空色パンデミック2 (ファミ通文庫)

【空色パンデミック 2】 本田誠/庭 ファミ通文庫

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青井晴は、最初から女の子だと認識してその様子を見ていると、どうしてこの子を男の子だと思えるんだ、と首を傾げるくらいに所作が乙女そのものだ。今さらながら、一巻における青井晴の、いや彼女だけでなく結衣の、世界そのものにかけられた二重三重の仕掛けが見事だった事を思い知らされる。
でも、それ以上にこの作者さんの素晴らしいところは、繊細なくらいに繊細な、微小な感情の揺らぎや多寡を、美しいまでに旋律的に描写して行くその感情表現、心理描写の手腕だろうことは、青井晴とのデートや彼女のカノジョとのお互いのめり込むような鬩ぎ合いからも明らかだろう。
一巻の傑作性は、構成の妙とキャラクター表現の上手さ、両者の際立った部分が有機的に絡み合い、相乗され完全にハイブリッドされた素晴らしいまでの完成度と文学性を現出させていたことこそが肝だったように思えるのだ。
その点からすると、今回はその両者のシンクロ率は乖離し、結果としてバランスを欠いてしまっていたように思えてしまったのが残念なところ。相変わらず世界観への仕掛けは、正直気持ちが悪くなるほど巧妙で、二番煎じというほどのものは…まあ、あの親友くんの英雄的な行動など見たようなシーンの繰り返しは難儀な話だったけれど、その結果から推察される推論や、真相のさらなる奥に垣間見える真実のゆらぎなど、さらに突き詰めてきた感があり、あの現実と空想の境界がわからなくなっていく感覚の不安感は壮絶と言っていいほどで、また研ぎ澄ませてきたなあ、とゾッとするような心地すら感じたものだけれど、やっぱりそこに登場人物たちの想いが上手く乗り切っていない気がしたんだよなあ。
一巻の場合は、あの空想病の展開は最後の方のクライマックスで一気に広がり冗長になる前に素早く収拾したところに、凄みがあり、完全にキャラの想いの物語を完成させる最終兵器として機能し切ったわけだけど、今回は境界線が曖昧模糊としすぎてて、深みにハマりすぎて見なきゃいけないものもぼやけて見えにくいところに離れてしまった感じ。
空想だろうと現実だろうと、想いは本物だ、というテーマについては「その通りだ!」と共感とともに言い切れるまでには至れなかったんじゃないだろうか。
……むむ、ダラダラと齟齬を感じる部分を垂れ流してしまったが、これって単純に言ってしまうと単に「結衣さんの出番少ないよ!」と自分は言いたいだけなんじゃないだろうか、という気がして思わず赤面。ええい、構わん。いいや、恥は晒して恥と為せ。

実のところ、この世界がおかれた真相というのは、これで済まない予感もあるんですよね。ラストの恐ろしい一言、ドコロの話じゃなく。真実のもろさの一端はこの巻で嫌というほど見せつけられたわけですけれど、なんかこう、ここまでの全部ですら内包された一滴。さらにもっともっと大きい規模でナニカ企まれている気がして、一切合切まるごとひっくり返されるんじゃないだろうか、という不安感と好奇心が湧き上がって仕方がない。さて、次巻はどうなる?

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