レンタル・フルムーン〈3〉第三訓 星に願ってはいけません (電撃文庫)

【レンタル・フルムーン 3.第三訓 星に願ってはいけません】  瀬那和章/すまき俊悟  電撃文庫

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前の巻の感想の終わりに、クルンのあまりの健気さに感動した挙句に「もう、子猫物語ならぬ<クルン物語>として普段の彼女の生活を映像化して映画館で上映したらいいじゃない!」とのたまったら、子猫物語のチャトランよろしくクルンが旅立ってしまいました、ガッデム!!


クルンがまさかの家出!? どうなる満月堂。人気シリーズ第3弾!!

 七夕も近づいた夏のある日。満月堂に“珍客”が訪れる。聖獣界の主、聖獣王は、この世界の『観測者』ツクモのアシスタントとして働くクルンを “審査”しに来たのだという。ところが審査日当日、楽勝かと思われたテストは、予期せぬトラブルで……。傷心から満月堂を飛び出してしまったクルンを追って、ツクモと新太は聖獣界に向かう──!? 
 七夕パーティーでのカラオケデュエットなど、ツクモとの“距離”が近づく(?)一方で、俺は、クルンとの関係もまた変化していたことに気付いていなかった。ちくしょう、行くなクルンっ!!
母親が出ていって以来、満月堂の店主と観測者としての役割をなんとかこなしてきたツクモ(こなせてなかったという正論は聞こえない!)。その傍らで、彼女を支え続けた唯一の家族はクルンという健気で献身的な少女だったのです。ですが、そんな二人の前に現れた少年・新太。彼が現れたことでツクモとクルンの二人きりだった日常は大きく変化し、以前の穏やかだけれど少し物寂しい毎日は、刺激的で酷く楽しいものになったのでした。そして、ツクモと新太は徐々に惹かれあい、二人の距離はいつしか寄り添うような近しいものになっていたのです。そんな二人を、特に以前よりもより幸せそうになったご主人様のツクモを暖かく見守っていたクルンでしたが、ふとした瞬間気づいてしまうのです。もうツクモには、新太という大切な人が出来たのだから、彼女はもう寂しくないのだから、もう彼女の傍には自分の居場所はないのではないか。自分はもう、要らない子になってしまったんじゃないだろうか。
かつて自分が居た場所、ツクモの傍らに新太が立っているのを見て、不安と寂しさに駆られながらクルンは一生懸命自分の居場所を探そうと頑張るのですが、意気込みが焦りから空回りし普段なら失敗しないようなことまでしくじりを重ねてしまい、そこに主人のツクモとのすれ違いが生じることで、クルンはついに自分の役割が終わってしまったのだと思い込み、姿を消してしまうのでした。
ツクモの真意を違えたまま、新太の気遣いに気づかぬまま。

ツクモと新太の関係は、ツクモの平坦な性格もあってまだ恋人というほど熱量も無い素っ気ないものだけれど、新太が思っているよりもずっとツクモは新太の事を身近で傍に居て欲しい存在だと思っていたのでしょう。前々から、日記で触れられていたように、新太もツクモ自身もよくわかっていないツクモの感情を一番理解していたのがクルンでした。その彼女が、新太に自分の居場所を取って変わられた、と思ったと言うことは、それだけツクモが新太が自分にとってかけがえのない存在だと無意識上でも思っているのは間違いないでしょう。
それだけ距離感の縮まった二人だけれど、それは同時にツクモとセットだったクルンを置いてけぼりにしてしまうということ。痴情の縺れによる三角関係では絶対にないのだけれど、三人以上の人間が集まってその距離感が変わってしまうと言うことは、以前とバランスが崩れてしまうということなんでしょうね。ツクモの考え無しのところとクルンの遠慮がちなところが拗れてすれ違ってしまったという点は大きいけれど、大局的に見てなあなあでは済まずに、一旦三人の関係を解いて再構成しないといけない段階にあったのかもしれません。
その意味では、クルンの家出は雨降って地固まる、満月堂の結束と絆を固めるよいエピソードだったのかもしれません。ツクモはつまらないところで意地っ張りの見栄っ張りだけれど、大事なところ肝心なところでは驚くほど素直で率直なので、為すべきことをするのにもたもたしませんし、少なくとも感情の行き違いがもつれる可能性は少なかったですしね。実際、もめたのは当人同士というよりも世界観の制度や慣例の問題とクルンの兄貴の妨害が主だった原因でしたし。
まあ、そのツクモの素直さを引き出すのは、いつだって新太の直言なんですけどね。ツクモはちゃんと聞く耳持っているのですけれど、彼女にちゃんとまともな事を言って聞かす人がなかなかいなかったんだろうなあ。周りに残ってた連中、神さまは完全にダメなことしか言わないし、クルンはツクモ礼讃主義者であんまりツクモに意見したりしないわけだし。
そんな意味でも、ツクモにとっては新太はかけがえのない存在になってるんだろうなあ。あんまり顔にはでないけど、新太に女性が近づくと嫉妬もしてるんですよね。けっこう素早く間に割って入って邪魔してるのなんか、かわいいのなんの。これでツクモ自身が自分がなんでそんなことをしているのかもっと自覚的になってくれれば、もっともっとニヤニヤ展開に入っていくんだけどなあ。現段階で既に他の女とイチャイチャしてたら不愉快に感じるのだ、と明言しているので、なんでそう思うのかをちゃんと考えてくれ、と言いたい。いやこの娘、ほんと考えないから(笑
意外とそのまま素直クールに直行してしまう可能性も高いのですがw

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