神明解ろーどぐらす 3 (MF文庫 J ひ 3-9)

【神明解ろーどぐらす 3】 比嘉智康/すばち MF文庫J

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 bk1

一学期最後の日。池田十勝は、丹下まりもに些細な嘘をついた。「ねえ、土曜とか日曜とか、昨日の月曜とかにキララと会ったりした? 電話したりとかした?」会ったり、電話したりしていないと答えたのだが、それは嘘だった。そんな嘘をつかなくてはいけなくなった日の前日までは千歳キララ、富良野咲との四人でただただ楽しく下校していた。夏休みまであと二日――。はやくも雲行きの怪しくなってきたパラダイス下校伝説、異変!

ド修羅場キターーーーー!!
うわぁ、これはキツい。誰も悪く無いとも言えるし、みんなが少しずつ悪かったとも言えるし。タイミングの悪さと、留萌の悪意が引き金になって、絶対と思われた友情が脆くも崩壊寸前に。
丹下は辛いよなあ。裏切られたような気持ちになっても仕方ない。これで、千歳がさり気無く問いただしたときに素直に慌ててくれてたら、丹下もあそこまで疑心暗鬼にならなかったんですよね。あの千歳の反応のおかげで、これまでの千歳の言動や性格まで全部信じられなくなってしまったのは、仕方ないしむしろ当然なんですよね。あの質問に対して、千歳が何も知らない振りをし通せるのは、これまでの千歳のキャラクターからして絶対に有り得ない。ありえない以上、これまでの千歳の姿が嘘だった、と思ってしまうのは無理からぬ事なんですよね。
まさか、本当に千歳が知らない、なんて思いもしないだろうし。だからと言って、千歳の秘密を黙ったままにしてしまった十勝が悪いのかというと……あの場合、たとえ丹下やさきっぽがどれほど信頼できようとも、秘密を共有できなかったのはしょうがないんですよ。あれは、脅迫されてたようなものなんだから。言えるはずがない。
ただ、三人とも少しずつ負い目はあるんですよね。十勝は、丹下に嘘をついてしまったこと。千歳は、留萌の事を十勝にだけ明かして、他の二人には打ち明けなかったこと。そして、丹下は十勝に抜け駆けして告白しようとしたこと。その負い目が、三人の行動のタイミングを少しずつずらすような影響が、どうも出てしまってるんですよね。それが今、事態を致命的なものにしようとしている。
この破局間際に陥った展開が起こったのが、四人で下校する最後の日であり、これ以降数週間は夏休みによる期間があく、というのは彼らにとってよかったのか悪かったのか。状況が悪化する可能性もあるけど、逆に冷静になれるチャンスもあるってことなんですよね。
あそこで、丹下にさきっぽが声をかけた時ほど救われた気持ちになった事はなかったですよ。あそこで、さきっぽが声かけてくれなかったら、丹下にはもう行き場がなかったですからね。完全に煮詰まってしまっていたはず。まさか、さきっぽが救いの手になるなんて。一番無軌道で自由人に思えた彼女が、これほど頼もしいと思う日が来るなんて。彼女が居てよかった。まじ良かった。

今回、恋する少女の丹下まりもが、本当に可愛かったんですよね。二巻までで既に十勝に恋してる自分に気づいていたんだけど、ついに彼に告白しようと決意してからの彼女の浮き足立った、もじもじとためらい、何度も頭の中でシミュレーションを重ねて、ついでに恋人同士になってからの事なんか想像したりなんかしてる、幸せそうな姿が痺れるような可愛らしさなんですよね。
一方の千歳キララも、全力で後ろ向きな性格は相変わらずなものの、ネガティブ一直線のくせに陰にこもらず、自分に閉じこもらず、なけなしの勇気を出して十勝に自分の秘密を打ち明け、さらには自分の中に芽生えた十勝への想いを、十勝へとさし出してみせる、その懸命さ、健気なまでの一途な生きざまが、こっちも可愛いこと極まりなくて……。
それだけに、二人が大きな誤解とすれ違い、そして恋という名の真実によってこれまでの仲の良さが崩壊の危機を迎えてしまったのは、特に丹下が傷ついたのは切なかったなあ。
ああでも、十勝なら、十勝なら何とかしてくれる。この男は、下校にすべてを賭けるある種の変人さんだけど、バカだけど、この男の優しさや心意気は絶対に二人を哀しませたままにしないはず。今回の一件は不可抗力と言っていいし、彼自身は目の前に唐突に発生した危険要因に目を奪われていて、現状の四人の間に発生してしまった破局の危機に気づいていないんだけど、それでも事態さえ明らかになれば、絶対なんとかしてくれるはず。
それを信じられるくらいには、イイ男なんですよね、十勝は。
しかし、そうなるとやっぱり鍵となるのは恐らく一番冷静かつ客観的に事態を捉えられるだろうさきっぽになるんだろうなあ。ほんと頼むぜ、さきっぽー。
この四人の下校風景は本当に楽しそうで、読んでるだけでこっちまで満たされるような、幸せな気分にさせてくれるんですよね。リア充って、リア充リア充と安易に使われ、ある種の揶揄ややっかみを込めて使われる言葉だけど、この四人の充実した日々は、素直に素敵だと思えるもの。嫉妬や羨望も湧いてこない、むしろ見ているだけでコチラまで幸福感、多幸感を分け与えてくれるような温かい日々だっただけに、あの楽しそうな日々をどうか失わないで欲しい。彼らにはずっと、四人で楽しそうに過ごして欲しいと思う。だから、頑張れ。頑張れ。悪意に負けるな。すれ違いにくじけるな。どうか、彼女らの恋が辛く苦しく切ない思いでにならず、尽きぬ素敵なものになりますように。

比嘉智康作品感想


しかし、千歳キララの自己分析は何気に的確だよなあ。恐ろしいほど自分のことをよくわかってるw 将来結婚したあとの予測なんて、自分の口癖や旦那の反応を含めて見てきたかのように鋭すぎる。そしてさり気無く、家はちゃっかり自分のものにしているあたり、この娘のネガティブさは妙な所で前向きなんだよなあ(笑