銀の河のガーディアン (富士見ファンタジア文庫)

【銀の河のガーディアン】  三浦良/久世 富士見ファンタジア文庫

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天才魔術師セーヤと努力型のラリエナ、知謀と魔力で帝国を救う!
魔術帝国・ガルドミル帝国の皇帝直属部隊に属する少女ラリエナは儚げな美貌の新人セーヤと組むことに。強大な魔力を持ち超マイペースなセーヤに頭を抱えるが星に星を呑み込ませる「星贄の儀」に乗じたテロが発生し!?

来たよこれ、来たよこれ、来たよこれ!!!
当たり、当たり、大当たり!!
帯の読者モニターのコメントに「こういうものを待っていたッ!!」という言葉が使われていたけれど、読み終えて出てきた言葉はまさにこれだ。
長らく、長らく見なかった、これはまさしく<本格スペースオペラ>だ!!
そりゃ、小粒なのや安っぽいのは幾らでもあったけどさ、これは明らかに毛色が違う、全然違う。匂いが違う、気配が違う。
無責任に大言壮語してしまうなら、これは【星界の紋章】シリーズの「次」に位置してもおかしくない、それだけの「資質」のある作品だ。
大袈裟と言われるかもしれないが、そう感じたのだ。これは本物だと。
扱いさえ間違えなければ、方向性を違わなければ、そのポテンシャルを如何なく発揮できたとしたら、この作品は長く空隙を得ていた本邦のスペースオペラの系譜に燦然とその名籍を刻めるだけのものになるに違いない。

いやあ、ここまでビリビリと大物の予感を感じさせてくれる作品と行き会ったのは久々だ。定型句じゃなく、本当に久々だ。うふふ、やべえやべえ、顔がニヤケるのが止まらない。
先に【星界の紋章】シリーズのタイトルをあげたけれど、作品に漂う気配がすごく似てたんですよ。勿論、設定や世界観、キャラクターの性格や文章のリズムや描き方など、まったく全然違います。そういう意味ではほとんど似ちゃあいない。
でもね、触れると波紋のようにどこまでも広がっていきそうな宇宙を感じさせる広大なスケール感覚。その宇宙の中で築かれている、星々を統治する政体の威風。その政体の中でそれぞれの立場で己が為すべきを為さんとする人間たちの生き様。
そしてなにより、この広大な宇宙の中で偶然にして必然のように出会う、少年と少女のボーイ・ミーツ・ガール。
別にこの二人の出会いは劇的でもなく、特異でもなく、あり得る普通の出会いに過ぎないのです。その後も最後に到るまで、セーヤとラリエナの間には劇的な何かがあるわけじゃありません。ただ、コンビを組まされたことで会話を重ね、お互いのやりたいようにやり、その過程で相互に理解を深めていくだけに過ぎません。それは当たり前のコミュニケーションであり、そこには奇跡的な何かも、運命的なきっかけも、誰かが仕組んだ予定調和的伏線も何もありません。
それは普通の出会いであり、普通の関係の構築であり、二人にとってかけがえのない絆が生まれる展開もまた、別段特別すぎる何かがあったわけじゃない。
それなのに、いやそれだからこそなのか。
一連の事件が終わったあと、二人の姿に感じるのは、運命であり、奇跡であり、出会うべくして出会った必然のような、胸の高鳴るナニカだったのです。
自らに課した責の海に溺れかけながら強く気高く生き抜こうとする少女と、他者から見れば、本当に些細なことで、無に等しい己の中で彼女を唯一と定めた少年。この二人の間に繋がったものは、とても神秘的で美しく、同時に温かくて柔らかい。
それはまだ萌芽のようなものだけれど、恐らく此の後彼らに降りかかってくるだろう波乱、大難の中で掛け替えのないものとして大きく育っていくに違いない。

今回の事件は、まさにプロローグのようなもの。セーナとラリエナの繋がりが萌芽というのなら、のちのちの激動を予感させる様々な萌芽がアチラコチラで静かに芽吹きだしているのが見て取れる。伏線というほど露骨でもあからさまでも作為的でもなく、ただその治世のあらましとキャラクターたちの立ち位置を描くことで、時代の訪れを予感させるこの静やかながらもどよもすような聳え立つ空気感。
この空気感こそが、痺れるような大物感を感じさせてくれる大元なんだろうなあ。

単純にキャラクター小説としても秀一であることは強く言及しておく。特に、メインの二人であるセーヤとラリエナのそれは、キラキラと輝いていると言ってもいいほど。
俗物のくせに、やたらと有能で遣り手の軍人であるカン艦長と副官トゥバの掛け合いも妙に気持ちのいいものだったし、今回の敵となる二人の男のやりとりも妙味があって、皇帝と宰相のそれもなんだけれど、全体通して会話にインパクト、というか読んでる側に快をもたらすような不思議なパワーがあるんですよね。

この作品、今までの三浦良さんの作品から抱くイメージとは、まるで別物、と言ってもいいかもしれない。初期の頃にあった独特の癖の強さをより洗練させて伸ばしに伸ばし、その上で拙かった部分を解消して先鋭化された所を突出しているように感じさせないバランス感覚と丁寧さで補った上で、どんと丸ごとでっかい器に入れなおしたような。ここまで変われば、根本は変わらないにしてもやっぱり別物だよなあ。ほとんどクラスチェンジだよ、これ。

とにかく、現時点において本作は私の中で最大一押し作品に決定しました!!
売れろーー売れろーー! でも売れても方向性とか軸とかブレるなーー(ムチャ振り