蒼穹のカルマ6 (富士見ファンタジア文庫)

【蒼穹のカルマ 6】 橘公司/森沢晴行 富士見ファンタジア文庫

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先日、本巻の表紙とあらすじのあまりの酷さに興奮してしまい、ついつい記事で触れてしまったんですよ。

ものすごく幸せそうな顔をしながら鷹崎駆真、死亡!?
臨時のニュースです。本日、蒼穹園中央都にて、鷹崎駆真さん(17)が遺体で発見されました。詳しい死因は調査中とのことですが、現場には大量の血が確認されていることから、出血多量によるものと推測されています。

さっぱり意味の分からないあらすじも相俟って、悪ふざけもここに極まった。と、考えていた自分は相当に甘かったらしい。
確かめてみると、五巻の感想記事の冒頭でも自分、おんなじような事を語ってるじゃないか。くそっ、またやられてしまったのか。
この明らかに巫山戯きったと覚しき表紙とあらすじ、実際中身を読んでみるとあながち間違っていない、どころか「だいたい合ってる」という事実が厳然と存在しているのである。なんだよ、このあらすじとだいたい合ってるって!?
なんだってこの作者は、ここまでのカオス展開をここまで精緻な計画性に基づいて構成できるんだ? 2巻以外の1、3、4、5巻、そしてこの6巻まで、どれもぶっちゃけ一発ネタの打ち上げ花火みたいな、一度大きく爆発すればそれでおしまい、みたいな本来ならばどう考えてもその場限りの先行きのないネタなんですよね。確かに、その場では大ウケして大爆笑、破天荒に見えて調和の取れた美しい構成に拍手喝采、なんだけどそこで行き止まり。ど派手に無茶をやらかした分、整合性の取りようがなくって行き詰まるはずなのに。
それなのにこの【蒼穹のカルマ】シリーズと来たら、何の問題もなかったかのように一発ネタを違和感も無理やり感もなく綺麗に連結させて、シリーズとして何らの不整合もなく自然な形で続いていくのである。ゴチャ混ぜ闇鍋カオスがカオスのまま整然と続いていくこの狂気をいったい何と表現したらいいものか。魔法みたいだ。
いや、マジでナメてたかも。この作者、本気で異才かもしれない。冗談じゃなく並みじゃない。どっかおかしいよ、絶対。デタラメなだけならここまで仰天しない、デタラメにも関わらず計算され尽くしたかのような美しい式が構成から垣間見えるのが凄いのだ。いやいや、絶対行き当たりばったりなんだろうけどさ! 行き当たりばったりでここまで出来るって、それはそれで凄いじゃないですか!? 計算通りにしても行き当たりばったりにしても、どちらにしても異常だ、これは。

肝心の内容であるが、今回もまたぶっ飛んでいる。ぶっ飛んでいない【カルマ】シリーズはもう想像できなくなってきたな。これ、ジャンルとしては何なんだろう、いったい。ファンタジー? SF? シスコンラブコメ? 最初からワケが分からなかったが、そろそろ何が訳がわからないのかもわけが分からなくなってきた。
何にせよ、在沙祭りである。様々な在沙が登場し、駆真を姉さまと慕うのだ。まさに、駆真にとっての現世に現れた桃源郷、幸せすぎて死んでしまいかねない天国である。
……まさか、本当に死んでしまうとは思わなかったんだが。
世に稀に見る酷い死に方である。
ものすごく幸せそうな顔をしながら鷹崎駆真、死亡!?
まさか、これが真実だと思う人がいるだろうか。比喩だよな、普通。普通、あんな死に方するとは思わないよなー。実際、ギャグ漫画でもあんな死に方するやついないよ。
それを、真面目にやってしまうあたり、いや真面目なのか? 兎に角本筋でやってしまうあたりがイカレている。それだけでもオカしいのに、それをSFの時間ループものでやってしまうという、SFの無駄遣いと考えるべきなのか有効利用とするべきなのか。
いやしかし、阻止する目的である駆真の死に方がアレなだけで、一応内容としては駆真の死を回避するために何度も時間ループを繰り返して死亡要因を排除し、裏で動いている黒幕をあぶり出し、そいつを倒すための方策を築いていく、あとの在沙に託していく、という意味では正しくループものを踏襲しているというべきか。なんか、違う方向で槇奈が繰り返しでひどい目にあってた気もするが(苦笑
しかし、在沙は自己が薄いというべきか、他人に影響受け過ぎなんじゃないだろうか。12歳から五年で、師事する人によってなんであそこまでキャラが変わるんだよ!

今回の黒幕については薄々察していたつもりだけれど、彼女だとは分かってもあの人だとはちょっと考えなかった。そういえば、あの人だけ駆真視点で妙な引っかかりがあったんですよね。他については特に違和がなかったので、全然気にしてなかったんですが。

前回和解した駆真と冬香が思いのほか関係が悪くなかったのはちょっとホッとさせられた。もっと駆真は自分から在沙を奪いかねない義姉の冬香を邪険にすると思ってたんですが、不器用な兄嫁を、案外気遣ってるんですよね。自分は駆真は在沙関連についてはもっと人でなしだと思ってたので、結構見直した。
いろいろ酷い目に遭ってる槙奈だけれど、未来在沙の話によると五年後の彼女は相当の腕前、蒼穹園でも屈指の実力者になってるみたいですね。実質、今の駆真よりも上になってるんじゃ。槙奈は不幸というかタイミングが残念なだけで、そんなダメな娘じゃないもんなあ。これは、一応本編で色々とかわいそうな目にあっているフォローはされているということなんだろうか(苦笑

どう考えても今回も一発ネタだったにも関わらず、何か物凄い引きで問題は解消されずに次回へと繋がってしまった。まさか、こんな形でラスボス候補がのさばってしまうとは。
挙句に、ラストには駆真があれである。おいおいおいおい、このシリーズってもしかして巷のあらゆるシチュエーションを網羅でもするつもりなのか!?

シリーズ感想