パパのいうことを聞きなさい! 4 (スーパーダッシュ文庫)

【パパのいうことを聞きなさい! 4】 松智洋/なかじまゆか スーパーダッシュ文庫

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「あたし、家出するから!」
しっかり者の次女、美羽を訪ねて来る突然の来訪者。
新たな事件に新米パパ、祐太の度量が試される!?

大学一年生の瀬川祐太は、姉の事故をきっかけに血のつながらない三姉妹を引き取ることになる。
ひとつひとつの小さな出来事を積み重ねて、次第に家族の絆を強めていく四人は、初めての新年を支えてくれた仲間たちと迎える事になる。
そんな折、小鳥遊家に意外な来訪者が。美羽が三歳の時に家を出た実の母親、サーシャだった。
行方不明になってしまった両親の代わりに、三姉妹を自ら引き取ると言い出すサーシャに、祐太と三姉妹の気持ちは……? そして思い出すらない母親と和解出来ない美羽は、遂にある行動に…。
優しさ満載で送るアットホームラブコメ、待望の第四幕!

「家族の絆に血のつながりは関係ない」という種類の言葉って、往々にして血の繋がりが無くても家族の絆にかわりはない、という風に使われるんだけど、この作品が素敵なのは、先の言葉の文字通りに、血がつながってるつながっていないに優劣、価値の上下をつけずに、たとえ血が繋がっていなくても変わらない家族の絆と、血の繋がりの大切さを両方掛け替えのないものとして扱っているところだな、と今回、美羽の実母であるサーシャが来訪した事で改めて思いましたね。
小鳥遊家の詳しい過去を知るサーシャが色々と話してくれた事で、どうして小鳥遊家に母親の違う三人の娘が集うことになったのか、どうしてこの家庭が今の形になったのか、美羽とサーシャの真実など、こうして詳らかになると件のお父さんの大人物ぶりが透けて見えてくる。きっとこの人も、本来はラブコメの主人公タイプの人だったんでないかねえ(苦笑
何にしろ、血縁関係にない者同士が寄り添って家族という形を為す事の掛け替えのない尊さ、素晴らしさを描きながら、同士に裕太とその姉の関係や、佐原の叔母さんから垣間見える姉の姿、色濃く残るサーシャと美羽の似通った処など、同じ血が通っているが故の繋がりや共感、温かさなんかも丁寧に触れているんですよね。どちらも、足りないところを補うように紡ぎ合っている。そして、見返りなく心から手助けしてくれる友人たち。
ああほんとに、これは家族モノとしては素晴らしいわ。泣けてくるくらいに素晴らしい。

今更なんだけど、美羽がまだ10歳の小学生という事実を、まだ自分はちゃんと認識していなかったようだ。この娘の気配りや生活力、姉や妹への細やかな気遣いや、大味な叔父への適切なフォローなど、最初の頃から彼女がいなかったらこの新しい家族は早々に破綻し、幾度もあった危機もことごとく乗り越えられなかったんじゃないだろうか。それほどにこの一家の要となり、大人びた言動を見せていた美羽が十歳というのは、やっぱり信じられんよなあ。十歳と頭では覚えていたけど、実質中学生か高校生くらいに当てはめてこれまで物語を読んでいたような気がする。
それが今回、彼女らしくない本来の子供じみた理屈に合わない感情に任せた行き詰まったような言動に、美羽は本当に小学生だったんだ、という今更のような認識が襲ってきて、うん、けっこうショックだったんですよね。
こんな子供に、この一家は支えられていたんだなあ、と。
戻ってきたサーシャへの、美羽の複雑で自分でもどう仕様も無い感情の描き方が、まだ繊細で丁寧なんですよね。具体的にこういうものである、と明確な形にしてないんですよ。そっちの方が簡単だろうに。モヤモヤとした曖昧模糊とした、本人にも説明できない不定形のものをそのままの姿で描き出し、不安定になっている美羽の様子をしっかりと浮かび上がらせている。
それに対するサーシャの、強引に押すことも出来ず、さりとて身をひくことも出来ない、親の愛情と申し訳なさなど、様々なものに板挟みにされた苦悩する姿、そんな二人の間であたふたとなりながら、安易に身勝手に踏み込まず、でも家族として当然の心配と二人の想いをちゃんと理解し、その上で二人の仲を取り持とうとする努力に勤しむ裕太や空。
先に結論を用意して、筋書き通りに感情の動きも流していくようなのと違って、一つ一つその場その場できっちりと想いを積み上げていった結果、ハッピーエンドへとたどり着いていくみたいな雰囲気が、今回は特に良く出ていたような気がします。
ぶっちゃけ、サーシャさんは同居でも良かった気がする(笑

松智洋作品感想