彼女は戦争妖精 小詩篇2 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 小詩篇 2】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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短編集と言いつつ、実質は中編一本と短編一本という二本構成。この中編も150ページ超あるので、実質は大中編と呼んでもいいかもしれない。なんだよ、大中編って(苦笑
この巻の主人公は、二編ともにルテティア――ルゥとなっている。中編の方は公式サイトに掲載されていた、ルゥがまだパリに居る頃、伊織の叔父である宮本頼通と出会い、一人の家族のようだったウォーライクとの別れを経験し、日本へと旅立つまでのお話。
未だ全貌が伺えないウォーライクたちに課せられた闘争の謎だけれど、この中編ではこれまで登場したウォーライクの中でも屈指の古参が出演する。彼の言が確かなら、このウォーライクたちによる戦いは、200年以上前から行われてきた事になる。数百年に渡る戦いの中で、目的を達したウォーライクは一人もいなかったのか。そもそも、この戦いの最終目的が未だ不明の段階では、どうにも判断出来ないのだけれど。
我が儘で自己中心的で他人を振り回す事に何の罪悪感も抱かないような傍若無人なルテティアだけれど、決して自分以外の人間を虫けらのように思っているとか、そんな訳じゃないんですよね。登場した当初はそのわがままっぷりからなんてヤツだろうと思ったものですけど、何故か嫌いになれなかったのは、きっちり伊織にやり込められていたのと同時に、決して他人に対して冷たい娘じゃないのが、その言動の端々から伝わってきたからかもしれません。本編でも彼女の本質というのは段々と良く見えるようになってきましたけれど、この彼女がメインとなる中編を読むと、彼女がむしろ情の深い娘だというのがよくわかる。
日本に来た当初の事件では彼女、伊織達を見捨てて一人で逃げ出し、自分を守ろうとしたけれど、あの時も何だかんだと危険を承知で舞い戻り、伊織達に手を貸してくれたんですよね。
覚醒した当初からロードもなく、身一つで逃げまわる日々。彼女の慎重すぎるほど過敏な自己防衛の行動はこの過酷な逃亡生活で培われ、パリでの事件で生まれて初めて自分を大切に守ってくれた家族を失った事で、その性状は決定的なものになっている。臆病と呼ばれても仕方の無い自己防衛本能は、もう彼女とは切っても切れない根っこに根づいてしまったものなのに、土壇場になるとどうしても親しくなった相手を見捨てられないんですよね、この娘は。きっと、それは一番大切だった人を失った痛みと恐怖を覚えているからなんでしょう。
伊織なんかはまだ、ルゥのことを誤解していると思うんだよなあ。まあ、普段のひどいとしか言い様の無い態度を見てたら、仕方の無いことなんだろうけど。実際、ルゥは伊織のこと、嫌いだろうし。でも、嫌いでも長らく孤独だったルゥにとって伊織はもう、失ってしまったら痛くて耐えられない人になってるんだろうなあ。
頼通おじさんが本格的に登場したのはこの短編が初めてか。いや、本編では5巻でも本格的に出てるのか、先に公式サイトでこの話を読んでたので、印象的にはこっちが先なんだよなあ。この人、生真面目な伊織と違って軽いし飄々として女癖も悪いアレな人なんだけれど、根本の頑固でこうと決めたら譲らないという芯の固さは、確かに伊織とよく似てるんですよね。やっぱり血を分けた叔父と甥だなあ、と。


もう一本はルゥと彼女のロードになったさつきの話。時系列的には5巻のあと、最新の話になるわけか。
未だにルゥがなんでさつきをロードに選んだのかわからんよなあ。ルゥの性格からして、面倒くさいことこの上ない鬱陶しいさつきとの相性は決して良くないように思うんだけれど。でも、意外とルゥはさつきのこと、いちいち細かいところまで指摘して構ってるんですよね。普段の生活面でも、戦闘時でも。戦闘時はちゃんと現実と常識を弁えさせないと生き残れないというのもあるんだろうけれど……。
案外、ルゥは自分よりもどうしようもない相手には世話好きな面があるのかもしれないなあ。あのお子ちゃまクリスに対しても、普段から妙に優しいし。相変わらず相手の話を聞かない自己中心的ではあるんだけれど、さつきに対してはわがまま言って振り回すのではなく、終始彼女のためのアドバイスに徹しているのだし。
さつきはもう、本当にどうしようもない娘なんだけれど、ルゥが放り出さずに今回みたいにきっちり指導し修正してくれるなら、少なくとも伊織たちの足を引っ張らない程度までには成長してくれる、とありがたいと期待したいw なんだか、こうなってしまうとルゥが頼もしくなってくるよ(苦笑

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