EIGHTH(3) (ガンガンコミックスJOKER)

【EIGHTH 3】 河内和泉 ガンガンコミックスJOKER

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遺伝子を改変した致死率60%を超えるインフルエンザウイルスの紛失。CDCがエイス所長に求めたのは……。
一方のエイスでは、ナオヤの部屋から出るように言われたヒカルが、自分の中の気づかぬ感情をもてあまして父と喧嘩をしてしまう。そして二つの場所の出来事を結びつけることになるのは――……!?
緊迫する事件と、少女の中に芽生えた淡い想いが並走する、待望のウイルス編、開幕!!

ついにきたこれ、遺伝子モノの大真打「ウイルス」編。と、くりゃあ生半可な話じゃあるめえ、と思ったら、うわーーー、ウイスルものっつーよりこれ冒頭はおもいっきりセルシア編再び、じゃないか。
ごめん、セルシアの現状ちょっとナメてたかもしれない。てっきり、「エイス研究所」に極秘に匿われてるのかと思ってた。違うんだな。全然違うんだな。厳密にはエイス研究所内の「ナオヤの部屋」に匿われてたのか。まさか、「ナオヤの部屋」から外に出ることすら厳重に禁止されてるなんて。外を出歩くこともできないのかよ。
それだけ、彼女の能力というのは絶大な利用価値があり、もし彼女がエイスに居ることが知られたら、エイスの本社ですら彼女を利用しようと蠢くかもしれない。彼女の人権など無視して。そのため、公式には彼女は自殺したことになっていて、それでも彼女の生存を疑い、身柄を狙って様々な組織が暗躍している。それほど、危険な状況に置かれているのか。
今回、彼女を釣り上げるために仕掛けられた罠が、とてつもない腹芸、というかダーティーでタフで繊細な謀略なんですよね。
やべえ、諜報戦が極まってる!! 緻密に最初から最後まできめ細かに練り上げられた手のひらで踊らされるようなシナリオとはまた違って、投網のように広がり、蜘蛛の巣のように巧妙に絡めとるようなトラップなんですよね。じっとしていては身動きが取れなくなり、しかし動いたら動いたで狙い撃ちにされる。でも、それがわかっていて、動かざるをえない状況に追い込むという大雑把なようで巧妙すぎる罠。こちとら、恐ろしく気を配って繊細に慎重にこっそりと手を打たないと行けないハメになる。
この仕掛けた側も仕掛けられた側も、お互いに相手が誰なのか、姿も何も見えていないにも関わらず、激烈に繰り広げられる攻防が凄まじい。

同時に、同じターンで個々の登場人物たちの内面にも容赦なくスポットを当ててるのがまた凄い。サスペンスものなら、ここは登場人物は駒に徹するところなんですけどね。それは河内さんとはやり方が違うか。
前巻から、ヒカルの内面の不安定さの描き方が素晴らしいのなんの。ただ、ヒステリーを起こしているのではない、彼女自身わかっているわけじゃないけど、彼女なりのちゃんとした理由とロジックが、彼女の感情の激発や不安定さにはあり、それに基づいてグイグイと状況を引っ張り、また彼女を渦中へと叩き込んでいく。
そこで起こるのは、彼女と真摯に向き合うナオヤやセルシアたちへの想いの確変であり、激動する現状の中で自らを改めて見直すことによる正しい形での人間としての成長なわけである。
ただの子供だったヒカルが、ここしばらくの話の中で、メキメキと大人になっていってるんですよね。自分がどれほど未熟か、至らないか、考えなしか、思い知らされ、打ちのめされ、叩き伏せられ、凹んで沈んで、それでも周りの人達のことを見ていたら、知ってしまったら、うずくまってなんかいられない。自分を哀れんでなんていられない。
これはきっと、彼女が自分の思いにしっかりと向きあうようになれるための成長の話でもあるんだろうなあ。つまり、ヒカルが女の子じゃなく、ナオヤが振り向いてしまうようなオンナになるための、必要過程なんだろう。
おママゴトめいたラブコメをやるには、ナオヤにしてもヒカルにしても、セルシアにしても、子供のままじゃいられない、大人としての立ち振る舞いを要求される世界にいるんですもんね。
ラブコメはラブコメでも、しっかりと大人として責任ある行動と考えを持った人間としてなされるラブコメ、って感じになっていくんだろうなあ、なんて思ったり。
けっこうエグい環境、というか世界観にも関わらず、面白いことに登場キャラはダーティーではあっても善性を信じられるような人もいっぱいいる作品なので、うん、読んでて気持ちよくはあるなあ。
しかし、どれだけ一生懸命でも能力が伴わなければダメなんだよねえ。というか、無能な働き者は無能な怠け者よりもたちが悪いので銃殺しときなよ、とゼークトさんもおっしゃってますし、ね? つまり、ナオヤがトリニティをポイしたのは文句なしに正しい(笑