少女ノイズ (光文社文庫)

【少女ノイズ】 三雲岳斗  光文社文庫

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ふぅん…………いや、いきなり「ふぅん」はないだろうって話なんですが、読了したあと結構日にち経ってこうやって感想の文章を立ち上げているのですが、未だに考えがまとまらない部分があって、思わず冒頭から考え考えしながら書く事になってしまった。ぶっちゃけ頭の中でグルグル考えてみるよりも、こうして書きながらまとめていった方が思考も浮き上がってくるというものなので、とりあえず書いてみることにしたんですけどね。
結局のところ、スカが冥に惹かれた部分ってどこだったんでしょうね。スカが彼女に魅入られたのは、彼女が活力を放棄し生気を消し去り、死体のように横たわっている姿だったはず。殺人事件の犯行現場を写真撮影する趣味、というより衝動を抱えているスカにとって、冥のそれは色濃く死を感じさせ魂を引っ張られる対象だったはず。
ところが、スカは冥の死の影にこそ惹かれたにも関わらず、彼女が死に引っ張られる事については懸命に阻止しようとするんですよね。彼女が生きてくれる事を心の底から願っている。
だとしたら、スカが冥に魂を惹かれた理由とはなんだったんだろう。そう疑問を覚えると、そもそもスカがどうして殺人事件の犯行現場にあれほど執着するのか、その理由まで疑問に思えてくる。
スカは、少なくとも前半のスカは自分の因業を死に引き寄せられているみたいなイメージを持っているみたいだけれど、もしかしたら違うのかも知れない。本当に死に惹かれているのなら、殺人現場よりも死体そのものに執着しているんじゃないだろうか。あるエピソードでは殺人事件が発生した直後の警察が駆けつける前、死体が現場にある状態で夢中で写真撮影してしまうシーンがあるけれど、あれも死体そのものには関心がなかったのかもしれない。
だとすると、スカが夢中になっているのはどの部分なのか……。
むしろ、彼は死の影に埋没しそうになりながら消えずにある生命の輝きみたいなものを追いかけているのかも知れない。なんて想像を殺人現場と関連付けるのはかなり苦しいとは思うんだけど。

解説の有川浩さんの文言には、さすがに苦笑を禁じなかった。解説ともなると、曖昧に濁すよりもこのくらい極端に放言した方がすっきりしていいのかもしれないけどね。確かに、ミステリーとしての側面よりも冥とスカの関係の距離感にこそ焦点を当てると面白い作品だしなあ。スカも冥も淡々としてクールな二人組なんだけど、二人とも静かに情熱的なところがあるので二人のやり取りは見ていて楽しいし。特に冥は、後半に行くにつれて密かに随分とスカに対する独占欲が強くなっていくのが、些細や言動から伝わってくるので思わずニヤニヤしてしまうこと請け合いである。いや、あの独占欲はけっこう厄介そうではあるけれど。素っ気ない関係の段階ですらこれなら、本格的に繋がってしまった時の嫉妬はちょっと偉いことになりそう。まあ、スカは八方美人どころか興味ない相手には冷たいくらいだから、だいたい大丈夫だろうけどさ。
面白い点というなら、各エピソードの起因となる要素がまた密かに特殊な共通点があって面白いんですよね。
本来ならどれも動機が他愛もあい痴情の縺れなんですが……これに気がつくと、タイトルの【少女ノイズ】というのも色々と意味深な意味合いを勘ぐれてしまうんですよね。悪戯心というか、趣味が悪いというかイイというか。