蒼穹のカルマ5 (富士見ファンタジア文庫)

【蒼穹のカルマ 5】  橘公司/森沢晴行 富士見ファンタジア文庫

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「キャンキャンキャンディ☆ロリぽっぷん! みるきータッチで、スウィートちぇ〜んじっ!」かけ声とともに持っていたステッキから光が溢れ、駆真を包み込む。魔法少女キャンディカルマ、ここに見っ参!?
表紙といい公式のあらすじといい、一体何がしたいんだっ!!?
と、あまりの意味不明さに頭抱えて仕方無しに本編見たら、概ねこの通りでした。

どうしてこうなった!?

三巻からこっち、公式のあらすじ紹介のカオスさが収拾つかなくなっているのだが、恐るべき事に実際に中身を読むと決して間違っていない事に震撼させられる。
一瞬妥当で無難でつまらない方向に舵を切り掛けてしまった2巻は度外視するとして、それ以外はこの作品の傾向は一貫している。
ハチャメチャでデタラメで無軌道で無茶苦茶に脱線しまくった展開は、終わってみると見事に一点収束させられていて、物語の整合性がいつの間にかとれており、読んでるこっちは狐につままれたような感覚のまま盛り上がるクライマックスに拍手してしまっているという、この風呂敷を広げて畳む手腕は、いっそ凄まじいとすら言えるかもしれない。
王子様に見初められたシンデレラをぽかんと見送る義理の姉の気分、もしくはどう見てもゲテモノにしか見えない料理が食べてみると信じられないほど美味しかった、みたいな。つまるところ、過程の様子とその結果がどう考えても辻褄が合わないような気がする「どうしてこうなった!?」という騙されたみたいな感じにさせられるんですよね、この作品。
もちろん、実際に過程と結果の辻褄があっていないなどと言うことは全然なくて、予断と偏見を除いて客観的に話の流れを追っていくと、まったくもって実直なほどに話はまともに転がっていっているのです。転がっている場所があまりにもおかしいので、???という精神状態に陥ってしまうのですが。

だいたい、いったい何がどうなってあのカルマが十二歳になって魔法少女になって「キャンキャンキャンディ☆ロリぽっぷん!」とかぶりっこポーズで……あ、頭痛い。
そのくせ、終わってみたらなんかすごく感動的な話になってるしさww
あれだけカオスな展開に陥っておきながら、終わってみるとこれまでの懸案だった在紗がカルマに伝えられずに苦しんでいた自分の秘密。突然現れた在紗の母親、鷹崎冬香の正体や親権問題、この世界に横たわる様々な謎、特に最大の敵である空獣の真実、そしてこの物語が結末として目指すべき方向性の確立。駆真と在紗のいびつな関係の昇華。
これらが、終わってみると見事なくらいに綺麗に解決し、もしくは明確な形で提示されちゃってたんですよね。アレ? たしか直前まで「ラブリー・キャンディ・シュガシュガるーん♪」とかほざいてたよね?
それがいつの間にかクライマックスでは、産みの母たる冬香と育ての母たる駆真の母親同士の愛情と共感が激突し、駆真がこれまで蓄積してきたワケの分からない経験と立場と人脈がひとつの目的のために一気に収束するという熱い熱い展開に。
自分の持っているものすべてを突付け、冬香に訴えかけたときに駆真が発した一言、可愛い在紗を自分のもとから奪おうとする憎き敵としてしか見ておらず、きさまとしか呼んでいなかった冬香を、駆真がはじめて兄の妻として、在紗の母親として呼びかけるシーン。あれは、素直に感動させられました。
あの一連のシーンは、家族の愛情のぶつかり合いでもあったんですよね。冬香も駆真も娘を愛する母親の在り方として、どちらも決して間違ってはいない正しい意見同士のぶつかり合い。多分、それだけなら冬香は揺るがなかった気がするんですよね。あのシーン、冬香が揺らいだのは駆真が主張したのが育ての母としての訴えだけじゃなく、今は亡き冬香の夫、在紗の父親、駆真の兄であった男の想いを、冬香に置いていかれてしまった男の気持ちを、駆真が妹として代弁したからのような気がします。
しかし、こうなってくると駆真の兄の宗吾という男がどんなヤツだったのか気になるよなあ。
冬香が前の巻で登場したとき、やたらと明るくあっけらかんとした粗野で短絡的で大雑把な性格に見えたんだけど、そんな表層的な部分とは裏腹にその本当の性格は凄く繊細で臆病なくらい考え込むタイプ。その上自分の本当の気持を必死に隠して大切な人を心配させまいとする健気なところなど、娘の在紗そっくりなんですよね。
自分、在紗のあのマジメで健気な性格って父親譲りかと思ってたのに……。
まさか、兄も妹と同じアレなのか? 変態だったのか? そういえば、兄貴の親友の三谷原は、妙に駆真の奇行に慣れてたような……………w
いやね、もう今回、何だかんだと冬香が凄く母親していたので、対してあんまりにも変態過ぎる駆真のどうしようもなさを目の当たりにしていると、これ在紗、母親に引きとってもらった方がいいんじゃないだろうか、とこっそり冬香の方を応援してたんですよね(苦笑
在紗は駆真大好きなんだろうけど、この子は自分がどんな変態的な目で見られてるか気づいてないからなあww
でも、クライマックスでいつもの変態的な愛情ではなく、ちゃんとした肉親としての愛情を示してくれた事には、ホッとさせられました。いやあ、駆真もちゃんとまともな部分があったんだなあ、と(w
とはいえ、今後は冬香と在紗の二人も、しっかりと母娘としての関係を取り戻していって欲しいところです。まだまだぎこちなく、お互い繊細で人間関係に臆病なところがある二人なだけに、余計に徐々に距離感が近づいていく展開が引き立つと思うんですよね。

せっかく、タイムリミットが設定されたものの、ある程度目の前の問題は解決されて落ち着いたと思ったら、なんかまた、ラストで予想をあさっての方向に吹き飛ばす展開が待っていたわけで。
はたしていったいどう料理してくれるのか、まったく想像つかないだけに楽しみです、はい。


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