ココロコネクト キズランダム (ファミ通文庫)

【ココロコネクト キズランダム】 庵田定夏/白身魚  ファミ通文庫

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"人格入れ替わり"現象を乗り越え、太一たち文研部員はおだやかな日常を取り戻した。そんなある日の放課後、突如稲葉が太一に襲いかかる! さらに唯が見せた机を叩き割るという過剰な行為。そして太一と伊織には、奇妙な感覚が湧きあがった──体が、勝手に、動きだす? そんな矢先、太一は青木と唯が補導されたと聞かされて……!? 再び現れた<ふうせんかずら>と新たな試練。5人の想いは錯綜し、確かに思えた絆は打ち砕かれる! 愛と青春の五角形【ペンタゴン】コメディ、痛みと涙の第2弾!!
うはははは、これはすっげえ、素晴らしかった。うん、最高ッ。傑作だ、これ。
一作目を読んだ時は、この五人組のあまりの素敵さに悶えまくっていたのだけれど、肝心の彼らが抱えている問題へのアプローチの仕方や、人格転移を含めた各種問題の解決への筋立てに多少無骨さというか、強引さを感じてたんですよね。一巻の感想でその辺への不満点についていささか触れているのですけれど……あっけにとられましたよ。一巻で「んー」と感じた部分、全部解消されちゃってるよこれ!!
一巻の段階で絶賛しまくってたキャラクターデザインの部分は一切クオリティが落ちないまま、それ以外のすべてのクオリティをあげてきたんだから、そりゃあ傑作になるわ。
一番感心した部分が、主人公の太一の、主人公のスキルとしては定番にして最強の、でも人間としてはかなり問題のあるその性格、自己犠牲を厭わない過剰なほどの救人衝動。一巻の時には何だかんだと人格入れ替わりをきっかけに起こった各人の破綻を間際で救いせき止める突破口になったそれだけれど、今回に関しては必ずしも役に立つどころか、むしろ彼のその衝動が他人を巻き込んで惨憺たる有り様になってしまうんですよね。
以前から稲葉姫子をはじめとした多くの人に、太一の性格の危険性は指摘されてたんだけれど、本人は結局反省も何もしてなかったっぽいんですよね。心のどこかで自分の正当性を信じ込んでいた。それが、今回の一件でその危険性、異常性、独善性、自己の肥大した傲慢さ、と言った一面があからさまなほど浮き彫りになってしまい、太一は自分がどんな人間かをこれでもかと言うくらいに思い知らされて、もうコテンパンに叩きのめされてしまうのです。
でも、誰かを助けたい、という気持ちは決して非難されるものでも否定されるべきものでも卑下するものでもないんですよね。それは人間の持つ原初の善性。それが独善と傲慢に傾けばろくでもないものになってしまうけれど、本来は誰もが持っている素朴な想い。太一は痛い目を見てしまうのですけれど、同時に彼の持つ善性は否定されずに、その方向性の正しさを肯定されるわけです。この辺のバランス調整が、この二巻では格段に上手く言ってるんですよね。お陰で、この話が終了した時点で、太一は間違いなく一巻の時点より人間として成長を果たしている。
それは、他の四人についても同様で、実のところ一巻では各人の持つ問題を共有し、現状の危機を回避したけれども、問題の根本的解決には至っていなかったんですよね。いや、本来なら個々人の内にしまわれている問題を共有して、お互いに気遣いあいながら徐々に解決していこうという姿勢は、全然間違っていないし、ひとつの方策ではあるんですよ。でも、進展という意味ではそれほどでもなかった。この辺は人ぞれぞれ、解釈があるかもしれませんけどね。自分は伊織や唯の問題は徐々に解消していけたかもしれないけれど、稲葉と太一に関してはこの流れでは変わるのは難しかったんじゃないかなあ、と考えています。
それが、この二巻では全員が覿面に変化と成長を体得することに成功しているのです。もう、劇的と言っていいほどに。
同時に、最初の段階で既に強固なつながりがあり、人格入れ替えを経てさらに強まっていた文研部五人の絆は、今回の一件を経て、それこそ一生ものの絆へと進捗してるんですよね。
太一たちが、大切な親友だからこそ傷つけたくない、から、親友同士だからこそ傷つけあえる、という結論に至った時の感動は、ちょっと我乍ら凄かったです。言うのは簡単だけれど、実際に傷付き合い、苦しみ抜いた末にそこに至れるのって、とんでもないことですよ。この五人は、痺れるほどに最高だわ。
そして、伊織と稲葉の本気のぶつかり合いの果てにさらけ出された、新しい稲葉姫子の素顔。後半は、伊織と稲葉、特に稲葉の独壇場。前回、伊織に全部持ってかれて、正直「えー」と思ってた分を、今回で全部取り戻してくれましたよ。もう、滅茶苦茶可愛かった、死ぬほど可愛かった。一巻からこっち、この姫子が一番大物に見えて一番面倒くさくて、一番可愛いんですよね。もう、最高、好きだーーーっ!!
あらゆる反応がもういちいちツボを突く。いちいち可愛い。こんな稲葉に負けず劣らず面白可愛いんだから、伊織もとんでもない女だよなあ。正直、甲乙付けがたい。
これはもう、どっちかを選ばせてその後気まずくならないようにするより、両方捕まえてくれるように太一に納得させる方が遥かに簡単だと思うんですけどね、稲葉先生ww
青木と唯も、前にもましていい雰囲気になってるし。校外学習でワンシーンは、素敵極まりなかった。
このシリーズ、まだ続くのかなあ。もうこの段階でほとんどこの五人、弄りようのないくらい完成されちゃったようにも思うんだけど。もう「ふうせんかずら」によって何が起きても動じなさそうだ。もういっそ、このままキャッキャウフフのラブコメやってくれても何も問題ないですよ?(笑

1巻感想