ケルベロス 2 (少年チャンピオン・コミックス)

【ケルベロス 2】 フクイタクミ 少年チャンピオンコミックス

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熱い! くうっ、なんという痛快で爽快な熱量だ。二巻でもこの火力、一切衰え知らずである。
なによりこの主人公が気持いい。そして主人公・景と異形の相棒である雪房の信頼関係が心地いい。
突然、墓守なんていう役割を負う事になってしまった、それまでは普通の学生に過ぎなかった景だけれど、この子は最初から、きちんと自分なりの戦う理由というものを確固と持ってるんですよね。元々、崩という化物を世に解き放ってしまったのは自分自身だから責任感もあるんだろうけど、自分が得た力に溺れず、浮かれず、その強さへの指向性にはブレが一切ないのだ。
とはいえ、その克己心が無力さに通じ、彼の戦う力の根源である守りたいという想いを裏切る事に繋がってしまった時は、落ち込み惑いうつむいてしまうのだが。
ここで、立ち止まってしまった主人公を、ちゃんと正しく蹴っ飛ばしくれる幼なじみがいるのは素晴らしいなあ。

例えば私がアンタのためにケガしたってんのなら、それは私がそう生きてるからってだけの話よ。
それを『自分のせいで』なんて言われたらおもしろくないわね。
そんなこと言う子は、キライだわ。

いい加減で足踏みやめないと、私がアンタのお尻、蹴っ飛ばすんだから
そんな叱咤激励を受けて、拗ねず捻ず、眼を逸らさず、シャキッと気合入れ直せるこの子は、ガツンとまっすぐ硬い芯が体の真ん中を通っているに違いない。
お前や墓守の力をやたらと使いたくねえ…。その意地を通そうとして……ダメだった。
それを悩んでた。
でも…蹴ッ飛ばされたぜ。
俺は人間らしく弱いなりに強くなる。
意地は常に目の先だ。後に残して歩かねぇ


元々喧嘩の腕っ節だってろくに強くもない、チビで短気で頭よりも体が先に動く(とはいえ、彼は彼なりによく考えているのだけれど)タイプのこの意地っ張りの少年を、より強く自分の力を御しきれる墓守を求めていた狗骸の雪房がどうしてそこまで信頼しているのか。その答えがその辺に浮き上がっているんじゃないでしょうか。
まだ出会って何週間も経っていない短い付き合いなんですけどね、このひとりと一匹、もう尋常じゃないくらい信頼を預け合っている。これが気持ちイイんだ。

私は奴を少しも心配する気にならぬのだ……。

昨日より今日。また少し、必死のコイツは私の期待を――
  わずかばかりに上回る。

この二人の関係は面白いなあ。この種の伝奇モノの代表作はうしおとトラだけれど、あの二人の関係と、景と雪房のそれはだいぶ違うんですよね。雪房は随分精神年齢が高くて、凶暴な獣の本性を持ってはいるけれど、それを完全に理性で制御していて落ち着き理知的な師匠的な立ち位置で、何も知らず直情的な景を導く役目を担っている。直情的とはいえ、景は景で自分が置かれた境遇や立場、現状などについていつも想い悩んでいて、短気で感情的なわりに思慮深いところがあるんですよね。故にこそ、よく悩み、悩みごとについて雪房によく話すんですよ。それを、雪房はいつもきちんと聞いてくれる。でも、安易に悩みを解消させるようなべったりとした甲斐甲斐しさは示さない。悩みはその人個人のものであって、横から賢しらに言い聞かせて誘導するようなもんじゃないと心得てるんですよね。その上で、景が悩みを解けるよう、納得出来るような手がかりや、方向性だけを示唆するのです。景の人格を尊重して、彼の主体性を絶対に奪おうとしないんですよね、雪房って。よっぽど景の事を信頼していないと、ここまで預けるなんて出来ないですよ。でも、事実現実として景は、雪房の信頼や期待にばっちりと応えているわけで、現状の無力さなど問題にならないくらい、雪房にとって今代の墓守は頼もしい人間なんだろうなあ、これ。

二巻に至っても順調に面白さは斜め上に上昇中。これは、期待のシリーズになりそうだ。

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