ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫)

【ココロコネクト カコランダム】 庵田定夏/白身魚 ファミ通文庫

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太一は、過去をやり直したいと思う?

冬休みを目前に控えた終業式。文研部のメンバーは、謎の文字を見つける。「永瀬・稲葉・桐山・青木」、そして「12時〜17時」。誰が書いたのか、意図すら分からず首をひねる5人。だが彼らは12時に、信じられない光景を目にする。子供に戻ってしまった伊織と唯、ふたりは身体と精神が幼くなっていて……!? 17時にピタリと止まる奇妙な条件、姿を現さない<ふうせんかずら>、さらにただひとり現象が起こらない太一に、謎の影が忍び寄る――! 愛と青春の五角形【ペンタゴン】コメディ、大波乱必至の第3巻!!

予てからの懸念・鬱積・劣等感を解消された稲葉姫が、とどまるところを知らずに絶好調なんですが!?(爆笑
いやあ、この娘、さっぱりとした外面とは裏腹に中身はかなりジメジメした良い感じの子だったのに、吹っ切れたらこれかよw 普段は今まで通りなのに、ふとした瞬間メチャクチャにデレやがる!! さすが「欲望解放」の時にいの一番に速攻で太一を押し倒そうとした女だ。
ただ、彼女が吹っ切ったのは恋愛における人間関係だけじゃなくて、仲間に自分を曝け出す事を恐れなくなった、という点も重要なんですよね。さり気無く、稲葉は今回の一件でもビビリまくってる事を、とっとと最初の方に吐露してるんですよね。これまでは最後の最後まで隠そうとしていたのに。弱い自分を隠さなくなった。隠さなくなった事で、ホントに強くなったよ、稲葉は。表の強気の顔が、内側の弱い自分を隠すための仮面じゃなく、本当の芯と身のある彼女の顔になったような気がする。
実際、今回の一件では最後まで稲葉が一番安定して、みんなの支えになってましたもんね。

にしても、このシリーズの登場人物の内面を抉り出す行程は、相変わらず圧巻とすら呼べるほど徹底している。外科手術か、と思うほどに的確にそれぞれの人格、精神、人間関係の瑕疵となっている部分を摘出していくんですよね。その上で、病根を綺麗に取り除き、悪化した部分を良化させてしまう。
いや、それだと他人が治療しているみたいに聴こえるな。このシリーズの一番素敵なところは、問題点を突きつけた上で、それぞれ当人に自分の力で自分の中に鬱積した問題や壁となっているものを乗り越えさせる所なんですよね。誰かに救って貰うのではなく、自らの意志で傷に向き合い、自分の力で乗り越えさせる。とはいえ、それを独りではやらせないんですよ。他人に任せきりで救って貰うのではないけれど、自分独りだけじゃ頑張れないところを仲間に助けてもらう。自分を信じること、仲間を信じること、その両方を輝かせ、その人当人の成長と同時に仲間同士の絆が深まっていく。
こと、「成長」という主題については、古今振り返ってみても屈指の作品だと思いますよ。一巻で垣間見えた主人公の太一のズレた救済願望は、2巻以降なりを潜めていますし。2巻でけっこう痛い目見ましたもんね、太一は。自分のやり方で手ひどく他人を傷つけてしまいましたし。
まあ未だこいつだけは、成長しているのかしていないのか、未知な部分があるのですが。
でも、人として成長し、視野が広がり、心に余裕が出来ることは、果たしてただただ素晴らしいだけなんだろうか。若い間は、幼い間は、未熟ゆえにまだ見えなくてもいいような事もあるのかもしれないなあ、と最後の伊織のふとした気づきを見て、そんな事を思ったり。
青春ってのは、周りが見えないことで成り立っている部分もあるのかもしれないんですよね。稲葉姫の浮かれっぷりも、まあ見えてないもの、見ないようにしているものがあるからこそ、って部分もあるでしょうし。三人の楽しい時間ってのは、現状が維持されているからこそ、ですもんねえ。

さて、太一たち五人組、個々人の問題については、今回唯と青木がドンと停滞の壁を破り、伊織が常々悩み続けていた問題が解決したことで、概ねクリアされてきたんですよね。まだまだ底を浚えば、この五人組を上積みさせるものはあるかもしれないですが、気になるのは「ほうせんかずら」側のこと。
これまでだって理不尽で意味不明だった「やつ」の意地悪ですけど、今回はそれに輪をかけてワケの分からない事になっていた。しかも、ワケの分からないうちに向こうに勝手に処理されてしまっていたし。
ただ、訳がわからないなりに、無軌道な顛末故にうっすらと見えてきたものもある気がするんですよね。
どうも、彼ら五人が巻き込まれるのは、やつらの娯楽のタメではないのではないか、って所なんですよね。以前から薄々分かっていたことだけど、どうも奴らには明確に、五人に成長を促そうとしている節がある。それも、出来なかったら処分してもいい、というくらい乱暴で強引な考えを以て。ほうせんかずらはむしろ穏健派と言っていいくらいなのかもしれない。
判断材料になる情報が足りなさすぎるので、想像でしかモノが言えないんですけどね。にしても、ここまで情報が少ないというのも、ある意味すごいなあ。

個人的には、太一二股でも全然良かったので、ラストの伊織の発見には驚かされたのだけれど、こりゃあもう人間関係にももう一波乱ありそうだ。せっかく安定した稲葉姫も、荒れるぜこりゃあ。

シリーズ感想