月見月理解の探偵殺人 3 (GA文庫)

【月見月理解の探偵殺人 3】 明月千里/mebae GA文庫

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「おい、れーくん。オイル塗ってくれよオイル。どさくさに紛れて変なとこ触ってもいーからさ」

 夏休み、理解に誘われて初は、交喙と共に、月見月家の管理する孤島にやってきた。そこには月見月家の眷族たちが集まっていた。
 不老不死と自称する金髪碧眼の少年『情報屋』月見月久遠。盲目の少女『暗殺者』月見月真理。そして《死霊招きの呪歌》という、精神感染する殺人衝動ウィルスを持つと恐れられる『魔物』月見月悪夢。

 海辺で休暇を楽しむ初たちだったが、外界から断絶された孤島の別荘で、理解は初に告げる――
「事件を起こすのは君だ。今回は、そう――君に犯人になってもらう」

うん、やっぱりこの主人公は面白い。前巻の感想でも触れていることだけれど、この子は最終的に絶対に小さな勝利を納めてるんですよね。別の側面から言い方を変えるなら、彼は事が起こるのを防ぐことは出来ないけれど、一旦渦中に巻き込まれるとその中で被害を最小限に食い止める事に長けている、と言っていいかもしれない。
彼は名探偵というわけではなく、頭がキレるのでも勘が鋭いのでもなく、基本的に冴えない普通の男の子に過ぎない。でも、彼の能力というものは、例えば真実を暴くことしか能のないイスカや、事件を解決するしか能のない理解たちにとって、とても重大で重要なシロモノなのである。
どうして、理解がこれほどれーくんに拘るのかの理由の一端が此処にあるのではないだろうか。彼女の忌まれし能力を、彼の存在は祝福へと変えてくれる。それが、彼女にとってどれほどの救いになっていたのだろう。そして何より今回、れーくんは強く意図して歪に捻くれ固まってしまった理解の心の奥底を覗き込んで、そこで小さく囁くように救いを求めている声を広い、その意を汲んでくれたんですよね。これまでのように結果として、周りの意を汲んで、ではなくて、理解のために。理解だけのために。理解一人のために。
悪しきを体現しようとする頑なな理解の生き様を、それは穿つのに充分な思いなんじゃないだろうか。
この巻、館モノのミステリーというのは完全に書き割りの体裁に過ぎず、この話の本筋というか最大の目的は、理解というキャラクターの転機を描くことにあったのでしょう。少なくとも、この巻でのれーちゃんによって、理解は自分のキャラクターを完璧に遂行する事が出来なくなってしまった。今後、彼女は変わらざるをえないでしょう。それが、彼女が置かれた異常な環境において、弱さになるのだとしても。
女は一度デレたら、もう取り返しがつかない(w
強かろうと弱かろうと惨劇しかない理解にとっては、結局の所何も変わらないのかもしれないけれど、故にこそその惨劇回避能力を有したれーくんの存在は、彼女に光を振り返る余地を与えてくれたんだろうなあ。
そして、ある意味最初から変わっていない理解かられーくんへの想いと違い、理解に対して踏み込むのをギリギリ間際、本当はちょっとデッドラインを踏み越えたあたりで留まっていた(手遅れともいう)れーちゃんが、今回ついに理解を意識して受け入れてしまったわけで、あれは自分よりも上位においた最優先の位置づけだよなあ。

れーくん、ついに理解にデレ、理解もまたついにれーくんにデレるの巻、でござった。

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