ミスマルカ興国物語 VII (角川スニーカー文庫)

【ミスマルカ興国物語 7】 林トモアキ/ともぞ 角川スニーカー文庫

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なんという、背筋も凍るような壮絶な展開!!
三女のルナスはまだ理解していないみたいだけれど、シャルロッテの語る現状と帝国の未来に関する見解を鑑みるなら、この第一皇女は考え得る最悪の流れの中で、敢えてその流れに乗りながら、その流れを打破するために絶対に必要だと確信した最強の駒を、手中に収める事に成功したことになる。これは恐ろしいことにミスマルカ国王ラヒルも完全に承知しており、マヒロもまたラヒルの手向けという遺言と、直前のシャルロッテとの会談から、ラヒルの意図とシャルロッテの要求を完全に理解した事が、カイエンに漏らした一言からも伺える。
シャルロッテの直前の勧誘は、彼が絶対に必要な人材だと確信したなかで、なるべく悲惨な悲劇を回避するための最後の懇願だったと言えるが、マヒロがミスマルカの王子である以上、それは絶対不可能な選択だったんですよね。あれはシャルロッテの優しさであると同時に甘さでしかない。あそこでマヒロを引っこ抜いても、ミスマルカがある以上マヒロはその才能を十全に発揮し切れないのだから。
ここで重要なのは、最終段階において獅子という表現は帝国そのものをさしており、皇帝と皇女たちはこれと分離して捉えられているところ。
そう、獅子に毒を盛ったのは誰あろう、シャルロッテその人だと言うことだ。想像だけど、確信に近いものは在る。
恐らく、彼女はこの段階で帝国を滅ぼしても構わない、と考えていることが予想出来る。最後の展開は、シャルロッテとしても自分の退路を立つ決断だったはずだ。マヒロは根本的なところで優しい部分があるし、正直皇女達に対して好意に近いものも抱いている。彼は自分の感情を押さえ込める人間だけれど、それでも決断が鈍ったりしがらみにとらわれたりする所があるのは否めない事実。
だけれど、その優しさや好意は、個人としては嬉しいだろうけれど、今後の展開としては彼に持っていて貰っては困るものなんですよね。マヒロに対しての仕打ちは、彼を頚城から解き放つと同時に、彼からそういった甘い感情を削除し、冷徹に迷いなく牙を突き立てる後押しとなるはずなのだ。
うん、そう考えるとマヒロへのシャルロッテの勧誘は甘さであると同時に、逃げでもあったのかもしれないなあ。

これは結局推察に過ぎないのだけれど、この段階でシャルロッテとマヒロはその間に憎しみと悲嘆ともしかしたら敬意が絡まり合った、だけれど紛れも無く平和という目的を同じくした同志である。
それを知るのは当人二人と、亡きラヒル。そして、下品な観客である預言者、その四人だけ。ユリカ皇女もエーデルワイスも気付いていない。

さて、ここで疑問が出てくる。
では、マヒロとシャルロッテの敵となる相手は誰なのか?
かつて古の昔、初代聖魔王誕生の時代、すべての惨劇の糸を引いていた最低最悪のキングメーカーは、ここに驚愕の復活を果たしてしまったわけだけれど、彼女は少なくともこれまで無力な存在でしかなく、復活した今後も観客に徹することを明言している。
こっそり疑っていた狐の子は、少なくともクーガーとの触れ合いの様子を見る限り、その人間性は昔と変わっていなかったようなので、これも無し。
この世界を管理する天使は今もなおちゃんと存在して世界を見守っている事は、この巻において証明された。
ならば、この動乱を影で操作しているのは誰なのか。
いずれ西から現れるという魔王はナニモノなのか。
人間も魔人も等しく滅びるという未来は、何によってもたらされるものなのか。
凄まじい展開とともに第一部が幕をおろしたわけだけれど、マヒロの旅路を追うことでこの乱世におかれた世界の各地がどのような状況にあるのかを見て回ったわけだけれど、知り得るべき情報が概ね開示された上で、しかし謎はむしろ深まるばかり。
間違いなくこの物語の本番は次からなのだろう。


しかし、マリーチの復活には心底驚いた。彼女はもう死に体以外の何者でも無いものだと、そういうものだと思い込んでいただけに。心のどこかで、アウターはこの世界観には介入しないと信じていたのかもしれない。誰も、そんなこと言ってないのにさww
やはり、あの凄まじいまでの化物っぷりは、鳥肌が立つ。いや、強さよりもあの最低最悪の根性が、全く変わらなかったことにゾクゾクとさせられた。あの圧倒的なまでの理不尽を、はたしてマヒロはどう飲み込んだのだろう。まだ、折り合いはついていないのかもしれない。

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