レイセン  File2:アタックフォース (角川スニーカー文庫)

【レイセン File2:アタックフォース】 林トモアキ/上田夢人 角川スニーカー文庫

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街に漂う悪霊を祓う神霊班の仕事に慣れ始めたヒデオ。ところがある夜、精霊を操る少年少女グループ“フォース”と出会う。彼らは悪霊を祓うどころか、集めているようで……目的も正体も不明のフォースと激突!

これはまた、上手いことステージを下げてくるなあ。このステージというのは、そうですね、深度と言い換えてもいいかもしれない。世界の裏の裏のそのまた裏、そのどこまで関わっているのか。
例えば、この物語の主人公であるヒデオは、先の聖魔杯で上級精霊や魔人たちと渡り合い、闇の神と交神までした人物であるわけです。それに対して、ここで出てくるフォースという若者たち、彼らを利用しようとする企業人たちは、天界や魔界の存在どころか、アウターや魔人や精霊といった闇の存在すら知らず、この世界に第三世界と呼ばれる領域があることすら知らない人たちなわけです。
ヒデオや睡蓮と、位置している深度がまったく違ってしまっているのです。
とはいえ、ヒデオもまた、アンリ・マユやウィル子と関わり、聖魔杯を通じて第三世界について幾許かの知見は得て居るものの、その立ち位置は限りなく一般人側で、【お・り・が・み】のメインキャラクターたちと比べるとまた違ってきてしまうのですが。
そう思い返してみると、【お・り・が・み】から【戦闘城塞マスラヲ】にシリーズが移行した時も、しっかりとステージは下がってるんですよね。そういえば、マスラヲが始まったときはなんだか前作から比べて著しく世界観のスケールが下がってしまったみたいで、これ大丈夫なんだろうかと不安を抱いたものでしたが……これがまったく杞憂どころの話じゃなかったわけで、十分以上に物語は盛り上がってくれたのでした。
なので、こちらでもその点、スケールがこじんまりとするんじゃないか、については全然心配してないんですよ。物語の舞台となるステージは下がっても、個々人が立っている深度は代わっていないわけで、アウターはそのままアウターであり、勇者は勇者、魔人は魔人、クラリカはクラリカなのですw 彼ら彼女らを見ている人の立つ深度によって、アフターなどの存在はその在り方から力の強さ、第三世界においてどんな風に見られているかなど、不鮮明になっていき、彼らがどういう存在なのか未知数のよくわからない得体のしれない人たちとか、なんか凄いのかもしれない変人、というふうにしか認識されなくなってしまうのですけどね。
端的に言うと、知らない人からすると、その凄さや恐ろしさが分からない、理解出来ないというわけです。でも、理解出来ない、認識できないことと、彼らが持っている本当の力は何らの因果もないので、幾らステージが下がっても、彼らの格はいささかも下がっていないのです。わからないだけでね。だから、えーっと、何が言いたいんだったっけ。
もうちょと違う事を書きたかった気もするのですけど、思い出したり思いついたりした範囲で書くと、ああいう本当は怖い人達が後ろのほうでドンと座っててくれると、ニヤニヤしたり、カタルシスを満たしてくれるような展開を容易に引き出してくれるということなんですよね。
この類の悦は、ある種の情報上位による優越感に当たるのかもしれないんですけどね。

そういえば、この深度の測り方からすると、翔香さんってかなり複雑な所に立ってるんですよね。自身、神殺し四家の出自で、みーこの本気と立ち会うほどの深い闇を覗き込んだ経験がある一方で、霊感が無いことやみーこに恐怖心を植え付けられたために、神霊班に勤めながらも第三世界の側には殆ど首を突っ込まずにこれまで生きてきたので、第三世界側についてはヒデオみたいな一般人ほどではないけど、あまり知らずにいるんですよね。そして、実力は並みの、いや高位の魔人でも一蹴する程の剣腕の持ち主ときた。恐ろしく極端にバランスが悪いんですよね、彼女。それが、ちょうどヒデオを加え、闇側と俗世の境界の狭間くらいで仕事をする今の神霊班にはぴったりなのかもしれないなあ。

後半はその翔香が主人公の殆ど独立した中編、というか過去回想だろ、これ。ミスマルカの方にも出ていた葉多恵さん、ここでようやく登場だったのか。ミスマルカの方の話だと、どうやら長谷部の人間、それも翔香に斬られた事があるような事を言ってたのだけど、これまでの【お・り・が・み】【戦闘城塞マスラヲ】を通して、翔香に斬られた魔人ってテロリストの女くらいだったんですよね。あの女と葉多恵って多少設定面で似通ったところはあるものの、どうも同じ人物に見えなかったので首をかしげていたのですが、なんだよまだ未登場のキャラだったのか。
後半の中編【隠切り】は、元々【お・り・が・み】の外伝として準備されていたものらしいので、そうかミスマルカ書いてる頃は彼女の設定というか、キャラの存在はしっかりと出来てたわけか。なるほどなあ、葉多恵さん、なんで伊織の末裔の所に一緒にいるのかと思ってたんだけど、翔香が伊織とくっつくっていうのなら、翔香が預かってる葉多恵もくっついてくるわなあ。納得。

そして、精霊怖い(笑
久々に出演のエリーゼが色々と酷かったw いや、彼女はどちらかというと犠牲者の方なんですが。ツンデレ?

林トモアキ作品感想