フルメタル・パニック!11  ずっと、スタンド・バイ・ミー(上) (富士見ファンタジア文庫)

【フルメタル・パニック! 11.ずっと、スタンド・バイ・ミー(上)】 賀東招二/四季童子 富士見ファンタジア文庫

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登場人物の誰しもが吹っ切ることの出来ない鬱々としたものを抱えながら、目の前の為すべきことに縋りつくようにしがみつき、戦いは最終局面へとなだれ込んでいく。
最終回も間際だというのに、誰も彼もが陰鬱に篭ってしまっているので、えらくスッキリとしない展開にハマってしまっているなあ。このシリーズ、なんだかんだとここぞという局面ではスパァッと快刀乱麻を断つように暗い雰囲気を絶ち切って、痛快な結末を迎えていただけに、最後の最後に来てこの雰囲気はけっこう辛い。かと言って、次の最終巻でこそそれを期待できるか、というとちょっと無理っぽいんですよね。もうこの作品、大団円のハッピーエンドで終えられる最終ラインを踏み越えてしまっていますから。
その象徴が冒頭の、もうかなめたちが帰る場所のない陣代高校であり、サー・マロリーとロード・マロリーの親子の救いようのない結末である。陣代高校の方は、なんとか終わり方として形を整えることは出来るかもしれないけれど、かなめと宗介が再び友人たちと高校生活を送る事はもう絶対に無く、自身の意思ではないとしても一線を越えてしまったかなめは、良心の呵責からも責任感からも臆病さからも、もう元の生活に戻ることは出来ないでしょう。作中で宗介も述懐していますが、彼女のこれからの生き方というのはひどく厳しいものになっていくはずです。
かなめはすこぶる強靭な意志力と行動力の持ち主ですが、かなり脆いところもあり、彼女の精神的なケアを果たして宗介がつとめることが出来るかどうか。十年は大丈夫かもしれません、でも二十年三十年というスパンで見たら?
テスタロッサ家の両親の仲などを鑑みるに、あの家に限らずこの作品に出てくる登場人物の様々な家庭の事情を見ると、けっこう人間関係に対してシビアな書き方をしてるんですよね。まして、かなめって等身大に「嫌な女」な部分が結構色濃くあるので、なんか生々しい人生辿りそうなんですよね(苦笑

なんにせよ、あまりにも人が多く死にすぎ、修復できないまでに壊れてしまったものがたくさん生じすぎている。果たして、彼らの死や破壊が望むべき未来に繋げるための死かというと、それもモヤモヤとしてはっきりとしない。宗介がこの期に及んで悩んでいるのも、現状があまりにも救いがなさすぎるせいもあるのでしょう。
なんか、あの人に生存フラグがおもいっきり立ちましたけど、それも素直に喜べないんですよね。いや、あの人が生きてたのは素直に嬉しいんですよ。それにケチをつけたいんじゃなくて、彼が生きていたということは、メタな視点でいうと彼以外の死んでしまった人は戻ってこない、壊れてしまったものはなおらない、って事を示唆してると思うんですよね。
リセットは無い、ってことなんでしょう。その上での、最低限の救いがこれなんではないかと。喜べるけど、喜べないよ(汗
ましてや世界情勢は滑落の一途を辿っていて、時間災害における揺り返しが一気にきているかのような悪化っぷり。
個々人の決着のつけ方にしても、世界の行く末にしても、どう決着させるのか、そもそも着地できるのか、最終巻の一歩前まで来たにも関わらず、まったく見通しが立たないのは不安です。
宗介は、どういう結末になっても銃は置けなさそうだなあ。テッサは、なんかこのまま行くと某大尉(カピターン)みたいになりそうで怖いよ!! その前に生き残れれば、だけれど。
全滅エンドとかだったら伝説になりそうだ。それすらも、無いと言い切れ無いのがまた怖いよ!

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