星図詠のリーナ〈3〉 (一迅社文庫)

【星図詠のリーナ 3】 川口士/南野彼方 一迅社文庫

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前回の感想で、パルヴィ姉さまはリーナのこと認めているし期待しているけれど、感情としては自分で口にしているようにリーナのことは嫌いなんだろう、なんて言ってましたけど……いやこれ、やっぱりパルヴィ姉さま、リーナのこと好きだろう!(笑
前回でだいぶ印象変わったけれど、パルヴィのことはまだまだ誤解していたのかもしれない。というか、今回はもうパルヴィ姉さま回と言っても過言ではなかったような気すらする。何気にこれ、最終巻なのに(笑
こうして見ると、このシリーズ、表の主人公はもちろんリーナでありダールなのですが、密かに裏でもう一人主人公してたのがパルヴィなんですよね。リーナたちが関わっていった事件、それを解決していったのはリーナたちですが、同じ事件にパルヴィもリーナたちとは別の側面から関わり、結果的にパルヴィの支援があったからこそ、リーナたちが難局を乗り越える事が出来た、という一面があるわけです。パルヴィはそれに対して、自分がやるべきことをやっただけだ、というそっけない態度しか見せてくれなかったわけですけど、今回の話を見てるとこれまでの事件もどうもパルヴィの行動原理の要の所らへんに、リーナを助けてやりたかった、というえらく私的な理由が混じってるような気がしてきました。
それくらい、パルヴィってリーナのこと気にしてたんですよね。自分、これまではもうちょっとパルヴィはクールに、リーナには王族らしくはないけれど類まれなる才能と感性を持ち、それを王家のために役立てたいという思いがあるから、目をかけ期待しているのだと思っていたのですが……パルヴィの回想で出てきたリーナとの初めての出会いで起こった原体験。それは思いのほか強く、パルヴィの心に根をおろしてたんでしょうね。
リーナを猫可愛がりする兄や姉たちとはやり方、接し方が違うとはいえ、パルヴィも単純にリーナのことを妹として愛して、可愛がってたって事なんでしょうね。それも、ある意味自分の愚かな母親よりも多分に。

そんなこんなで、リーナは初めてパルヴィとともに旅をすることに。しかし、これまでの少人数での自由気ままな旅路と違って、パルヴィとのそれは気を遣ってばかりの窮屈で疲れる旅路で……あ、あははは、リーナって本気でパルヴィのこと苦手だったんだな。ちょっとは打ち解けたかと思ってたのに、パルヴィの厳格さはリーナに甘えや気の緩みを許してくれず、常にピンと背筋を伸ばし、緊張感も解けないまま寡黙な姉とひたすら馬車の中で向き合うだけの長い時間、これは辛い(苦笑
よくよく見てると、パルヴィはパルヴィなりに彼女の王族としての価値観に基づき、あるいはリーナに妥協して、妹に対して非常に気遣っている事がわかるのだけれど、全然伝わってないし(苦笑
なんともまあ、かみ合わない姉妹だなあ。逆に、これほど気が合わないにも関わらず、この二人が何だかんだと憎み合いもせず、仲は良いとは言えないものの、お互いがお互いなりに気遣い相い認め合いながら、同じ任務について助けあうようになるなんて、人間関係というのも不思議なものである。特にパルヴィなんか、リーナが原因で実の母が国家反逆罪で捕縛される、なんて境遇を経ているのだし。まあ、告発したのはパルヴィなんだが。

そのパルヴィ、庶民の生活によく親しみ、自由奔放に育てられたリーナと違って、彼女は気位の高い母親のもとで育ったせいか、生粋の王族であり元からの性格なのか非常に厳格で自分にも他者にも厳しく、怠惰を許さない、と同時に知識優先のちょっと世間知らずな所もあるお姫様なのですが、後付の余計な物を取っ払うと何だかんだとリーナと良く似た所があるんですよね。ダールとのやりとりなんかを見てると、高飛車で人を人とも思わないような下々の者との接し方も、教えられた固定概念に従っているだけだったんじゃないのかな、と思えてくる。王族を王族とも思わないダールの態度に当初は怒っていたものの、慣れて感情が落ち着いてきて冷静になって自分のこれまでの在り方に対して振り返る余裕が出てくると、ダールに対して無礼だから、という理由ではあんまり怒らなくなるんですよね。でもまあ、やっぱり怒るんですけど(苦笑
なんにせよ、リーナとは違う頭の良さと行動力があるので、ちっちゃい姉さまは頼もしいですよっと。今回も、始終状況の牽引役としてみんなを引っ張ってましたしね。
リーナも緊急事態で切羽詰まると怖い姉に対して縮こまってもいられないから、てきぱきと行動しだすんですが、リーナがパルヴィへの苦手意識を克服し、パルヴィももう少し接し方を柔らかくすれば、この二人はお互い足りないところを補い合えるいいコンビになると思うんですけどね。
実際、パルヴィは幼い頃のトラウマとまでは言わないけど、リーナへの負い目を今回の事件で解消し、リーナもパルヴィの事をやっぱり怖いけど、でも尊敬するだけじゃなく身近な姉妹として思えるようになったようなので、これからこの二人は国内外で一目置かれるコンビになれるんじゃないかな。
と、二人で組んでさらに色々とできそうだっただけに、この三巻で幕を下ろすというのはやっぱり惜しいよなあ。ダールの竜の問題も、結局解決できなかったし。
ただ、傭兵とお姫様の道ならぬ淡い恋の物語は、ちゃんとお互いに想いを伝え合い、ひとつの方向性を指し示したことで、ある程度いい具合に収まったんじゃないだろうか。
幸い、リーナは第五王女で、母親は市井の人(実は特殊な一族だったみたいだけど)なので、王族の中では重要な立場じゃないんですよね。ダールも身分違いだから諦めるのではなく、リーナを堂々と引き受けられるだけの何かを手に入れようとまで考えてるみたいだし。それが叶うか叶わないかはまた別の物語になってしまうのだろうけれど、ひとまずの区切りとしてはいい終わり方だったんじゃないでしょうか。サラの想いがけっこう意外でしたけどね。いやでも、ある意味リーナよりもサラの方がダールとはよく一緒にいたわけですし、別に意外でもなんでもないか。


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