彼女(アイドル)はつっこまれるのが好き! (電撃文庫)

【彼女はつっこまれるのが好き!】 サイトーマサト/魚 電撃文庫

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 春の陽気に誘われてフラフラ街を歩いていたら、いきなり拉致されてしまった僕。えっ? なに? いやいやちょっとナニスルンデスカ!? ……ふと我に返ると、なぜかラジオの収録スタジオに。そして向かいに座っているのは、憧れていた人気アイドル声優の音無まどかさん! ええええええっ!!
 なし崩し的に、そのまま二人でラジオ収録に突入してしまうのだが……果たして、僕の運命やいかにっ!?
 ハイテンション・コメディ、開幕っ!

未だかつて無いムチャ振りだな、これ(笑
いきなり女の子が降ってきて世界を救ってくださいなんて頼まれるのもそれはそれで無茶だけど、いきなりラジオのパーソナリティをやってくれ、と言われるのもこれはこれで十分無茶である。その無茶をどうしてうけてしまったのかというと、どう見てもその場の空気に逆らえず、って感じなのが親近感を覚えるw これで音無さんのファンだからウハウハ♪ などという見境のないコアなオタクくんが主人公だったなら、そんなに面白くもなかったかもしれない。熱心なファンだけれど、幻想を幻想だと冷静に受け止められる子だったからこそ、素のまどかを目の当たりにしても、がっかり落ち込みはしたけれど、むしろそれで等身大の彼女をフラットに見ることが出来たんだろうね。
まあ、それほど彼女と付き合いが深くなるには、ラジオで一緒にパーソナリティするだけじゃ無理だったんだろうけど。
ラジオ収録の次の日に、隣の売家に当の音無まどかが引越してくるとか、どんなファンタジーだ(笑
この作品がいいな、と思ったのは、そんな強引すぎて笑えてくる舞台設定の固め方を除けば、概ねみんな普通の子で、普通に関係が進展していくところなんですよね。
音無まどかはホントは結構エグい性格をしているものの、素の不貞不貞しい一面と、営業用の愛想の良い一面に、実はあんまり乖離がないんですよね。当人も当然のように述懐してますけれど、どちらもしっかりと音無まどかの一面に過ぎず、作ったり演じたり仮面をつけたり、といったものじゃないんですよね。人間が持つ様々な一面というものを、ごく自然に自分のものとして備えている彼女は、いわゆる記号的な側面の少ないキャラクターで、なかなか気に入りました。
それに相対する主人公の村人Bこと常村良人も、極端なキャラ付けをされていない普通の小市民の男の子で、そうだよ、普通の高校生っていうのはこういう子を言うんですよ?(笑
そんな二人がだんだん仲良くなっていく過程も、ごくごく普通な感じで、それがいいんですよね。最初は、転校先に多少は気心が知れた顔見知りが居たから、なんとはなしに頼って場に馴染むとっかかりにしていたといったところだけれど、普通におしゃべりしたり家でも同じ時間を過ごしたりしていたら、よっぽど相性が悪くなければ普通に仲良くなるもんです。打ち解けてきたら、お互い率直にさらに踏み込んだ話も出来る。今は二人にはラジオという共通のお仕事の話もありますしね。
最初は人気声優と飛び入りの素人ファンとして始まる二人だけれど、その後は普通の友達として仲良くなり、そして最後は仕事のパートナーとして……。所詮素人でしか無い良人は、やはりプロであるまどかに助けられ、支えられるばかりなのですが、相方として認めてもらえた以上、期待に応えようと、なにより成り行きとはいえ受けた仕事は成功させたいという思いと、初めて経験する何かを創りだすという行為に魅せられたが故の意気込みによって、ラストの公開収録に挑んでいく姿は、なかなか爽快でありました。
肝心のラジオ番組での二人の掛け合いはどうだろう……まあ、普通に面白かったですよ?(笑
ただ、あのタコは別にいらんかったような…。もし続編がデルとしても、変な要素付け加えなくても、普通にラブコメとしてやってけると思うんだけどなあ。