無限のリンケージ 3 -レディ・フェンサー- (GA文庫)

【無限のリンケージ 3.レディ・フェンサー】 あわむら赤光/せんむ GA文庫

Amazon
 bk1

すっごいいまさらな話で非常に恐縮なんですが、このシリーズの主人公ってラーベルトじゃなくって、彼をサポートするリングデザイナーのサクヤ・イバラなんですよ?
一巻から彼女の視点から物語が推移していたんだから、全く以て今更な話なのですが、今回はこれまでにも増してサクヤが主体となるお話だったので、改めて確認しておこうかと。

ディナイスとの試合を経てスランプを脱出したラーベルトは、一部リーグで快進撃を続けている。ラーベルトが抱え続けていた内面の問題がある程度前回で解消されたためか、彼の危うい部分はだいぶ拭い去られ、年相応の明るい顔が自然に垣間見えるようになっている。そのせいか、今回の話ではラーベルトは話のメインからは少しハズレているんですよね。今回はあくまでサクヤのお話であり、ベックスと彼の後輩であるカルラの話になっている。

「サクヤちゃん、お久しぶり!」
 昔の知り合いに会う、というベックスに同行したサクヤの前に現れたのは、大学時代に苦手だった巨乳のハグ魔、カルラ・フェルステルだった。

 かつてフェンシングを教えてくれたベックスに憧れ続けているというカルラは、銀河選手権を制したほどの使い手。しかも、いまや強力な近接特化型FTRであり、ラーベルトの次節の相手だというのだ! そんなカルラに対し、ベックスはFTRを辞めるように言い放つ。いくら対戦相手とはいえ、自分を慕う後輩に対しての冷たい態度に、サクヤはどこか納得がいかず……。

 果たして戦いと想いの行方は!?
無邪気なほどに一途にベックスに想いを寄せ、ついにはBRTという危険極まりない世界にまで踏み込んできた恋する乙女カルラ・フェルステル。しかしベックスは既に妻子ある身。それを承知でなお、彼と同じ世界に居たい。少しでも傍に居て、自分のことを褒めて欲しい。ただその一念で二年もの歳月をFTRとしての特訓にあて、十人に一人が事故死という名目で戦死するこの競技に挑んできた恋する乙女。その思いの強さ、一途さに同じくラーベルトに道ならぬ恋心を抱くサクヤはいたく共感し、次の対戦相手ながら彼女に感情移入してしまうのだが、肝心のベックスはカルラがFTRになったことに激怒し、サクヤが手を尽くして和解するよう尽力しても梨の礫で取り付く島もないありさま。
自分をしたってきた後輩に対する理不尽な態度に、サクヤは憤慨するのだけれど、そこはそれ、ベックスがカルラに怒り、突き放すにも相応の理由があるわけだ。
そりゃあ妻子ある自分に、何時までも未練がましく想いを残してしまっているカルラは、不毛な道を歩んでいると言える。そこははっきりと突き放してやるのが、可愛い後輩に対するベックスなりの誠意ある対応なんだろう。彼の態度は男としてとてもキッチリしたものだと思う。彼の意見は正論だし、なによりカルラを思ってのことだ。でも、サクヤは納得できないわけですね。
ここでサクヤが自分がどう納得できないのかを自問自答し、実に明快かつロジカルにその内実を明文化してくれるのです。これがまたハッキリすっきりとした論理で、ベックスの正当性を認めながら、サクヤが俄然奮起してここから事態をしっちゃかめっちゃかに振り回すだけの原動力がどこから湧いてくるのかが明快に伝わってくるので、こっからのサクヤの爆進は痛快極まるのだ。
もちろん、サクヤはどれだけ自分がムチャぶりをみんなにしているのか自覚はあるので、内心脂汗だくだくで、脚はガクガク震えまくっている。他人の人生を背負ってしまうのがどれほど重たいことか、サクヤほどの子がわからないはずがない。それでも、自分もまた恋する乙女であるという矜持ゆえに、これから自分がこの思いを貫く意志と勇気を持ち続けるためにも、ベックスとカルラ、二人の関係を悲しい結末で終わらせたくない、その一念で震える脚に喝を入れて大勝負に打って出るのである。
毎度のことながら、サクヤのカッコ良さはその天才性よりも恋する少女としての度胸そのものなんですよね。そして、その勝負の行方を託すのは、ラーベルトその人なわけだ。
震えるサクヤを支えるラーベルトのまたカッコいいこと。この話では、ラーベルトは特にサクヤの剣として振舞っていたんじゃないだろうか。

前回からの傾向だけれど、キャラクター同士の掛け合いがとても活き活きしていて、読んでいてとにかく楽しい。前回から登場のセシリアは、立場上話の主筋には絡んではこれなかったけど、その分おやじのディナイスとの親娘漫才が繰り返しギャグの要領で炸裂していて、二人の親子仲も順調だなあという感慨とともに思わずニヤニヤ。新登場のカルラは、すっとぼけた人懐っこさで、色々とサクヤを弄ってくれて、恋する乙女同士の純真な想いを突き合わせてのこっぱずかしい話も広げてくれて、これが素晴らしい人材でした、はい。
肝心のカルラ対ラーベルトの近接戦闘特化の高速機動戦もかなり盛り上がったし、うん、このシリーズはどんどん面白くなってきてますよ。以降、さらに注目だ。

1巻 2巻感想