くくるくる (ガガガ文庫)

【くくるくる】 一肇/大朋めがね ガガガ文庫

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ここには海より深い愛がある。
高校入学式の翌日、語木璃一は公園で一人の女の子に出会う。その少女は桜の木の枝に荒縄をくくりつけている。うーん、ひょっとしてこれは首吊りってやつですか? 桜の花びらが降り、少女が宙に浮かぶ……と、同時にぶちんと音がして少女はそのまま落下! 「げうー。もう百二十二回め! また首吊りに失敗!」 ──自殺を試みようとするたびに天変地異が巻き起こり絶対に死ねない少女・なゆた。そんな彼女に一目惚れしてストーキングする少年・璃一。桜の下で巡りあい“括る繰る”でクルクル回る不思議な恋物語のはじまり!
やっぱり面白いなあ、この人の書く話!
一肇(にのまえ・はじめ)という作家は寡作の人で、出している作品の点数は少ないのですが、出す作品出す作品、一風変わっていてそのくせ話として面白いのである。
【桜ish(チェリッシュ)―推定魔法少女】【幽式】ときて、三作目までこの出来栄えときたら、こりゃあ本物でしょう。いやあ、こいつは面白かった!!
自殺だなんだとあらすじからかっ飛ばしているので、こいつはまた青春を拗らせたような陰気で繊細なお話かと思って読むと、思わぬ反撃を食らうだろう。なによりこのヒロインなゆたの自由奔放で闊達、ついでに無軌道で何を仕出かすかわからないという、自殺志願者というにはあまりに明るく朗らかな人柄にまずは面食らい、そして次第に魂ごと引き寄せられていくはずだ。
そしてそんな彼女に一目惚れし、ついついこっそりと追いかけまわした挙句に自称彼女の研究者にして記述者、事実上の公認ストーカーとなった璃一少年の惚けた語りっぷりに振り回され、ぽやぽやとした雰囲気へと飲み込まれていくだろう。
惚けた彼女と惚けた彼。おいおい、ツッコミがいないぞ!? 二人共、自分がツッコミと思っているフシがあるが、どう見てもどう考えても二人共ボケである。おかげで時々収集がつかないくらい状況が明後日の方角にすっ飛んでいく時がある。誰か止めろ!(笑
彼女が死のうとするたびに巻き起こる大騒動も、あんまりにもはっちゃけ過ぎてて大事になっているにも関わらず、なんだか笑えてきてしまう。
屋上から飛び降りたら、突風で煽られた窓拭き用のゴンドラにすっぽりはまって「げうー」とか。うん、確かにこの「げうー」という鳴き方が可愛いのには諸手を上げて同意する(笑

と、なんだか笑い話のコメディみたいになっているけれど、彼女が自殺しようとしているのは遊びでも何でも無く本気の話。今でこそ、あまりの死ねなさにコンニャロー! とばかりに自殺志願者とは思えない元気の良さと勢いで日々をいろんな方向に向かって前も見ずに突っ走っているなゆただけれど、死ぬ覚悟、というのは並大抵のもので持ち得るものではないのだ。勿論、あっさりと何の重みも感じさせず死を選んでしまう人もいるのかもしれないけど、彼女は違う。
彼女には、死を選ばなければならない理由がある。若さ故の浅はかな、だが若さ故の純粋な、思いの発露がそこにある。
そんな彼女の観察者であり研究者である璃一は、彼女に心を惹かれてしまった少年は、結局自分の見失ってしまった在り方を彼女の中に見出そうとしていたんだろうか。
もしこれから本作を読むという方がいるならば、彼についてはフラットな目線で追いかけてあげて欲しい。彼については、かなりぶったまげた。彼についての多くが明らかになったあとに本作を読み返すと、彼の言動についてもかなり変わって見えるので、それもあとのお楽しみである。
彼の求めたもの。彼が彼女に見出したもの。キリングKという人殺しにしてトリックスターたる男の登場によって、彼が見極めたもの。璃一くんの本意とこの物語で描かれる様々な要素には、どれにも因果が絡んでいて、その関連性を繋ぎあわせていくだけでも興味深い話になってくる。
生きるも死ぬもままならぬ不可解で愉快なこの世界で、不思議で素敵な一人の少女に、言うべき言葉を告げるため、その一言を言えるようになるために、その言葉を聞いてくれるようになるために、この物語は紡がれた。
「括る繰る」
不思議で素敵な少女と少年の、少し切ない、しかし楽しく愉快なとびっきりの恋物語である。

あーー、楽しかった♪


しかしこのなゆた嬢って、語尾の喋り方といい性格といい、【アイドルマスター】の星井美希を想起するのは私だけだろうか。あの「〜なの!」という語尾、実際に多様されるのを見るとかなり面白い話方だわなあ。変な女の子、というファクターがこの喋り方でかなり強化されているし。
なんにせよ……なゆた可愛いよ♪