ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編

【ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 1.接触編】 柳内たくみ アルファポリス

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20XX年――
白昼の東京銀座に突如「異世界への門」が現れた。

「門」からなだれ込んできた「異世界」の軍勢と怪異達によって、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した銀座。
この非常事態に、日本陸自はただちに門の向こう側『特地』へと偵察に乗り出す。

第3偵察隊の指揮を任されたオタク自衛官の伊丹耀司二等陸尉は、異世界帝国軍の攻勢を交わしながら、地形や政体の視察に尽力する。
しかしあるとき、巨大な炎龍に襲われる村人たちを助けたことで、エルフや魔導師、亜神ら異世界の美少女達と奇妙な交流を持つことになる。

その一方、「門」外では『特地』の潤沢な資源に目を付けた米・中・露諸外国が、野心剥き出しに日本への外交圧力を開始する。

複雑に交錯する「門」内外の思惑――
二つの世界を繋げる「門」を舞台に、かつてないスケールの超エンタメファンタジーが、今、幕を開ける!

連休中にゆっくりと読み耽るつもりが、購入した当日についつい睡眠時間をガリゴリ削って読みきってしまった。人間、本質的に反省などしない生き物なのである、と何度改めて認識させられるのか。
いいもんいいもん、面白かったんだし。
そもそもね、前々から面白そう面白そうと思いながらも、単行本サイズに無闇にばか厚いデカさに加えて、1780円という値段のハードルに長らく購入をためらっておきながら、ついに我慢しきれなくなって買ってきてしまったものを、これまた連休まで読むのを待つ、という事自体最初から無理だったんだよ! 手元にあるのに、読まないなんて考えられない!!
自衛隊が異世界だの過去の世界だのにイッてしまう、というシチュエーションは、たとえば戦国自衛隊なんかが一番有名か。でも、あれは一部隊が単独で戦国時代にタイムスリップしてしまうというもの。部隊は孤立し、補給も後援も命令も得られないという状態で、戦闘集団であってもリミット付きであり、軍隊とは言えない状態なんですよね。いや、映画でしか見たことないので、小説やら漫画でどうなってるかは知らないんですが。
ですが、コチラはゲートを通じて現代日本と自由に行き来ができる、というのは大きいんだよなあ。とはいえ、ゲートの大きさはある程度限定されたものであり、大量の物資を――大規模な軍勢を大挙侵攻させられるほどの物資を必要な時間内に必要なだけ送り込めるほどではない、という事実が、ゲートが日本の首都のまん真ん中の銀座にあるという地理的条件と合わさって、のちのち外交的にも影響していくんですけどね。
加えて、連絡がとれる状態にもかかわらず、特地に派遣した自衛隊にある程度のフリーハンドを与えている、というのが一番画期的で肝な部分なんじゃないだろうか。現実の自衛隊の扱いみたら、これが一番ありえないもんなあ(苦笑

