101番目(ハンドレッドワン)の百物語 (MF文庫J)

【101番目(ハンドレッドワン)の百物語】 サイトウケンジ/涼香 MF文庫J

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この人もエロゲのシナリオライターなのか! 【あかね色に染まる坂】や【祝福のカンパネラ】はプレイはしてないけど、タイトルくらいは知ってるよ。アニメもやってましたしね。カンパネラは今やってるのか。
最近ほんと多いですよね、シナリオライターの人に書かせるパターン。ただ、多くなるのもわかるんですよ。出版側や筆者の事情は置いておいて、読者視点から述べると非常にハズレが少ないというのがあげられる。【ゼロの使い魔】ほどの大当たりはさすがに滅多とないけれど、どの人もさすがはゲーム一本シナリオ完成させている実績があるせいか、みんな水準以上なんですよね。どれも安定感があって面白い。
というわけで、この新シリーズも順当に当たり。面白かった。
一文字疾風、通称モンジは元気な普通の高校生。親友のキリカと他愛のない会話をしたり、憧れの先輩と一緒に帰ったりと、平和な日々を過ごす――はずだった。だが、ある日出会った謎の少女から、突然Dフォンというケータイを手渡される。それは、“実際にある”都市伝説を集めたサイト、『8番目のセカイ』に繋がるものだった。彼はそこで「百物語の主人公」に選ばれてしまったらしい! そんな彼の前に現れた転入生、一之江瑞江は囁く――「どうして、電話に出なかったのですか?」サイトウケンジ×涼香という最強コンビが贈る、ノンストップ学園アクションラブコメ開幕!
ヒロインが面白かわいく、主人公が気に入ったらこの手のラブコメはまずその時点で勝ったも同然だよなあ。
うん、何よりもまず主人公だよ。これがろくでもないと、その時点で躓いてしまいますからね。その点、この主人公であるモンジくんはよかった。この子みたいに、女の子に物怖じせずに自分からどんどんアプローチかけていくタイプって、案外珍しいんじゃないだろうか。この手のキャラクターって、だいたい主人公の親友ボジションで、いい加減にあしらわれて実はイイ人なんだけどだからナニ? みたいな可哀想な扱いをされていつの間にかフェイドアウト、みたいな(笑
ただ、このモンジくんの軽薄さは、その軽薄という文字とは裏腹に軽くも薄くもないんですよね。矛盾しているけれど「断固とした」軽薄さ、とも言うべき如何なる場合においても揺るがない太い芯が真ん中に通っているのです。彼のその軽い姿勢は彼の譲れないポリシーであり、信念であり、生き様なわけだ。故にこそ、そのブレない断固とした軽薄さは、ある種のシチュエーションでは迫力すら伴なう強力な侵蝕力となって、場の空気を自分の支配色に鮮やかに塗り替えていく。
ぶっちゃけ、この話に出てくるヒロインたちは、全員極悪である。悩まないし苦しまないし迷い躊躇いはしても、それは他者を慮ってのものではなく、あくまで自分の都合や感情を優先するが故にこそ、である。彼女らはあっけらかんと罪悪感の一つもなく、自分の好きなように生きていく。こういう娘たちには、ハッキリ言って言葉や倫理や善悪の概念は通じないし、損得すらも通じるか怪しい。
そんな彼女らに、モンジくんがとった手段は、言わば彼女たちを自分の色に染めてしまうこと。押し付けるのは正しい言葉でも功利でも善悪でもなく、一文字疾風という男一匹の野放図な好意と魅力だけ。うん、清々しいほど潔い。ある意味、全部相手に丸投げだもんな。彼女たちが好き勝手振舞うのはこれ以降も変わりないわけだし。ただ、モンジくんの好意を受け取ってしまった彼女らは、否応なく今後はその好き勝手の基準点に自分だけでなく、モンジくんを据えなきゃいけなくなったわけで、なんだよこれ、今後は自由気ままにキャッキャウフフのハーレムですか!

というわけで、主人公もアレだけれど、ヒロインも相当イイ性格をしている。瑞江もキリカも、乙女とは程遠い肉食獣だ(苦笑
瑞江は無表情クール系と見せかけて、毒舌家でノリがいいし、キリカはキリカで天真爛漫の意味をちょっと履き違えているみたいな処のあるルンルンデストロイヤーだし、並の強度の男の子だと心が持たないタイプだよなあ。これらと実に楽しげに渡り合いはしゃぎまくるモンジくんは……なんだ、その…元気だな(苦笑

何気に都市伝説をベースとしたオカルト伝奇モノとしても秀逸で、モンジくんがメリーさんに呪われて、徐々に追い詰められていくシーンなどホラーとしての迫力満点で、けっこうビビりました(w
これもわりとガチでハーレムを形成していく話だよな。というか、表向きには百物語をクリアする話だけど、結果的にはハーレムを作りますよー、という話じゃねえか。いいぞ、もっとやれw
ただ、あんまり女の子を増やしすぎると一人ひとりが薄くなっちゃうんでねえ、その辺は限定された方がいいかなあ。ぶっちゃけ、今の瑞江とキリカと志穂さんだけでも満足である。