グロリアスドーン11 幾億の時を超え星を超え、 (HJ文庫)

【グロリアスドーン 11.幾億の時を越え星を越え、】 庄司卓/四季童子 HJ文庫

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恵子が日本を去る――唐突に訪れた別れの予感に動揺を隠せない広大たち。一方、宇宙の調整者を自認するサウザンドメイズィスは、ティセたちに対抗すべく最悪の切り札を持ち出した。事態の解決をはかるため、ついに審判の四姉妹が力をひとつにする!発動「オペレーションビッグバード」!! 宇宙と足立区を揺るがすスペースラブファンタジー、驚天動地の第11弾!!

【妖星ゴラス】という往年の特撮の傑作をご存知だろうか。小惑星衝突による地球滅亡の危機、というテーマの映画は1998年のアルマゲドンを筆頭に著名なものが沢山ある。が、アルマゲドンが小惑星の爆破による衝突回避を試みたのに対し、【妖星ゴラス】は今なお伝説として語られる特撮史上最大のスケールの作戦を持って、地球滅亡の回避を試みた。
それこそ、地球そのものを衝突軌道から移動させる、という<南極作戦>である。

いや、実際に見たことはないんですけどね。公開が1962年ですし。さすがにまだ生まれてすらいない。とはいえ、あの地球そのものを動かすというとてつもないスケールの設定のインパクトは相当なもので、小さい頃からあの地球が移動して行くシーンだけは何故かかすかに覚えがあるのです。多分、映画そのものは見たことないと思うんだけどなあ。
「オペレーションビッグバード」、作中で決行される、地球と月そのものを移動して、目りグラントクラフトの襲来から回避させるという作戦に、ついつい妖星ゴラスを思い出してしまった次第。
とはいえ、こちらはあの特撮よりもより飛び抜けたスケールで、行われるわけですけれど。でもね、そのスケールこそが背筋が寒くなるような、得体の知れない感情を湧き立たせるんですよね。宇宙規模のスケール、SF作品で描かれる壮大な時間と空間の広がり。それは人間という小さな生命体からすると、とてもじゃないけれど理解し難い断絶がある。ここで描かれる幻想的とすら言える光景もまた、美しいと言う以上に心に虚が生じてくる光景でもある。このグロリアスドーンという作品は、アニメ、漫画、ライトノベルといったジャンルにおけるSFの通例通り、宇宙という存在をすごく身近に感じさせる作品でも在るのだけれど、それと同時に宇宙に簡単に飛び出せることで逆にその深遠さ、広大さ、地球という星が宇宙という空間の中でどれほど芥子粒、塵芥のような存在かがより直裁的に伝わってくる、伝えようとしているという意味でひとつの特異なシリーズでもあるんですよね。
そんな宇宙の広大さと自分の存在の卑小さを比べた時に感じる感情を、なんというのか。それを、普通の人間が体験し得ない光景を目の当たりにした主人公の広大はこんな風に語っています。
「うまく言えないけれど……。恐ろしいという感情とは少し違う。ただなんていうのかな、やるせないというか、どうにもならない絶望感というものなのかも知れない」
地球人類とbioクラフトの間に横たわるどうしようもない断絶を、彼の語った言葉はある意味的確に、率直に物語っているのかも知れない。
広大の父・大地や一部の地球人、bioクラフトが抱く両生命体の接触が両者に拭いがたい禍根を残すという危惧は、決して根拠がないものではないのだ。
クライマックスまで残り僅かとなったこの時期、様々な思惑が、情愛が絡み合い、地球人とbioクラフトとの関係の歪さが、広大たちの身近なところまで及んでくる。何時までも続くかのような日常が次々と破綻していき、立場が、千々に乱れる想いが、切れるはずの無い繋がりを断ち切っていく。
地球人とbioクラフトはこの先もずっと共存していけるのか。その答えは決して雄大なスケールで、全人類規模の視点で導き出すものではなく、ティセたちbioクラフトの姉妹たちが実際に人の生活の中に入り込み、築き上げた関係の中から導き出されるものなのだろう。ティセたちと、彼女たちと友達になった地球人の少年少女たち。彼らが一緒になって作り上げた日常は、こうしてより上位の意志、親であり一族であり国家であり種族である存在の事情や思惑によって引き裂かれて行こうとしている。でもだからこそ、逆にこの壊れて行く日常を立て直すことで、より上位へと両種族の断絶を乗り越えるナニカを波及させていくことも叶うのではないだろうか。

まあ、今の段階ではみんな、上手くやれてないんですけどねえ。特に、広大の恵子への対応は完全に失敗だったと思われ。幼馴染は空気のように身近な存在、というけれど、空気のように気にしないままやり過ごしてしまう、という側面もあるわけで、広大は恵子のサインを見落としてしまったわけだ。
恵子の事情もあって、全般に重苦しい雰囲気で進む本編だけれど、体育祭の前後あたりは普段の明るさがあって良かったんだけどなあ。特に、ティセ、ティル、ティオの姉妹三人だけによる謎の会話シーン。あの不思議時空はラヴィーじゃなくても笑うわなあ。

感想書くたびに言ってる気がするけど、このシリーズは宇宙での戦闘シーンにしてもキャラクターにしても絶対映像映えするのでアニメ化しないかなあ。