なにはともあれ、色々と野党やら無能な官僚政治家海外が足を引っ張ろうとするものの、理解と能力のある政府内、あるいは各省内の人々のフォローもあり、概ね非現実的な制約をかせられず、実力を発揮できる環境を許された自衛隊。自衛隊ものにつきものの、全方位から足を引っ張られ、ありとあらゆる制約と非難に晒され、内部から自縄自縛と自爆を繰り返すという能力をまるで発揮できないストレスの溜まる状態が一切なく、もうこれだけで痛快なんですよね。
加えて、異世界の側にも現代科学の発露を妨げるような要因もなく、魔法やモンスターというファンタジー要素はあれど、基本的に中世型文明と現代文明では科学力、軍事力というだけでない文化、文明の規模での多大な差が出てくるわけで、その数百年、ひょっとしたら千年規模の文化レベルの衝突と衝撃こそが、この物語の妙味なのかもしれません。
そんな中で我らが主人公、伊丹耀司二等陸尉。三十路越えのバツイチを主人公に持ってきたのも凄いけど、この人のキャラクターがまたエライこっちゃなんだよなあ。もう、どうしようもないじゃないか、この人(苦笑
オタクではあるけれど、作る側ではなく完全に受領だけのオタク、という設定も、人生ほどほどにダラダラと楽しく過ごそう、というだらけきった姿勢に合わさって、生産性ありませんよこの人ー♪ と強調してるんだろうか。
これで経歴がアレだってんだから、そりゃ真面目な人達が発狂するわなあ。しかも、普段は昼行灯を気取っていて、本当の顔は……じゃなくて、根っからグータラのスーダラで、件の経歴の渦中にあるときも、このまんまで上の連中が頭をかかえるような態度のままメンコ得ちゃってるんだから、発狂するわなあ(爆笑
でも、確かに面白い。傍から見てて、一緒にいて、この人は面白い。尊敬も敬愛も慕われされないだろうけれど、信頼も信用もできて、嫌いニャなれない。親しみ好かれるタイプだわなあ。いや、勿論生理的に嫌う人もいるでしょうけど、生真面目で規律に煩く上昇志向のある人とか。でも、そういう嫌ってそうな人でも、本当に心底憎み嫌えるか、というと難しいんじゃないかな、と思うくらい憎めない人なんですよね。
責任感の強さと無責任さが上手いことブレンドされてて、責任感が強いゆえの決断力と、無責任ゆえの決断力を状況によって使い分けられるとか、面白すぎるよこの人。
あらゆる意味で、軍人らしくない、変な人だわ。完全に三枚目だし(笑
でも、こういう人だからこそ、歴としたミリタリーものらしい、組織がしっかりと動いているストーリーラインにも関わらず、異世界ファンタジーとしての、個がしっかりと存在感を打ち出す主人公を担えてるんだろう。現代軍隊もので、組織を蔑ろにせずに個を前面に出して振る舞えるって、案外難しいんじゃないだろうか。その辺、伊丹さんはひょいひょいっとクリアしてるんですよね、面白い人だなあ。みんな、伊丹だから仕方ない、みたいな態度だし(笑
いや、伊丹さんが突出しているだけで、他の自衛隊の連中も相当アレな人たちばっかりなんですけどね。ヘリ部隊にスピーカーのっけて、ワルキューレの騎行を大音量で流しながら戦場に突っ込むとか、趣味に走り過ぎ!(爆笑
ある意味ダメな連中の集まり過ぎるw これでみんな優秀なんだからタチが悪いw あんまり伊丹のこと悪し様に言えないんじゃないのか、この組織。

そんな伊丹さんの周りに、異世界の美少女が集まってくるのは、さすがというかなんというか。金髪のエルフ娘に、クールな魔法使い少女にゴスロリ少女神様と、見事なくらい定番なのが、もう素晴らしい……ハーレムものというわりには、みんな伊丹さんへの扱いがぞんざいなんですが(笑
彼を特別視して執着するのではなく、この人見てるの面白いなー、という感じでつきまとってるみたいな距離感は、なかなか心地良い。伊達に伊丹さんの方が30歳越えた大人でしかもバツイチじゃない、というのも大きいんでしょうけど。魔法使いのレレイやエルフのテュカなんかは、まだ子供だから娘みたいな関係ですしね。ロゥリィだけは、ちょっと感じ違うのですけど。見た目一番幼女にも関わらず、中身は一番大人だもんな、この人。

ゲートで異世界と行き来できる、ということは向こうから日本に来る事も可能、ということ。まあ、最初の最初、銀座に侵攻してきた事からもそれは明らかなんですけどね。
国会の証人喚問やらなんやらの政治問題などもあり、異世界側から伊丹が親しくしているこれら美少女(+α)を、現代日本に連れてくるという展開もあり、現代文明との凄まじいギャップに面食らう異世界の人々と、虐殺を繰り広げた軍勢ではなく、意思疎通の出来る相手として初めて見る異世界人の姿に狂騒する日本社会というエンタメ。さらに、彼女らにちょっかいをだそうとする外国諜報機関との熾烈な攻防などもあり、手に汗握る諜報戦なんかも見られて、手を変え品を変え展開が面白い。
値段高いし、場所取るし、となかなか難儀な本ですけれど、うん、この面白さなら我慢しますよ。