み外し、倫理を投げ捨ててしまったという傷があり、素敵についてはその重度罹患を治療するために殺人を犯さなければならないという傷を、現在進行形で追い続けている状態だ。そんな彼女らにとって、同情や憐憫からではなく、純粋に彼女らの事を想い、自分の身をかえりみず、我が子とのように自分たちの傷の痛みを一緒になって痛がってくれて、その痛みを少しでも緩和させようと一生懸命になって力を尽くしてくれる浩介が、かけがえのない存在になっていくのは、それはもう必然と言っていいんじゃないでしょうか。
そりゃあ、惚れるわなあ。

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