神明解ろーどぐらす 2 (MF文庫 J ひ 3-8)

【神明解ろーどぐらす 2】  比嘉智康/すばち  MF文庫J

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たっのしいな、これ無茶苦茶楽しい楽しい楽しい、楽しいよっ!! うわああ、もう無茶苦茶楽しい!! この子たち、本当に楽しそうで楽しそうで、読んでるこっちまで心が弾んでくるんです。学校帰りの寄り道を全力全開で楽しむ十勝たち。そうか、これがリア充か、本物のリア充ってやつかっ!! これまでリア充って概念は理解していても、別に羨ましいと思ったことはなかったのですが、この子たちの毎日の充実っぷりには本気で羨ましくなってしまいました。この子たちってさ、そりゃあちょっと変わったところはあるけれど、変わっているところに意味がないんですよ。それは彼女たちの個性でしかなく、この子たちの中では特に何の問題でも懸案でもないのです。この子たちは純粋に、全くもって純粋に、下校を楽しむことに一心不乱なのです。お互いの変なところに頭を悩ましたり、溜息をついたり、迷惑を被ってげんなりするということが一切ない。それぞれが抱える欠点を気にしたり論って治そうとしたりということも別にしない。お互いの変なところはその人の個性として気にもせず、積極的に受け入れて、本当に、ただただ毎日を全力で楽しむだけ。
だから、掛け値なしにただただひたすらに楽しそうなんです。
夏休みまでの目標を考えてみたり、学校の帰り道で楽しめるオススメの買い食いフードを食べ歩いてみたり、こそこそと先に帰ろうとする下校仲間を尾行してみたり、放送部のまりもに依頼してきたデートコースの相談に、放課後デートコースプランをみんなで検証してみたり。
この手のコメディにありがちな、常識はずれな奇行も現実にはあり得ない突拍子のない出来事もなく、屈託なくみんなでワイワイガヤガヤと笑いあいながら、四人で遊びまわる姿は、眩しいくらい。

このシリーズ、始まったときは下校ってなんだよー、と苦笑交じり思ったものですが、なるほどなあ、今となっては下校にこだわる十勝の気持ちもわからなくないです。この楽しさは部活とはまた別物。学校が終わってからの家に帰るまで、そんな道程にしか味わえない特別な、特別な楽しい一時。
こいつら、毎日毎日が楽しんだろうなあ……羨ましい。

とはいえ、そんな楽しいばかりの日常も、危うい一線の上に流れていることが段々と浮き彫りになっていくのです。池田十勝、千歳キララ、丹下まりも、富良野咲。この四人の関係というのはまったくフラットな友達関係であり、これまで屈託なく純粋に放課後遊びながら帰ることに夢中になれたのは、彼らの中に関係の偏りがなかったから、と言えました。
でも、段々と彼らの中に、関係の偏重、それぞれの中に特別な気持ちが芽生え始めたことで、何も考えずにただ楽しくやれてた仲に歪が生まれつつあるのです。
恋のはじまり。
本来ならとても素敵で幸せなはずの想いが、彼らの素敵な時間に影を落とそうとしている、というのは皮肉な話。
さきっぽは何を考えているかわからないけれど、千歳は最初からあった十勝への懐きが、深度を増していますし、まりもに至ってははっきりと自分の気持ちを自覚するに至っている。十勝は、下校バカなだけあって、ひたすらに下校をみんなで楽しく過ごすことに夢中になってて、今起こりつつある兆候についてまるで気がついていないけど、これは仕方ない向きもあるよなあ。十勝、特別なことはなにもしてないんだもん。
この恋物語の至高なところは、まさにこの特別なことはなにもしていない、という点にあるとおもう。特別なことは何もしてないけれど、十勝って普段の日常における何気ない行動、下校仲間であるまりもたちへの接し方の些細な一つ一つが、スマート、というのも変かな。嫌味がないんですよね。彼女らが自分の望んでやまなかった下校ライフに巻き込まれてくれた仲間、という意識がどこかにあるのか、ちょっとしたホストとしての意識がそこかしこに感じられるんですよね。彼女らのため、彼女らを楽しませるために努力を惜しまない、尽力してやまないところが。それを、献身などといった押し付けがましい態度ではなく、心底自分が楽しそうにやっている。
付き合ってる彼女たちからすれば、彼の態度は息苦しくなく重たくなく、それでいて一緒に居て楽しくて仕方ないんだから、好ましいのは大前提。そこに、さらにちょっとした気配りや、嬉しい一言があったりすると、思わずドキっとしてしまうのも無理からぬこと。
うわっ、こいつめちゃくちゃカッコイイ! これは惚れるわ、と思う主人公はけっこういるんですが、こういう日常の何気ない姿が自然と格好イイと思うような男の子は、初めてだなあ。
一方で女の子たちの方もイイ娘たちばっかりなんだ。基本的に三人とも、他の人の事をめっちゃ大切にしてるんですよね。全力全開に後ろ向きな千歳も、強引でナルシストで自信過剰なまりもも、マイペースで自分の世界入っちゃってるさきっぽも、友達のこととなると途端に一生懸命になるし、普段から相手のことをよく気遣ってる。あの普段からへらへらとマイペースなさきっぽが、千歳のことで血相変えて十勝に食ってかかったのには驚いたし、千歳が距離感がわからなくなると言いながら、友達関係に怯えての後ろ向きな考えじゃなく、みんなが楽しめることを一生懸命考えてる姿は思わず相好が緩んでしまう。そしてなによりまりも。所見はあれだけ我が儘で自己中に見えた彼女だけど、この娘ほど周りを慮り繊細なほど気を配ってる子はいないんですよね。後ろ向きな千歳を絶対バカにしたりしないし、マイペースなさきっぽのノリにも律儀に応えて、目標は高く持って努力を惜しまない。人の気持ちや優しさにも敏感で、十勝の何気ない気配りを察して、千歳とさきっぽを巻き込んでお返しした場面なんか、感動すら覚えました。
こういう子だからこそ、これまで下心満載の男連中のお誘いに靡かず、逆に十勝の魅力というものにいち早く気づいたのかもしれません。自分の恋心に気づいたあとの、バスのシーンは楽しい時間の余韻を噛み締めるような、柔らかな静かさの中で、彼女の仕草の一つ一つが特別で、なんかもうとびっきりのシーンでした。あとから送られてきたメールなんか、シーンとしてはもう美しいと言っていいくらいに。

でも、そんな繊細で敏感な彼女だからこそ、細かいところが目についていってしまうのかもしれません。恋に目覚めた今だからこそ、十勝を今まで以上に見つめてしまうからこそ、自分以外との女の子と十勝の関係が、気になってきてしまう、平静でいられなくなる。
恋とは素晴らしいもののはずなのに、恋とは楽しいもののはずなのに。不安の影が見え隠れしはじめて……。

ああ、これはまた、見逃せない要素がワンダフルでありますよ。
一巻の段階で絶賛の嵐でございましたけど、二巻はさらにパワーアップした感ありあり。
これは間違いなく、傑作です。
全力でオススメ。

1巻感想