ポップコーンアバター 3 (少年サンデーコミックス)

【ポップコーンアバター 3】 星野倖一郎  サンデーコミックス

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ウェブ上で掲載している無料のコミックサイト「クラブサンデー」。これはそこで掲載されている漫画なのだけれど、知名度がないからかなあ、話題にもあんまりのぼらないんですよね。
これ、青春ラブストーリーとしても主人公の成長ものとしてもとびっきり面白いと思うんだけどなあ。
幼い頃に妹を死なせかけてしまった事がトラウマとなり、陰気で厭世的な日々を送る蔵人の前に現れた底抜けに明るく天真爛漫で溌剌とした少女、リサ・ヴァーユ。インド神話における風神ヴァーユの生まれ変わりである彼女に見込まれ、彼女の化身として神族と魔族の争いに巻き込まれた蔵人の明日や如何に、というのが本作のあらすじなんだろうけど、実のところ神族と魔族の争いというのはメインじゃなくて、これって蔵人がリサに応援されることで自分のトラウマを克服していき、逃げ出していたいろんなものと向き合えるようになる、主人公の成長物語なんですよね。そして、この巻ではリサの方にもたまたま蔵人をパートナーに選んだわけではなく、彼女なりの事情と思惑、そして想いがあって蔵人を自分の命を預けるアバターに選んだ理由が明かされるわけです。
傍若無人に見えて、その実とても繊細かつ気を遣って、孤立し孤独になっていこうとする蔵人を学校に馴染ませ、後ろ向きになりがちなその性格を叱咤激励して尻をたたくリサの蔵人への想い。そんな彼女を最初は鬱陶しく思いながら、何故かそんな彼女に逆らえず、いつしか彼女の騒がしいくらいの言動が心地よく感じてしまっている自分に気づく蔵人。

私は、こんなんだから緊張感なく見えるかもしれないけど、常に本気なの!
それに……これだけは信じてほしい。
私は、蔵人じゃなきゃダメなんだ!!
リサは、オレが欲しい言葉をくれるんだ。リサのヤツはいっつも全開の本気なんだ。本気で笑って、本気で怒って…オレを殴る時も本気なんだ!
リサは自分にもオレにも絶対ウソは言わない。
オレが…オレには出来ないと諦めてしまっても、リサはできるって言うんだよ。
オレは、リサといるのが嫌じゃない!!
最初はあまりにパワフルすぎて何者かもわからなかったリサ。でも、風邪で寝込んで弱くなってる姿や、幼い頃の思い出を手繰り寄せ、一生懸命自分にできることで蔵人にかつて貰ったものを返そうとする決意、そして幼い頃の出来事を蔵人が覚えていると知った時の慌てふためく様子など、いつの間にかすっかり女の子してるんですよね。大切な男の子のために精一杯自分の出来ることをやりきろうとする恋する女の子に。
そして、リサの突拍子もない行動に振り回されながら、いつしかリサの事を本当に大切に思い始めている蔵人。
妹とのわだかまり、トラウマの一端を解消出来たあとにリサと妹の真冬にみせた蔵人の笑顔は、こっちがドキッとするくらいに柔らかく気持ちのいい笑顔で、うっかり魅入ってしまったぜ。

陥っていた停滞から一歩抜け出し、リサとのコンビも前にもまして近しいものになった蔵人。
ここでもう、ある程度彼が抱えていた問題は解消されたわけですけど、おっとそうは問屋がおろさない。ここで事態は蔵人本人の問題から、妹の真冬とパートナーのリサの方へと移っていくわけですな。ここでようやく、神族と魔族の争いが深刻に絡んでくることになる。世界の命運というお題目はさておいて、大切な人の命運に関わる問題が。
なるほどなあ、ここで蔵人が過去に「妹を殺した」と呼ばれる因縁が絡んできてしまうのか。この展開は正直予想していなかった。ある意味、将来的に蔵人は選択を突きつけられることになるんだろうか。真冬とリサ、どちらの大切な人を選ぶのか、という過酷な選択を。

まっとうな青春モノとしてももちろん、惚けたノリのコメディもテンポよくて面白いし、リサはあっけらかんとしているのにわがままボディ(死語)で、存在しているだけでエロいし、かなりの良作だと思うんですよね。まだ三巻しか出てないし、今のうちにもっと売れないもんかなあ。

1巻感想