世界平和は一家団欒のあとに〈10〉リトルワールド (電撃文庫)


【世界平和は一家団欒のあとに 10.リトルワールド】 橋本和也/さめだ小判 電撃文庫

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世界と家族の平和を天秤にかける物語、堂々の完結編!

 妹の危機。悪の大首領との交流。異世界からきたあの人。幼児化した姉。母の家出。神様との対決。祖父の右腕との戦い。宇宙人の少女。
 世界の危機も、家族の危機も、いろいろあった一年。そして巡ってきた冬──、柚島が失踪した。一通のメールだけを残して行方がしれなくなった。それと時を同じくして、星弓家の面々は謎の男の襲撃を受ける。そして美智乃は勘付く。柚島の家族の秘密に。
 自らにも危機が迫るなか、軋人は本当に大切なものを守れるのか。ついにクライマックス!

感無量!
これ以上ないくらいの大団円。全部やり切った上でのハッピーエンド。宇宙一素敵な家族の、素晴らしい物語もこれで最後。愛すべき星弓家の人たちと会えるのもこれで最後と思うと、切なくて切なくて、どれほど自分がこの作品を、というよりもこの物語に出てくる人たちをいとおしく思っていたかを改めて実感する。すべて終わった今となっては、思いっきり抱きしめてまわりたいほど。
感極まって、胸が詰まってしまいました。
最後を締めるのは、もちろん星弓さん家のお嫁さんこと柚島香奈子。そして、彼女の旦那である星弓軋人のラブストーリー、と言うとなんか語弊があるな。ぶっちゃけて言うならば、実家に帰るとぐずるは、見栄も外聞も掻き捨てた誠心誠意の愛情こそが一番ですよ、旦那さん、というお話? というのは極論が過ぎるだろうか。
そうだよな、そんな格好の悪い話じゃなかったもんね。軋人はそんなヘタレじゃないもんな。香奈子を不安にさせてしまったのは悪いかも知れないけれど、そんな関係に安住していたのは香奈子も一緒。多少出遅れたとはいえ、約束通り香奈子のピンチには颯爽と現れて、彼女が一番欲しかった言葉を気持ちイイほどきっちりすっぱり惜しげも無く叩きつけてくれたんだから、男として、旦那としていささかも申し分なし。さすがは星弓さん家のみんなが頼る長男である。
そう、見栄も外聞も吐き捨てた誠心誠意の愛情なんざお為ごかし。嫁を連れ戻すにゃあ、ごちゃごちゃ言わずに言わせずに、たった一言告げりゃあいいのさ、そうだろう?
真実はいつだってシンプルで、それを表すには小難しい言葉なんて必要ない。逃げも隠れも誤魔化しもせず、素直に率直に、想ってることを端的に、そのまんま伝えればそれで、それだけで、これ以上ない最高の、告白になるんだから。
でも、そんな単純なことをばっちりやりきれる野郎ってのは意外といないんだよね。昨今の主人公というのは、ただのヘタレを最もらしく小賢しく小難しく理由付けて堂々巡りに終始する。それに比べて、軋人のなんと痛快なことか。なんとカッコイイことか。惚れ惚れとする。
近年屈指の、最高の主人公で、最高の男だよ、星弓軋人は。

ナナミ姉と親父さんが不在だったけれど、次男・刻人の彼女の梢がきっちり星弓家の一員として一緒にかけずり回ってくれたのは嬉しかったなあ。そうなのだ、柚島と同じく梢だって星弓家のお嫁さん、だもんねえ。
相変わらず竜介さんと順調そうな彩姉に加えて、どうやら美智乃にもイイ人が出来そうなのにはちょっと驚いた。そうか、煉次さんの孫と交流進んでいたのか。当人は登場しないものの、美智乃の心象やメールのやり取りから浮かび上がるそのキャラクター、なかなか良さそうじゃないの。軋人は妹に手を出すやつは許さん、などと憤ってるけど、その煉次の孫の宗次くん、どうも軋人の好みにドストライクな気がするんだよなあ。実際会ったら、絶対気に入りそう。意外とこの一家の男の好みって共通してそう。竜助も無骨なたいぷだもんな。
……七実だけ、子どもだけ先にできて相手がいないというピンチ(笑

リトルワールド、という最後のサブタイトルがこのシリーズの根源と最終巻におけるシリーズの集大成を見事に表していて、スバラシイの一言。
もっともっと、この素敵な家族のお話を見ていたかったけれど、どんな物語にも終わりは来るもの。それは残念な話だけれど、作品自体は終わってもこの世界の中で登場人物たちがこの先もずっと生きていき、もう読めないけれどこの後もきっと幸せにやっていくんだと実感出来る終わり方ほど素晴らしい終わり方はないのです。
そんな終わり方を、この【世界平和は一家団欒のあとに】という作品はこれ以上なくらい最高の形で見せてくれました。ただただ、こんな素晴らしい作品を送り出してくれた作者さんに感謝を。
お疲れ様でした。次回作、この上なく期待しております。

シリーズ感想