神様のメモ帳〈5〉 (電撃文庫)

【神様のメモ帳 5】 杉井光/岸田メル 電撃文庫

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ニートティーン・ストーリー、待望の初短編集登場!

 ニート探偵アリスとその助手である僕は、深刻な事件の合間にもばかばかしくてつまらない、けれど忘れられない揉め事にいくつも巻き込まれている。今回はそんな僕らの事件簿からいくつかをご紹介しよう──

 ミンさんを巡るストーカー事件「はなまるスープ顛末」、アリスご執心の酒屋を襲った営業妨害事件「探偵の愛した博士」、平坂組のバカどもを総勢で巻き込んだ誘拐事件「大バカ任侠入門編」に、特大100ページ書き下ろしのオールスター野球騒動「あの夏の21球」を収録。
 泣き笑いの日常満載のニートティーンストーリー、初短編集!


みんな胸を張ってプレイしろ。
おまえたちがつけている背番号は、すべて近鉄バファローズの永久欠番だ。
        ――梨田昌孝
ページを開いた途端に目に飛び込んできた近鉄最後の監督の名言に反射的に胸が熱くなりかけて、ふと我に返る。
なんぞこれ?
最後のエピソードである「あの夏の21球」を読み、あとがきにてそれを書くに至った顛末を目にしたあととなっては、この巻の頭にこの言葉を打ち込むのは必然だったと理解できるのですが、いきなりこんなのがページめくったとたんに飛び込んできたら「????」となるよ!(笑

【はなまるスープ顛末】
つまり、ミンさんのラーメンは、もうナルミたちが口々に言うほど不味くはなかたと言うことなのか、それとも父親の代から不味かったのか、どっちなんだ?
ミンさんの素性に関しては、その本名不詳年齢不詳それっぽい呼び名から、もしかして中国とか台湾の人なのかと疑っていたんだけれど、どうやら正真正銘の日本人だったらしい。ミンさんが普通に高校に通っていたというのは、なかなか想像しにくいものがある。此の人にもそんな若い時代があったのか。というか、今もまだ若いんだけど。二十代だけど。それはそれとして一番気になったのは、高校にも制服のしたにサラシを巻いて通っていたのか、という事だな。色々と恐ろしい話じゃないか。わりと気のおけない仲間みたいな同級生(男)がたくさんいるみたいだから、浮いた話はなくても結構周囲の人間関係には恵まれた学生生活だったのかもしれないが、それにしてもみんなミンさんの胸には騙されたり揺らされたりしなかったんだろうか。制服の下にブラじゃなくてサラシを巻いていたら、目立たないもんなんだろうか。気になる気になる。
浮いた話といえば、ミンさんには春は来ないのかなあ、と要らない心配をしてしまう。此の人、男には縁なさそうなんだよなあ。おぱーい大きいのに。
なんか、ミンさんのおぱーいの話に終始してしまった。いや、この話自体も大まかそんな感じなので方向性としては間違っていないのだと信じたい。
ところで、ミンさんのお父さんは何をまかり間違ってそんなことになってるんだ?


【探偵の愛した博士】
ナルミの嫉妬の仕方はウジウジと矮小でみっともないなあ(苦笑
嫉妬するなとは言わないし、ウジウジするなとも思わないけど、もうちょっとはっきりモヤモヤしろ! と言いたくなる。矛盾な事を言っているのは百も承知だが、この男の自分のジメッとした感情を表にも出さず内に秘めもせず、形にもせず、ひたすら鼻水みたいに垂らし続けるみっともなさは、ミンさんじゃないが一発頭を叩きたくなってくる。いざとなったらあれだけ行動力を持っているくせにこの薄弱さは、杉井光作品の主人公の共通特性とはいえ、どうしようもないなあ、うん。この特性をまるごと愛するのはなかなか大変だと思うよ。そのせいか、今や若いときはともかく、将来イイ歳になったときに結構揉めそうなイメージあるんだよなあ、杉井作品主人公w
あれ? この話の感想を書いてないぞ? ええっと、珍しく探偵っぽいお話になっていたようななかったような。実の親よりも、タマにしか会わない友人の方がそいつの事をよく理解している、というのは色々と考えさせられるものがある。親身になって考える事とその人を理解すると言うことは、全く異なる事なのかもしれないなあ。


【大バカ任侠入門編】
なんだかんだとこういう話の生々しい部分をサラッと許容して出せるのは、電撃文庫くらいだよなあ。他となると幻狼ファンタジアとか新書系までいかないと。いや、ガガガ文庫は意外といけるか?
珍しく、アリスがナルミに真相への先着を許してしまうお話でもある。あれ? 珍しくでもないのか。いずれにしても、平坂組のバカさ加減の理解度については、アリスよりもナルミの方がよく把握してしまっていた、というお話。伊達に兄貴分じゃないんだよなあ。あれをまとめられるのは、四代目やナルミのようにバカをバカのまま受け入れて導いてやれるような人でないといけないわけだ。腕っ節は関係なく。


【あの夏の21球】
すでに終わってしまった過去の栄光は、たとえ遥か手の届かない遠くへと遠ざかってしまったとしても、決して永遠に失われてしまったのではなく、誰かの記憶に残り続け、燦然と輝き続けるのだ、というお話。
近鉄バファローズ消滅の話を反芻すると、この短編が伝えたかった思いがダイレクトに押し寄せてきて、あとがきでこの短編が書かれた経緯を読んだ後にもう一度この話を思い返してみると、感慨がまた違ってくる。
野球ってやつは、どうしてこうも、陽炎の向こうに揺らめく淡くも儚いイメージが似合うんでしょうなあ。そりゃあ、甲子園の影響よ、と言ってしまえばそれまでなのですが。
にしても、この頃になると、後書きでも触れていたけれど、アリスとナルミのキャラクターというか、生き方考え方が初期の頃とは大きく変わっているのに気付かされる。最初の頃のアリスなら、こんな野球のことでここまで一生懸命頑張らないですよ。自ら体を張って。
でもひきこもった部屋の薄暗い闇の中で白い肌を浮かび上がらせている少女よりも、へたばりながらも汗だくになって悪態をついているこっちのアリスの方が今となっては好きだなあ、うん。


やっぱり杉井さんは現代劇が一番面白いなあ、と再確認。色々手がける作品の幅は広がってますけどね、やっぱり。ただ、ひとつの傾向に集中してしまうのも先が窄まりそうな気もするので、今みたいに色々手を広げるのは悪くないとは思うんですよね。
幸い、このシリーズはもっと続いてくれるみたいですし。アリス当人の話が片付かないと、ねえ。

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