アップルジャック〈2〉Pousse‐caf´e (幻狼ファンタジアノベルス)

【アップルジャック 2.―Pousse-cafe―】 小竹清彦/mebae(幻狼ファンタジアノベルス)

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アップルジャックによって救われ、復讐を果たしたシトロン。彼が去ってしまった後、極悪非道な殺人鬼達を狩る仕事に意義を見出し、ストレガとスプリッツァーと共に行動を開始する。事後処理の過程で知り合った、シトロンと同い年の電脳少女・桜やクールで快活な大介に協力を仰ぎ、新たな標的に狙いをつけた一同。「プース・カフェ」と名乗る集団に対する調査は順調に進んだが、実行に移す段階で思わぬ事態に遭遇する。


迷いや苦悩にさ迷う段階をとうに済ませ、「殺人鬼を殺す殺人鬼」としての在り方に到達し、既に人間として完成されていたアップルジャック。その大樹のように揺るぎなく、安らぎを与えてくれる抱擁感、乾いた心に微笑みをもたらしてくれる優しいぬくもり、彼の備え持つ巨大な器は、少女シトロンを闇の底からすくい上げ、復讐と虚無に苛まれていたストレガとスプリッツァーに生きる歓びを思い出させ、彼らを家族のようにまとめ導いていたと言える。
だが、彼は三人に未来を遺し、去っていってしまった。

完成されたアップルジャックが牽引する第一巻は、筆者があとがきで語っているように一本の映画のようによどみの無い脚本で、クライマックスまで一気に駆け抜けて行く。
だが、一巻の主人公であったアップルジャックがああいう形で退場し、代わってシトロンが主人公として物語を担うことになるこの二巻は、一巻とはまただいぶ様相を異にしている印象だった。
アップルジャックが遺してくれた、人間としての良心と殺人衝動に折り合いをつけるために、「殺人鬼を狩る殺人鬼」としての生き方を選んだ少女シトロンは、だが未だに自分が過去に犯した罪に苦しみ、逃れられない殺人鬼としての自分の血塗られた在り方に葛藤を繰り返し、「殺人鬼を狩る殺人鬼」という生き方すらストレガやスプリッツァーたちに助けて貰わなければ実行もできないという自身の無力さに苦悩する日々だ。
アップルジャックのように完成されていないシトロンは、それゆえに孤独ではいられない。そして、この生真面目で健気で自分を愛してくれる人たちに献身的なまでに、無防備なまでに懸命に愛情を返そうとするこの少女を、それ故に仲間たちは目に入れても痛くないとばかりに愛し可愛がり慈しみ身も心も捧げ尽くして、守ろうとするのだ。それこそ、彼女を守ることが生き甲斐であり、生きる意味だと高らかに謳いながら。
非常に強固な絆に結ばれながらも、どこか皆が独立独歩、一匹狼たちがシトロンの未来を切り開くため、という目的のために一致団結して轡を並べた感じだった一巻と少し違って、二巻での彼らは共に生きてくれるぬくもりを求めたシトロンに応じて、より親密で距離感の近い本物の家族のような関係へと進展しているようだった。
ここに、シトロンと同世代の少女である桜と、陽気で惚けた神無木大介が加わることで、より賑やかに、より明るい雰囲気が作品全体へと広がっていたような気がする。優しくも妖艶な女の横顔の奥深い部分で他人と壁を隔てるようだったストレガは、前は見なかった無邪気さや少女めいた可憐さをかいま見せ、今やシトロンの本当の姉のようにすら見えるし、その陽気な振る舞いとは裏腹に虚無の影が根深く蔓延り死の匂いをプンプンさせていたスプリッツァーは、大介との惚けたやり取りからも伺えるように、今はもう不意にいなくなってしまいそうな儚さは消え失せ、頼もしいばかりの、やや野卑だけれど、姫君の守護騎士さまだ。

今回の相手が、コチラと同じくチームだというのも仲間・家族という面を強く印象づけたのかもしれない。
芸術家にして殺人鬼である6人の男女。国籍も性別もバラバラの彼らの名前は「プース・カフェ」。それぞれに特異な才能を有した殺人鬼たちとの対決は、多対多の集団戦、それも異能バトルへと推移して行く。
相手にも個性たっぷりの人材が揃ったことで、みんなにこれでもかと見せ場が用意されることになるのである。ナイフ使いとして、そしてアップルジャック譲りの司令塔としての才能を開花させるシトロンの活躍も見所なんですが、今回一番度肝を抜かれたのが、スプリッツァーの尋常でない強さ。前回は登場時がシトロンを狙う殺し屋としての立場であり、最終決戦でもド派手な銃撃戦の渦中に置かれていてそこまで目立ってなかったんですが、彼の単独での戦闘能力が発揮される機会が存分におかれた今回については、その尋常でない強さが惜しげも無く披露されるのである。
ぶっちゃけ、どうやってこんなの相手にシトロンが生き残れたのかがふしぎでしょうがないww
一巻では、あっ、こいつ途中でシトロンを庇って死にそう、みたいな気配をプンプン匂わせていた脇役に過ぎなかったのに、もう強いの何の、カッコイイの何の。なに、このスタイリッシュ/アクションの権化は(笑
まあ、一番いいところを持ってったのは、ジャック・ポッドの旦那ですけどね。絶対、この人また出てくれると思ってた。期待通りに出てきてくれたときは、思わず小躍り。このお約束を破らないところは、好きだわww
姫を見守る魔女であるはずのストレガが、むしろシトロンよりもお姫様なヒロインになってしまってたのは、笑うやら可愛いやらで。まさかストレガを可愛らしいと思う日が来るとは(笑
表紙絵のストレガはちょっと可憐すぎるだろうと最初は思ってたけれど、今回の話からしたらこのくらい若々しいのが正解だったのかも。

洒脱でスタイリッシュ、スピーディーでユーモアたっぷりの、イカレてイカしたこのセンスは変わらないどころかさらに突き抜け洗練され、映画的だった一巻よりも二巻はエンターテイメント活劇小説としてより発展してきたんじゃないでしょうか。
愉快にして痛快、素直にこの酔っ払ったようなセンスを舌鼓を打って鯨飲できる人なら、胸のすくような思いを感じながら楽しめるんじゃないでしょうか。
私は大好きだww

1巻感想