だから僕は、Hができない。  死神と人生保障 (富士見ファンタジア文庫)

【だから僕は、Hができない。 死神と人生保障】  橘パン/ 桂井よしあき  富士見ファンタジア文庫

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なんだ、この人もエロゲのシナリオライターの人だったのか。しかも、わりと実用畑の人ですか? 知っているのは『魔界天使ジブリール』シリーズくらいだけど。やったこと無いから詳しくは知らないが、いわゆる触手系という話だし。
いや、なるほどなあ、妙にエロさがこなれてると思ったんだ。普通の新人さんやあんまりエロコメ系を書き慣れてない人だとついつい出てしまいがちな、情景描写を書き込むことに傾倒してしまい、シチュエーションのわりにエロさが伝わってこない陥穽に全然ハマってなくて、それどころかリビドーを擽ってくる絶妙な微エロさがガンガン投入されてくるあたり、凄く分かっているような手応えがビシビシ伝わってきたもので。
うん、なによりさ。おぱーいに拘らず、まず裸Yシャツで下半身の方から攻めて来るなんて、こいつ何者だ!? と瞠目せざるを得ないじゃないですか!!
ライトノベルであんだけアンダーヘアを詳細に描写してしまったケース、他にあっただろうか。なによりこの主人公の戦慄すべきところは、アンダーヘアが見えた時点で満足せず、さらにその奥に挑もうとしたところである。この行動は、エロゲ出身でないとなかなか素では出てこんよ(笑

というわけで、【ハイスクールD×D】で味を占めたのか、富士見ファンタジア文庫もエロコメ路線を本格的に開拓するつもりになったようだ。すけべ心を力に変えて、戦う男の子のファンタジー、という意味では【ハイスクールD×D】とおんなじパターンだけど、今のところはあそこまではっちゃけてはいませんか。あっちはエロ的にもバトル的にもインフレが進んでるもんなあ。
この主人公の良介は、女の子好きだけど、女に縁がなく自分からひょいひょいと気軽に声をかけられるほど軽くもなく、女の子慣れしていない非モテのヘタレくん。
自分に自信が持てないタイプなのだろう。事なかれ主義でなるべくトラブルには巻き込まれたくなくて、基本的に腰が引けがち。
ただ、本当に大事なとき、肝心なときにはなけなしの勇気を振り絞って前に出て、自分が代わりに傷つくことを、恐れ……はしてて、むしろビビりまくってるんだけど、でもそれを我慢することが出来る男の子。
こういう子は一見するならみっともないしブサイクだし見栄えも悪いんだけれど、表面的な付き合いではなく、踏み込んでちゃんと相手の本当の顔と向き合えるくらいの付き合いになると、じんわりと効いてくるんですよね。
当初はなんだこいつ、という態度だったリサラが、良介の間抜けさに呆れながらも段々とほだされていく様子は、なかなかの見所だったりする。ガンッ、とハートを撃ち抜かれて惚れてしまうケースとはまた違う、じんわりと「あっ、こいつバカだしすけべでどうしようもないけど、なんか一緒にいて楽しいかも」という感じの、相手の欠点よりもイイ所が心地良く自分の心を擽ってくれるような、関係の進展というのも、趣があってなんかいいかもしれない。
こういう関係って、一気に燃え上がるような熱こそないものの、ジワジワと芯から暖かくなってくるような盛り上がりが期待できるんですよね。
リサラが、名家のお姫様ですぐに手が出るわがまま女王様系にも関わらず、根っこの部分が善良で世話好きで何気に気配り上手であって、下僕呼ばわりするわりに良介に随分気を遣って接している、言動に不快感を催さないイイ子というのも大きく作用しているように思う。
さらに、目立たないながら幼なじみのメガネっこが、中盤以降の遅い登場にも関わらず、さりげなくいい働きしてるんですよね。この子が、リサラの微妙な乙女心を的確に代弁してくれ、さらに自分の複雑な心境も、絶妙なブレンドで良介に示してくれたおかげで、後半のラブコメ展開が相手の三下さを補って上手く締まってくれましたし。
タイトルに偽りなしの、実に楽しいエロコメでした。期待してたより面白かったし、えちいかったですよ。……あれ? でも、やっぱり、タイトルには偽りアリかもしれないな、これ。リサラ、ラストやエピローグの様子見てると、マジで押しまくったらわりと簡単に陥落しそうだしww