七花、時跳び!―Time-Travel at the After School (電撃文庫 く 6-11)

【七花、時跳び! Time-Travel at the After School】 久住四季/明星かがよ 電撃文庫

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ちょっちょっちょっww なんぞこれ、超くそワラタww
電撃でも屈指の本格ミステリ遣いの久住四季の久々の新作ということで、タイトルからして時間移動ミステリーなのかと構えて読み始めようとしたわけだけれど、まずあらすじがこれだ。

おもちゃ感覚タイムトラベル・ストーリー!

 そもそもの発端は、だ。我が後輩の七花いわく、突然タイムトラベラーになったという。可愛い顔して、あなたマジですか!? と言いたいところだが、これがマジだったりするのだ。過去や未来に自由に跳べるとしたら、どうする? カップメンにお湯を注いで『三分後』に跳んで待たずに食べるとか── え? 違う?
 予告しておく。びっくりしたり呆れたりすることはあっても、歴史を動かすような展開は何にもない。なぜなら、僕が主人公だからだ。

んんん? これはちょっと主人公、今までのキャラクターとはいささかベクトルが違うのか? と思いながら開いてまず見るカラー口絵。
もうね、ここですぐさまこの作品の秀逸さがビシビシと伝わってくるんですよ。クラスメイトの鈴ヶ森との、特に意味の無さそうな駄弁りの内容を読みながら、よくよく絵の方に目を凝らしてみると、主人公が語っている謎の真相とこの物語のコンセプト、そして主人公のキャラクターが一辺に伝わってくる。この口絵部分、何気に傑作ですよ?

とまあ、あらまし主人公がどんなやつなのかという情報を先行入手してわかった気になって読み始めるわけですが、これがまさに罠。
あー、こいつってバカなのな、わかったわかった。などと油断を誘いつつ、その実ときたら……ダメだこいつ、どうしようもない底抜けのアホだったーーー!!(爆笑
すでに口絵のお話で得られた情報だけで、世間一般から見ても相当のアホだったので、ついついその程度と油断してしまった。
後輩の七花連がタイムトラベルの能力に目覚めてしまい、試しに実際に一緒に跳んでしまって見たあとの、このアホの所業が、異常事態にテンションあがりまくってしまったこのアホのバカバカしいまでのいたずらが本当にあほらしくてあほらしくて、もうしぬほど笑ったわww
いや、これが他人に迷惑をかける類のものなら、ここまで腹の底から爆笑はできなかったんだろうけど、このアホと来たら何を考えているのか自分相手に、自分自身相手にやらかしやがった! しかもオオウケしてる! おまっ、それ自分、自分ぞ!?(大爆笑
もうくだらないくだらない、大笑い、大爆笑である。おなかいてえ。思い返してみると、口絵の方でも同じようないたずらやってるんだよなあ。こいつ、自分相手に容赦なさすぎ! しかも、単に今の自分が大ウケで大笑いするためだけに、過去に自分にそこまでするかという。というか、お前過去にやられた立場だろうに、あほだ、あほすぎるww
この男、時間跳躍におけるタイムパラドックスについてもまるで知識のない、無知の塊みたいなヤツなので、タイムトラベルの危険性についての認識などまるでなく、立役者と言うか時間跳躍能力者となってしまった七花を振り回しまくるのである。後輩ちゃん、まじ涙目w
お嬢ちゃんも付き合いがいいなあ、というか突っ込み属性の血が唸るのか、イジられる小動物体質が身についてしまっているのか、このアホな先輩に振り回されるのが快感になってしまっているM娘ちゃんなのか。
この男と知り合う前の七花さんは、どちらかというとクールで冷めた感じのお嬢さんだったみたいなので、いい意味でも悪い意味でも影響受けまくっちゃったんだろうなあ。惚れた弱みかw
かくいうこのアホ主人公も、実のところただのアホではないようだ。未来の進路は過去における未来研究会の設立時の荒業などを見ていると、ある種の天才なのではないかと愚考する。現在はやる気も無く意気も無く、毎日に退屈して面白いことがないかなあとあくび混じりに過ごしているだけの怠惰で無教養なアホにすぎないわけだけど。いわゆる、未だ方向性の与えられていない天才、というやつなのだろう。折角時間移動できるチャンスを手に入れたにも関わらず、世俗的な成功、ギャンブルなどによる金銭の大量入手や、他者の秘密を探り寄せて将来の出世幸福への筋道確保とか、という機会に対して、その可能性を七花が示したにも関わらず、まったく感心を見せなかったのも興味深い。実際に興味がないというのもあるんだろうけれど、手に入れようと思ったら時間移動なんか利用しなくてもすぐに金や身分なんか手に入れられる、というのを無意識に自覚しているような所があるのだ。現実に、未来研究会関連で恐ろしい額の予算をふんだくっちゃってるわけだし。
まあでも、彼の天才性はこの物語の間では殆どまるで表に出ず無意味に潜んでいるだけだけど。それこそ、極まったアホ性が発揮されまくってるだけでw

とまあ、殆ど全編にわたって主人公のくだらない所業によって巻き起こる大混乱と、それに巻き込まれてあたふたする七花嬢のめんこい姿を堪能するのが趣旨の話になっているのだけれど、なにぶんタイムトラベルものだけあって、その複雑に入り組んだ時間移動の推移は、かなりワケの分からないことになっている。同一人物が同じ場所にいても大丈夫みたいなので、同じ時間、同じ場所に同じ人物が二人三人いたりするシーンも侭あったりするし。その複雑怪奇に交錯しきったタイムラインを、このくだらない馬鹿騒ぎのなかで正確に整合しきっているのだから大したもの。さすがはミステリーの遣い手、と讃えるべきか。

なんにせよ、もう笑った笑った、面白かった。タイムトラベルと言う要素をこれほどくだらない理由で使い倒し、遊びまくった作品はなかなか類を見ないよ、素晴らしいw
なんだかんだとくすぐったいラブコメにもなってるし(前作でもそうだったけど、作者さんラブ要素については全然引っ張らないんですよね。吶喊ですから!!)、愉快痛快大爆笑な内容は今も引き続いて思い出し笑いを引き起こしてくれる。
この主人公のキャラクターは受け手からしたら好き嫌い激しそうなやつだけど、自分にとってはもうアホすぎて大ウケ。サイコーでした。
この一冊できっぱりと終わっているものの、そこかしこで続きも書けるよ、みたいな伏線も仕込んであるっぽいので、期待してもいいのかな〜〜。
でも、うぐいす論証とかミステリクロノの続きも読みたいですよ?