影執事マルクの道行き (富士見ファンタジア文庫)

【影執事マルクの道行き】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

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恋敵の2人が仲良く家出!? 錯綜する想いを乗せ、豪華列車は進む

エルミナとカナメが家出した。慌てて後を追うマルクだが、なぜか料理人のセリアも同じ列車に乗り込んできて――。運命に導かれ、豪華な大陸横断列車に乗り合わせる契約者たちの目的は!? 疾走するロードムービー編!

もう私、ヴァレンシュタイン家使用人一同、みんなホントに大好きだわー。この人達素敵過ぎる。
確かにこの作品、マルクが主人公なのですが、何度かシリーズの感想でも触れてますけど、マルクを頂点としたピラミッド型の人間関係じゃなくて、誰もが誰かと繋がっている包括的な網目状の人間関係なんですよね。それどころか、一緒に生活し、一緒に仕事し、一緒に荒事を乗り越え、としているうちに、最初は縁のなかった人たちの間にも繋がりが生まれ、今やヴァレンシュタイン家使用人一同はひとつの家族、みたいになってるのです。
クライマックスでの、思わぬ組み合わせの二人のいつの間にか生まれていた温かい絆には、ちょっと泣きそうになってしまったくらい。今やもう、この人達はお互いの誰かが傷つけば、その人の為に怒り狂うことが出来、その人の為に泣くことが出来、その人のために自分が傷つくことも厭わない。もうみんなが大切な人になってるんですよね。
素敵じゃないですか、誰か一人だけじゃない、こんなにも一生懸命になれる相手がこんなにも居るなんて。自分の為に、あんなにも必死になってくれる人がこんなにたくさんいるなんて。
ヴァレンシュタイン家使用人一同の間にいつの間にか結ばれていた絆は、これほどまでに強力になっていたのです。いいなあ、もう、いいなあ。
恐るべきことは、これほどの絆によって結ばれたヴァレンシュタイン家の使用人が、一人ひとりが尋常でないほど凄まじい強さを誇る契約者って所なんですよね。並み居る同じ契約者の中でも、全員が異常なレベルだもんな。新大陸で名のある強力な契約者を上から十人並べろ、と言われると全員その中に入ってる、みたいなw
カナメやセリアは以前からその強さをよく見せてくれてましたけど、前巻のアーロンやオウマもとんでもなかったし、この巻なんかジェノバの凄まじさには度肝抜かれたもんなあ。<吸血姫>の名は伊達じゃない、ってか殆どデタラメじゃないですか。
ところが、毎回感心させられるんですが、この作品、みんなデタラメなくらい強いにも関わらず、一切能力のインフレバトルにはならないんですよね。能力の相性や、戦場となるフィールドとの適正などもあって、決して力押しのパワー勝負だけみたいな形にはならず、上手いこと自然にギリギリの駆け引きと見切りの勝負になっていくのです。能力を制限されることによるもどかしさやストレスも感じませんし、ストーリー全体のデザインから戦闘シーンまで、構成力がすごいですよ、このシリーズ。

前回、エルミナとカナメが二人連れ立って家出してしまい、この巻は二人の旅行記になるのかと思いきや、予想外にセリア姉さんがメインのお話に。
初々しい現在進行形であるマルク・エルミナ・カナメの三人の恋愛模様とはまた別に、セリアさんの今回のお話は悲しくも懐かしい、過去の淡い恋と復讐の物語。エルミナと契約した契約者たちにとって、ヴァレンシュタイン家が帰るべき家であり、同じ家で働く同僚たちはもう家族も同然だという事を強く印象づける話でした。そしてなにより、セリア姉さんの魅力爆発な回でしたよね。彼女のいろんな側面を見せてくれた今回の話でしたけど、やっぱりこの人はみんなの優しくも頼りになるお姉さんなんですよね。ヴァレンシュタイン家の女の子は何だかんだとみんなセリアのこと慕ってるもんなあ。
やっぱりというか確定されて嬉しかったのは、やはりセリアとアルバってイイ仲なんだ(笑
それでも、今回セリアの過去にまつわる人物が出てきて、これどうなるんだろう、とちょっとワクワクしてしまったのだけれど、決着の付け方が大人らしくてカッコよかった。さすがはセリア姉さん。
しかし、アーロンも普通にお父さんしてるのね。娘の好きな人の話になると、ちゃんと落ち込むんだ(笑

一方で、もうひとつの見所であるマルクとエルミナ・カナメとの三角関係はいい意味で泥沼化(笑
「覚醒」でエルミナ側がもはや挽回不可能と思われるほど決定的なアドバンテージをとったと思われたところで、「秘密」にてまさかのカナメの大逆襲。
ここで二人の間でグラグラに揺れてしまうマルクは優柔不断の誹りを受けても仕方ないんですが、でも仕方ないよこれは(苦笑
なあなあで済まさず、きっちり答えをだそうとしている所は誠実で好感度高いんですよ、マルクくん。ただ、二人が魅力的すぎるのでもう選ぶに選べないというのは同情してしまいます。マルクって、本気でエルミナもカナメも好きになっちゃってるんですよね。完璧に惚れちゃってる。これで選べと言われたら、そりゃもう頭抱えますよ。どっちを選んでも苦しいですし。
とはいえ、もう二人共一度はマルクにカードを切っているので、一旦ここでマルクは脇において恋敵同士であるエルミナとカナメ二人きりで顔を付き合わせての本音の話し合い。これがもう、ねえ。二人共、ほんとにもう、仕方ない子たちだよ、まったく(苦笑
よく思い出してみると、エルミナもカナメも同世代の同性の対等の友達ってお互いが初めてになるんですよね。アイシャはちょっと対等の友達というと違うし。
でも、こんなに仲良くなってるとは思わなかったよ。いや、ホントに仲良くなったのは、自分が相手を好きなように、相手も自分のことを好いてくれているというのがわかったのは、この列車の中で本音で話し合ったからなんだろうけど……うーむ。アイシャはどっちかハッキリしろと言ってますけど、二人のやりとり見てるとこれ、マルクは二人共引き受けないと収まらないんじゃないだろうか(苦笑
何気に他の使用人たちがエルミナ応援派とカナメ応援派に分かれつつあるのが面白い(w

と、列車内でのセリアの因縁の相手とのバトルとはまた別に、同時進行でエルミナの<アルス・マグナ>がどうやらえらいことになっている模様。マルク、こりゃあ色々と正念場だw

シリーズ感想