なれる!SE―2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)

【なれる!SE 2週間でわかる?SE入門】 夏海公司/Ixy 電撃文庫

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この主人公の工兵って、実際「当たり」の新人じゃないのか!? と読みながらしみじみと思ってしまった。新社会人であり、業界に対する知識も何にもない以上、仕事は出来ないし何も知らない、何も出来ない、というのはまあ仕方ないとして、その段階でも結構「使えるヤツ」と「使えないヤツ」って顕著に出てしまうんですよね。いや、何もできないこの段階だからこそ見極めやすいというべきなのか。ん、そこまで偉そうに言えるほどのナニカがあるわけじゃないんですけどね(弱気
その意味では、この工兵は間違いなく当たりだ。
右も左もわからない段階で、自惚れているわけでも図にのっているわけでもなく、むしろ初めてばかり事柄とひどい仕事環境に腰が引けまくっている状態にも関わらず、咄嗟に自発的に動ける、というのはそれだけで得難い資質。周りが見えていて、ビビりながら、自分から動ける、これってなかなか出来ないのよね。責任の何たるかも理解できずに自分勝手に動くヤツや、責任の何たるかに腰引けて言われた事しかしないヤツ、そもそもナニも考えておらず何もしないやつ、こういうのならナンボでも居るんだけどね。
ちなみに、自分も相当「使えないヤツ」の方に含まれてしまう人材なので、色々と身につまされるww
それでなくても、入社直後の自分ってなにもできないんだ、と思い知らされる数々のエピソードには胃がキリキリと痛くなるような、胸をガリガリと掻きむしられるような、もう勘弁してくれというキツい感覚に苛まれたというのに……(苦笑
あー、これは今働いている人なら多かれ少なかれ体験してる事だから、これは色々とクるものがあるだろうなあ、見たら。
自分が今働いているところなんて相当ぬるいから、自分なんか楽しまくってると思うんだけど、それでも「あうあう」と泡を吹きたくなったもんなあ(ww

専門用語については、もうサッパリわからない。わからないんだけれど、これってしっかり読み込みさえすればかなり理解しやすいように書いてるんじゃないかな、というのが伝わってくる。さっぱり用語がわからなくても、何をやってるんだろう、位の事はなんとなくわかる気がするし。わかる気がするだけかもしれないけど。

いわゆるブラック企業モノなんだけど、この会社、社長こそダメというか社員視点からすれば危険だけど、直属の上司になる室見さんといい、カモメさんといい、先輩連中はこれ、かなり当たりなんじゃないのかしら。室見さんの教え方は実際無茶苦茶で、工兵が憤り暗澹たる思いに沈んでしまうのも致し方ない所があるし、仕事っぷりも技術面はともかく、それ以外は相当飛ばしてるし、素晴らしい先輩、というわけじゃないんだけれど、新人に対する姿勢としてはめちゃくちゃ真摯で親切で熱心。頼むに足る人なんですよね。いやもう、ひどい人はひどいもんなあ。
とはいえ、仕事内容の最悪さはどう考えてもアレなので、やっぱりブラック企業か。でもでも、他のSEもの読んでるとまだまだこの段階が通常以下というのがわかるので恐ろしい。いわゆるデスパレードは、まともな人間生活勤しんでいる人間からすると想像の埒外にある領域だもんなあ。
まだ話としては、工兵くんがこの業界で働いていこうと思ってしまうまでしか進んでおらず、室見さんのプライベートの事情や、ソフト開発部、デスパレードなど話のネタはいくらでも残っているので、これ好評なら続きそうだなww
いや、実際これ、ライトノベルとしても非常に良質な出来栄えだと思いますよ。工兵くんは新人という範疇で出来る限りの頑張りを見せて、さらに主人公らしいヒロインへの心遣いとかさり気なくしてますし、エキセントイックな室見さんとの関係も、今のところは職場の仲間ですけど上手くそれ以上に発展させていくだけの基礎部分も構築されてますし。
この辺の、仕事ものとライトノベルとしてのバランスは絶妙に織りなされているように思います。伊達に1シリーズ完結させてない、って事で。
面白かったです、はい。