はるかかなたの年代記 双貌のスヴァローグ (集英社スーパーダッシュ文庫)

【はるかかなたの年代記 双貌のスヴァローグ】 白川敏行/ふゆの春秋 スーパーダッシュ文庫

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この出会いは必然。
ユウとカティアとクリス。
彼方の星でいま、友情が導く物語がはじまる。

「……僕って、トラブルに引き寄せられる体質だったっけ?」
フラムスティード学院の入学式に向かう途中、女性顔に悩む少年・ユウは不良に絡まれる子供をかばう、菫色の瞳の少女・カティアと出会う。
超常能力<換象>を用いてユウとカティアを傷付けようとする不良から、同じく<換象>で彼らを救ったのは、クリスという名の少年だった。
これをきっかけに友情を育み、共に学園生活を送ることとなった三人。
だが、ユウには誰にも言えない秘密があった。
それは、ある時から彼の身体に<チョールト>と呼ばれる人格が共生していること。
しかし、カティアとクリスにもそれぞれ秘密があって?
はるかかなたの物語が、今この時より紡ぎ始められる…!!
……え!? ちょと待ってくださいよ、このカラーの見開き口絵ってけっこうなネタバレなんじゃないの?
かなりあからさまに描かれているので、本編でもその辺さらっと明らかにされているのかと思ったら、何気に巧妙に隠蔽してあるし。キャラ配置的に怪しい人物というのは限定されてくるのですが、それでもこの口絵のネタバレがなかったらもっと驚いてたと思いますよ。それくらいには上手く迷彩掛かってたように思う。
シーンの選出としては見栄えのするイイシーンだし、間違ってはいないんだけどちょっとこれはしくじってる気がするなあ。

と、思わず本の作り方に文句が言いたくなるというのは、それだけ中身に満足していたって事なんでしょう。これでどうでもよかったら、この程度の瑕疵なんて気にも止まらないでしょうし。
富士見の良作ファンタジー【黄昏色の詠使い】に良く雰囲気の似た面白い新シリーズですよ、とおすすめいただいたのですが、なるほど異世界での学園モノ。主人公がショタ少年という表看板もそうですし、どこか上品な雰囲気と繊細なキャラクター像は、【黄昏色の詠使い】を良く想起させます。と、同時にこの作品にはちゃんと独特の、この作品ならではの色というものがしっかりと浮かび上がっている。かなりしっかりとした作りの、基礎部分と上へと伸びていくための意志と技術が十分に充ち満ちている、先が楽しみなシリーズだ。
本作の作者は、元々電撃でデビューしていて、私もデビュー作は読んでいるのですけど、確か一冊読んでそれ以降は手を出してなかったんですよね。記憶によると一巻の段階では作品の世界観やキャラクター、物語の展開にしてもハリボテみたいで奥行き密度が感じられず、ああこりゃだめだなと早々に放り出した覚えがあるんですよね。
それからすると、まるで隔世の感。なるほどなあ、あの筆にしっかりとした肉付けと奥行きがなされると、こんな風な作品になるのか。面白いなあ、最初がどれほど拙くても、メキメキと上達する人はするんですよねー。それなりに見極める目は肥やしてきたつもりだけど、まだまだ先行きを見誤るケースは枚挙に暇がない。

さて、本作の中身のほうだけど、意外と最初から登場人物が多いんですよね。主要はあくまで三人だけのようだけど、その三人のうちの一人は別の人格を内包しているから実質は四人。さらに、重要な立ち位置にあるだろうサブキャラクター、サブと付けるのも戸惑われるくらい中心核に近い位置にいるな、そんな人が2、3人はおり、さらにもそっと動く人たちが増えてきそうな雰囲気なので、かなり初期配置が多い塩梅なのだけど、決してごちゃ付いているってことはないんですよね。上手いことキャラが立ってる。変な意味で個性的なキャラ、というのがいないのも特徴的といえば特徴的か。属性やレッテルを際立たせてキャラを立たせるわけじゃないのに、誰が誰か区別つかない、みたいなことはないんですよね。それぞれに非常に丁寧なキャラクター造成がなされているようにみえてくる。
それぞれの出自や能力、そして人間関係も、物語の根幹に携わるように仕込み済みか。今のところ、彼らの出会いというのは偶然としか思えないのだけれど、確かに偶然と言うには出来すぎの感もあるんですよね。それぞれに、持ち得ているものが特殊すぎる。もしこれが誰かの意図によるものでないとしたら、これこそ運命的な出会い、というものとして描かれるべきなのかもしれないなあ、運命というのは美しいもの、というイメージがあるからして。

とりあえず、会長はなかなか美味しいポディションを初っ端から奪っていきやがったなー(笑
カティアのユウへの感情の揺らぎと想いの芽生えというヒロインに相応しいクライマックスターンを、エピローグで見事に掻っ攫っていってしまったがな(笑
これは、なかなかイイ修羅場を期待できそう。