クインテット!? (GA文庫)

【クインテット! 3】 越後屋鉄舟/せんむ GA文庫

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椿家、解散!?

「静か、だね……」
 二人きりのダイニングテーブルで、幼馴染みのひだりが呟いた――。
 突然押しかけてきた5人の女の子によって、大家族になってしまった椿家。最初は迷惑顔をしていた敬介にとっても、居候娘たちの存在はいつしか大切なものになっていた。

 ボヘミアン・ラプソディーによる誘拐騒動があったりして割と大騒ぎだった家族旅行も終わり、再び始まった賑やかな椿家の日常。だが、ツバメと敬介の買い出し風景がスポーツ紙にすっぱ抜かれたことをきっかけに、その日々は一変してしまう。

 居候娘たちがそれぞれの事情で椿家を去り崩壊寸前のクインテットを前に、敬介は一体どうする!?

表紙見開きのプロフィール枠で筆者とイラストレイターが掛け合いすんな! 吹いてしまったやないかッw

さても、三年ぶりの新刊である。繰り返しの延期延期の果てに刊行予定からも消えてしまい、ああこりゃダメかと諦めてから幾星霜。まさかの突然の復活に狂喜乱舞でありました。
なにしろ面白かったからなあ、これ。
兎に角やたらと登場人物たちのテンションが高くて、どこで息継ぎしていいのかと思うくらいの大ハシャギ。読んでる方も自然とツラレてテンション上がってきてしまう楽しさ満点のハートフルコメディでありました。
後書き読んだら案の定というべきか、息切れで書けなくなっていたとか(苦笑 信じられない馬力で次々と作品を量産していた人が、突然ガス欠になって書けなくなってしまうというケースは枚挙に暇がないけれど、この人は二巻で燃料を使いきってしまったわけだ。まあ、あのテンションを考えたらわからなくもない。
この燃料切れ、というのが厄介で、別にネタが思い浮かばないとかストーリーが思いつかない、というわけじゃないんですよね。それとは別物なんですよね。
ネタやストーリー、構成、プロットやシーン、細かい文章やセリフに到るまで頭の中で出来上がっているにも関わらず、実際に文章にして起こすことが出来ない、という状態に陥ってしまう。後書きでの話を見る限りでは、越後屋さんもそんな感じだったのかな。勘が狂うとはなるほど言い得て妙。そうなってしまうと、なかなか復活するのは難しいと思うんですけどね、よくぞ戻ってきてくれました。よくぞ、続きを送り出してくれました。
正直、三年のブランクもあって作品の内容とかキャラの細かい部分とか読み始めるまで結構忘れてたんですけど、ページ開いた途端に鮮やかに蘇ってくれましたよ。タイムラグ無しでバーーーッと蘇った、うん。なにしろ、中身については三年のブランクなんて無いようなもの。まるっきりあのままのハイテンション! というか、さらにテンション上ってないか!? というくらいに大騒ぎの大暴れ。一番はっちゃけてたのは、プロレス観戦時の小唄の発狂状態だけどな。ハイテンションを通り越して、小唄さんそれ壊れてる壊れてる(笑
ああ、懐かしいな。そうなんですよね、この作品、ハレムモノっぽいけれどその実、完全に家族モノ、兄妹モノだったんですよね.勿論、色恋の感情は混じっていても、敬介、ひだり、小唄、ツバメ、操、遊恋子を繋いでいるのは家族という枠組みであり愛情。敬介のそれは、みんなの兄ちゃん。喧嘩ッ早く短気で我侭、でも人情家で涙もろく実はヘタレなチャキチャキの江戸っこ兄ちゃん。頼りない親父さんに代わって、妹たちを守ろうと奮起する若き家長。改めて見ても、幼なじみの古女房のひだりを除いて、他のヒロインたちは妹ポディションなんですよね。敬介にとって、彼女たちは庇護すべき可愛い妹たち。
でも今回、それぞれに様々な事情を抱えた彼女たちは、まだ学生でしか無い敬介では手が出せない理由を持って、離れていってしまうことになるのです。自らの未熟さに忸怩たるものを感じながら、離れていった妹たちを思い、盛大にヘタレる敬介と、彼を見守るひだりの二人きりの日々。本来なら、主人公とメインヒロイン二人だけといシチュエーションは、淋しさを感じながらも時折甘い雰囲気が混ざってもおかしくはないんだけれど……この火が消えたような静けさは、なんちゅうかあれだなーー。姦しい娘たちがみんな嫁に行ってしまったあとの熟年夫婦の家?(笑
そんなヤサグレた落ち込み方するなよ、兄さんw
よくあるシチュエーションだと思うんだけれど、家族揃ってハイテンションの大騒ぎ、がデフォルトな作品なだけに、みんながいなくなってしまったあとの静けさが余計に沁みるんですよね。このぽっかり穴の空いた感覚は、かなり強烈であり、兄さんのジメジメしてササクレだった様子がまた哀愁を誘うもので、寂しいやら苦笑を誘われるやら。この兄さんは落ち込み方まで古風というか、古きよき江戸っ子だなあ。兄さん江戸っ子だったか知らないけどさ。

とはいえ、いつまでも落ち込んでばかり居るのは、短慮短気で行動あるのみの兄さんには似合わない。自分の未熟至らなさは百も承知、それが自分のわがままなのも百も承知。だが、取り戻すべきものは確かに心の中にあり、確かに瞼の裏に見えている。
ならば向こう見ずに突っ走るのが、椿敬介の兄さんたる所以。
ここで惚れるのが、兄さんが一人で行こうとぜう当然のようにひだりに「付き合ってくれ」と頭さげて頼むところであり、彼が決意するまでを優しく促すように見守り、彼の求めにあったり前じゃん、と言ってのけるひだりの女っぷりなのでした。やっぱり、ひだりはこのファミリーのおっかさんだ。

次は待たされず、最終四巻は来月発売。もう、最初からテンションマックスで間違いなし。さてさて、どこまで青天井にハイテンションになるのか、今からワクワクでありますよ。

2巻感想