おれと一乃のゲーム同好会活動日誌その1 ごく個人的な世界の終わり

【おれと一乃のゲーム同好会活動日誌その1 ごく個人的な世界の終わり】 葉村哲/ほんたにかなえ MF文庫J

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おれ、この人には一生付いていくべきだと思うんだ♪
いかん。葉村さんの描くヒロインが毎度毎度ツボすぎる。

「(中略)。それに、ソージみたいなタイプは、怖いから」
「怖い?」
「誰にでも平等に優しい人の『特別』には、誰もなれないから」
「……そうね」
「あ、でも確実にソージを好きになっちゃうタイプもいるよ」
「どんなタイプかしら?」
「地雷女」
「ちょっと優しくされただけで舞い上がって運命とか感じちゃって、距離感無視して踏み込むんだけど、アピールの仕方が素直じゃないから気づいてもらえなくて空回りした挙句、ほとんど八つ当たりで迷惑かけちゃうの。でも相手は優しいから許してくれて、ますます舞い上がって以下エンドレス――って感じかなっ!」
「素晴らしい分析だわ。でも何故かしら、少し胸が痛いわ」
「うん、実はわたしも言ってて胸が痛かったよ」

viva、地雷女♪

前作が、滅びゆく運命のもと、永遠に似た刹那の中で恋に殉じる少女たちの儚くも美しい恋愛模様を描いたラブストーリーだとしたら、本作はそのラブの部分を徹底的に抽出した上で、異能という外装をまとわせた上で、その外装をまったく活用するシチュエーションが皆無な最近はやりの駄弁り派日常系のジャンルに放り込んだ、ごった煮作品である!
ジャンルは日常系ラブコメ異能バトル!
ジャンルが隆盛となりだすと、そこからいろんな派生系が生まれてくるものだけど、ついに異能者さんたちによる益体もない駄弁り日常系まで出てくるとは、そのうち異世界ファンタジー日常系とかスペオペ日常系とかも出てきそうだな。
あとがきの葉村先生がまるっきり「はがない」の小鳩さんとか「俺妹」の黒猫さんなのは置いておいて、とりあえず担当さんの柔軟性はグッドジョブ(笑
次は日常系コメディにしましょう→えーっ、ムリっす。武器も異能も二つ名もない世界を書けなんて→じゃあ、武器も異能も二つ名も出てくる日常系にしましょう。
何故そうなる(爆笑
いやでも、これは慧眼ですよ。前作でも、あの独特で幻想的な雰囲気とは別に、日常パートのラブコメ部分はこれだけ独立させても十分いけるだろう、ってくらいに良く出来てましたし、あの悶絶しそうな甘甘な雰囲気を一冊丸ごと堪能させてやろうという目論見は、大いにアリと言わざるを得ない。
実際、本作は非常にラブコメ色が強いんですよね。メインヒロインとなる一乃とキリカは、もう既に主人公の宗司にベタ惚れ、という段階ですし。もっとも、二人共いささか性格に難があるので、好意のあらわし方が=宗司を言葉責めにしたり逆セクハラで慌てさせたりという、とにかく弄らずには居られないという有り様なのでアレなのですが、上の本文引用でも彼女たち自身が述懐しているように、宗司くんは非常に懐の広い男の子なので、弄られてもツッコミスキルで鮮やかにあしらいつつ、丁寧に根気よく二人の相手をしてくれるんですよね。だいたい、一乃の弄り方もキツいものではなくて、その言動の端々に隠しきれない好意がはみ出しまくってるんですよね。宗司は気づいてくれないにしても、一乃のムチャ振りを邪険にせずいちいち付き合ってるし、お陰で、傍目には多少ズレているとはいえ、ずっとイチャイチャらぶってるようにしか見えん!(笑

この作品が自分にとって新鮮だったのは、このラブラブ全開の部分なんですよね。最近流行りの日常系コメディって、ラブコメ要素はあるにしても、普段のダラダラした日常を壊さない程度にしか小出ししてくれないわけです。もっとも、将来的に爆弾となって炸裂しそうな伏線は様々な作品で随所に仕込まれていますけど。でも、あくまでメインはだらだらと続く何気のない日常の方。たとえば「はがない」では友達が出来た時の予行演習、「神明解」は帰宅、「生徒会の一存」は生徒会室での駄弁り、といった風に。
ところが、この……ええっと、略称はなんなんだ? 一乃さん? おれいち? ともかく、本作はというと、何も起こらない代わり映えのしない日常がメインなのは一緒なのですが、一乃とキリカにとってその日常というのは、宗司とイチャイチャする&恋敵を潰すッ、というものなので、必然的にこの「おれいち」ではラブコメ! が、メインとなってくるわけです。
短編が幾つも挟まれる日常系コメディというジャンルでラブコメをやられてしまうと、一巻で十本以上の様々なラブコメイベントを一気に堪能できるという、これかなり至福でありますよ?
しかも、葉村さんのラブコメは、私の波長に合うのか、毎度毎度、芯がぐにゃぐにゃになるほど悶えさせられるシロモノで、もう甘いのなんの。砂を吐きそう(笑

異能という要素は、なんだろうこれ。登場人物たちの不安の根本であり、また絆でもある、といった所か。ふとしたことで、ここで描かれている日常風景があっさりと吹き飛んでしまう原因となりそうなものでもあり、作品全体にある種の儚い雰囲気を漂わせている要素でもある。もっとも、前作の否定公式のあの滅びの雰囲気に比べたら、あくまで予感にもならない匂い程度のものだけれど、あくまでエッセンスって感じか。
あと、犬五号とペンギン(笑
犬はもとより、ペンギンは反則だ。階段降りてくるシーンなんか、かわいすぎるんですけど!

あー、やっぱりこの人の書くラブストーリー、波長が合うわー。胸がキュッとなるような嬉し恥ずかしな話を読みたい時はこの人の作品を読むに限る♪
新キャラは程々に、一乃とキリカをあくまでメインに掘り下げて、とことんラブコメで長々とやって欲しいなあ。甘甘、堪能させていただきました。