プリンセスハーツ〜今宵はせめて夫婦らしくの巻〜 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ〜今宵はせめて夫婦らしくの巻〜】 高殿円/明咲トウル

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ああ、ついに……。長らく、契約上の仮面夫婦という建前に縛られて、自分の気持に気づくことすら出来なかったジルとルシードの二人が、ついについに、恋を自覚し想いを繋げることに。
いやあ、ぶっちゃけもしかしたら二人の気持ちが通じ合うなんて無理なんじゃないかと思う時期もありました。なにしろジルがなあ(苦笑
この女の恋愛スキルの酷さは凄まじいとすら言えるレベルでしたから。いい雰囲気に盛り上がっても、平然と踏み出す一歩を間違えた挙句に踏みつぶして蹴っ飛ばして台無しにしちゃってたもんなあ。
実際、もう大丈夫だろうと思われた今回だって、盛大にやらかしてくれたわけですし。なんだよ「山盛り!」って。幸い、もう何度も痛い目を見ていたルシードが、ジルの恋愛関係にまつわる内心の気持ちを言語化する機能が致命的に破綻していることを実感して理解していたお陰で、最大のピンチも乗り越えられたわけですが。ルシードえらい、ここまで彼が男前に見えたことはなかったよ! もう随分と前から普通にかっこいい、女も男も惚れるような男っぷりを見せてくれた上に、献身的とすら言えるジルへの態度もあって、男前としては上等以上に上等だったんですが、なにしろ相手があのジルだったからなあ(苦笑
とはいえ、こいつはこいつで偏屈者で多少ヘタレの入ったひねくれ者の僻み屋なところがあるから、ルシードもジルへの想いがなんなのかを自覚するのを拒否していたところがあったのですが、うん、リドリスが今回いい仕事してたなあ。彼に関しては腹に一物あるんじゃないか、とずっと疑ってたわけですけれど、ルシードとジルの間を裂くどころか取り持とうとしている姿を見ている限りは、ルシードに変な執着を持っているわけでもなく、本当に信頼できる弟としての立場を続けるつもりなのかと思いたくなってくる。でも、彼のその態度の根拠がまだわからないので、信用しきれないんだよなあ。

さて、二人の想いが通じたのはいいけれど、それは同時に二人が目指すパルメニアの打倒という目的を叶えるためには許されない関係であるんですよね。
パルメニアと対決するということは、偽のメリルローズであるジルはどういう形にしてもルシードの前から立ち去らなければならない。
念願叶う状況がようやく見えてきたときに、いつの間にか自分にとって一番大切になっていた者を引換にしなければならなくなっていたなんて、大した皮肉じゃないですか。
特にルシードにとっては複雑でしょう。パルメニアを乗っ取ろうとするのは、愛するメリルローズを手に入れるためだったのに、今や彼女よりもジルの方を愛するようになってしまっていた自分に気づいてしまった。それでも、アジェンセン大公として、彼の国のため、彼についてくる国民のために、彼はもう止まれない。大公としての責務を放り出せるような、彼は無責任な王ではないがために。
果たして、彼はどうやってこの難局を乗り越えるのか。さすがに、彼が最後にジルに誓ったよなことは、幾ら何でも難しすぎるように思えるのだけれど。それでも、言われたジルとしては死ぬほど嬉しかっただろうなあ、あれは。
そんなジルは、今回もうエンドレスで可愛かった。もう、恋する少女そのものみたいで。あのジルが、ですよ?
出来れば、想いは遂げさしてあげたかったけれど、せめてあと小一時間は待てなかったものかしら。

しかし、いつの間にかジルの正体を知る人が増えてきたものだ。以前はマシアスを含めた三人だけの秘密だったのに。でも、ここであの四騎士団長にそれを打ち明けるとはなあ。ルシードも思い切ったもんだ。彼の人間不信の深さを思えば、それがどれだけ勇気のいることだったかが想像出来るだけに。大きな男に、なってきてるじゃないか。
一方でオース王子の方も、今更ケイカに執着を示しだして……。こいつ、自分がケイカに対して抱いている感情について一切言及していないんだけれど、意図的に目を逸らしてるのかな。傍から見てると、どう見ても惚れているようにしか見えないんだけれど。
もしかいたら本当に、サラミスが言うように二人の間に新しい恋が始まる可能性もあるのかしらねえ。

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