百億の魔女語り1 オトコが魔女になれるわけないでしょ。 (ファミ通文庫)

【百億の魔女語り 1.オトコが魔女になれるわけないでしょ。】 竹岡葉月/中山みゆき ファミ通文庫

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全国制覇2回、MVP獲得。クローブでは敵なしの実績を誇るアルト・グスタフ。しかし彼にはどうしても欲しい最後の勲章がある――それは、カイゼル魔術学院の卒業証書。「甲種魔術じゃ競争率高くて即死。俺には乙種魔術の中でもどマイナーな魔女術しかない!」親友ナナイの呆れ顔を尻目に大戦の英雄・大魔女リリカの元で卒業実地研修を受けることになったアルトだが、待っていたのは3人の美少女と……!? ちょっぴりウィッチなファンタジーラブコメ!

「オトコが魔女になれるわけないでしょ。」なんてサブタイトルを掲げてますけど、男の魔女の話をカコに書いていたのを私は忘れてないぞ(笑
そもそも、竹岡さんの作品を読み始めたのは、件の【東方ウィッチクラフト】からですからね。そもそも魔女という言葉が日本で当て字されてしまったおかげで誤解されているが、本場欧州ではウィッチとは決して女性を指すものではない、という話を知ったのは、この作品からなのですよ。魔女の使う呪術、所謂ウィッチクラフトというものについての基本的な知識についても、この作品を読むまではまるで知らなかったですしね。ラブコメとして意外にも、魔女入門編としても大変楽しかった覚えがある。
そんな、魔女については一家言ある竹岡さんの、振り返ってみるとファンタジーって実は久々だったんですよね、これは意外。【東方ウィッチクラフト】のイメージがあったから、【シャップル】を経てもファンタジー畑の人というのが焼きついていてたんだなあ。

というわけで、肝心の中身なんだけど、詳しいところはネタバレの大どんでん返しに抵触してしまうのであんまり触れたくないんだけど、これ終わってみると主人公のアルトの立場というか、主人公としての在り方が想定していたのと丸っきり逆転してひっくり返てしまったのには随分と驚かされた。
いやね、あらすじ読んでのパターンだと、それまで自分が知らなかった世界に飛び込んだ主人公が、自分の得意のジャンルを活かしつつ、固定概念を打ち砕かれながら新たな見地を得つつ、視野を広げて成長する話、というパターンに普通は行くはずなんですよね。実際、ほんとに終わりの終わりまでそう信じて疑わない流れだったんですよ。それが、終わってみると確かに主人公の見識は広がり、魔女たちとの生活を通じて、彼の中に凝っていた問題を解消する知見を得ることになってはいるんですが、問題は結末を見るとこれが主人公を成長させ閉塞を突破させる話、では無かった事に気付かされるんですよね。
それどころか、エピローグにたどり着いてみると、むしろ彼に新しい世界を開いてみせる役割を担っているはずだった、魔女のエーマの方が本来主人公が立っているはずの立場にいつの間にか移動しちゃってるんですよ。
多分、二巻では完全に二人の立場は入れ替わっているはず。このシフトチェンジは上手い、というか面白かったなあ。

どれだけ普段から親しみ益を与えていても、いざ変事があれば真っ先に疑われて排斥の対象になってしまう。魔女というオカルトの存在に対する田舎の人間の偏見と固定観念については、もっと陰惨に拗らせることは可能だったはず。それまでの信頼関係がトントンと書き割りが倒れるみたいに簡単に崩れていく、あのぞっとするような安易な人心の変転の書き方を見てしまうとね、やろうと思えばやれたんだろうなあ、と思えるんですよね。まあ、作品の趣旨と違うから、あっさりと対抗してましたけど、ちょっとそっちのネガティブな方向の話も怖いもの見たさで見てみたかった気もする。
あと、魔女リリカがあれ、というのはどうも怪しい気がするんですよね。幾ら何でも猿すぎるだろう(笑
他に並ぶものなし、と謳われるほどの魔女を、果たしてそう簡単に猿にしてしまえるような同格の魔女がいるのかどうか。あの説明はどうも怪しいんですよね。それに、一番上の姉弟子のファニー。彼女、どうも出来すぎのような気がするんだよなあ。彼女のやってることって、弟子の範疇を逸脱しているような……うん、そうだよなあ。多分、そういう事なのだろう、と予想する。