ラブアレルゲン 1 (電撃コミックス)

【ラブアレルゲン 1】 桂遊生丸/あかほりさとる  電撃コミックス

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少女たちの揺れる恋心を描いて話題作となった 『かしまし 〜ガール・ミーツ・ガール〜』 のあかほりさとるによる、新たな恋の物語。
テーマはずばり 「恋とはなにか?」
風光明媚な温泉街を舞台に、「恋」 をしたい美少女と、「恋」 をしたくない美少年による、恋の研究が幕を開ける!
というわけで、【かしまし】以来の桂遊生丸のラブストーリーである。【かしまし】は文句なしに傑作でした。特にクライマックスに入ってからの画力は、ほとんど神がかってたと言っても過言ではない。こればっかりは幾ら絶賛しても足りないくらい。
あかほし氏の相変わらずのセンスにはやっぱりついて行けないものがあるんだけれど、それを補って余りある桂遊生丸さんの漫画力が、繊細な男女の恋心を美麗かつダイナミックに叩きつけてくれるのである。
ならば、この新シリーズも息を呑むようなラブストーリーが待っているに違いない。

恋をしたときに、好きで好きでしょうがないという状態に陥った際に分泌される脳内神経伝達物質【エンドルフィン】。このエンドルフィンに対してアレルギー体質を発症してしまったことにより、恋ができない少女・森丘ほのみ。その絶世の美貌のお陰で幼少の頃からひどい体験を繰り返してきたために、恋というものに対して偏見と拒否反応を抱く少年・山乃たすく。
片や肉体的に、片や精神的に恋を拒絶し、恋というものを知らない一組の男女が、桜の精の願いを叶えるために「恋とはいったい何なのか」を知るための研究を始めることになる。
言わばこれは、桂遊生丸版の【恋愛ラボ】だ。ちょー恋とはどんなものかしら。
二人とも、恋愛から隔離され一般的な知識すら与えられず、受け入れない環境にいた為に、恋というものに酷く無知であり、無垢ですらある。ほのみは、恋に憧れ恋に恋し恋を求め、たすくは恋を憎み、恋を恐れ、恋に背を向けようとしているというスタンスの違いがあり、もとより乗り気ではないたすくと、降って湧いたような恋愛アレルギーを治し、本当の恋を知る機会にはしゃぐほのみとは、度々すれ違いが生じてしまう。
ただ、ベクトルこそ違えど、二人が立っている場所はとても似通っていると言えるのかもしれない。恋というものを何も知らない二人だからこそ、そして何よりも純粋にして無垢なる二人だからこそ、恋というものに対して先入観なく一歩一歩近づいていく。二人が見つけ出そうとしている恋は、普通の人が決してたどりつけないような、幼い子どもたちが淡い星のように抱きしめていた、穢れの知らない宝石のような、結晶のような恋なのかもしれない。
ただ、そんな二人だからこそ、その行動と来たら体の大きな幼稚園児みたいなもので、二人を見守る役割を担うことになった御景アキの気苦労は、それこそ幼稚園の保母さん並みに大変そうだ。

そんな二人が見つけようとしている純粋無垢な恋の結晶は、だけれどまだ二人が本当の恋を知らないが故の、幻影なのかもしれない。恋とは楽しいものなのか、恋とは美しいものなのか、恋とは綺麗なものなのか。はたして、甘い砂糖菓子のようなものなのか。いつまでも浸っていたい夢のようなものなのか。
【かしまし】で、あれほど悩み苦しみ、その狂おしいまでの熱量にうなされ悶え振り回されるほどの、情熱的な恋愛劇を描いた作者が、このままで済ますはずが無い、という思いはもう確信ですらある。既に、冒頭で描かれた未来と思われるワンシーンは、まさに恋とは苦しみの中にある幸福である、というのを体現しているような鬼気迫るシーンとして描かれているのだから。
あそこまで行くのにどれだけ掛かるかわからないけれど、これはもう追いかけていくしかないってもんだ。