シスター・ブラックシープII  林檎と堕天使 (角川ビーンズ文庫)

【シスター・ブラックシープ 2.林檎と堕天使】 喜多みどり/桐矢隆 角川ビーンズ文庫

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漆黒の悪魔にはめられた結婚指輪を壊すため、昼は男装し教会の助祭、夜は伝説の聖女【黒い羊(ブラックシープ)】の二重生活を送る少女コンスタンティン。しかし、助祭の仕事中に事件に巻き込まれ、僧衣を切り裂いてしまった彼女はドレスを着るはめに! さらにその姿を【黒い羊】を追う司祭ユリエルに見られてしまい!?「あなただとわかっているのに、女性に見えて…」司祭の懊悩と悪魔の猫化が加速するトリニティ・ラブ・ファンタジー第2弾!!

グロリアにはしてやられたなあ。あの驕慢な態度には、てっきり底の浅い増長したタイプのキャラクターかと思わされたのだが、ブラック・シープへのあの一言にはそこ迄の意が込められていたとは。コンスタンティンは全く知らないところで上手く利用されてしまったということになるじゃないか。幸いにして、利害が食い違っていなかったから良かったとはいえ、全部終わってもコンスタンティンはグロリアに上手く動かされたことは自覚してても、一体どういう思惑があってのことなのかについてはサッパリの状態にあると思うと、こりゃしばらく手ごわい指し手として裏に表にちょっかい掛けてこられそうだ。
しかし、思いっきりミスリードされたなあ。この作品については裏読みせずにありのままに読んでいたものだから、最初は犯人もその思惑もわからなかったし、あいつが怪しいと思いはじめてもその手綱を引いている人物についてはまったく勘違いしていたし。
代官のレオンも、当初の印象から単に気のいい兄ちゃんだと思ってたんですよね。それが思わぬ激しい情念と重苦しい心の内を抱えている事がわかってきて、ついついその意外な素顔に引きずられてしまった。ほんと、助祭のコンスタンティンに対しては明るく屈託の無い兄ちゃんなのになあ。それだけ、気のおけない相手として見てくれてるってことなんだろうけど……思わぬ味のあるキャラになってきた。
一方のユリエル司祭ときたら、なんか色々な意味でメロメロのフラフラである。純真で清廉で生真面目な人柄が思いっきり裏目に出てるじゃないか(苦笑
妥協とか誤魔化しが自分に対してもできないものだから、ついつい抱いてしまう邪念や自身の正義に反する行動に思い悩み自爆しまくるユリエル司祭は、可愛いと言っていいのかもしれないが、それ以上についつい笑ってしまう。もっと緩く生きてもよさそうなものなのに。その点は清濁合わせ飲みながらも善心を決して失わないコンスタンティンを見習うべきなんだろう。まあ、その濁を呑む方面は司祭には見せないようにしてるんだが、彼女も。
まあ可哀想っちゃ可哀想なんだよね。悪魔の使徒であるはずのブラック・シープに心惹かれ、同じ男性であるはずのコンスタンティンにブラック・シープと同じような心惹かれる感覚に襲われ、とどちらかだけならまだしも、悪魔祓いとしても司祭としても許されない感情を二人同士に覚えてしまった、というのはそりゃ苦悩するわ。
実際は、ブラック・シープはむしろ悪魔と敵対関係にあるのだし、コンスタンティンは男装した女性であり、何より両者は同一人物なのだから、ある意味ユリエルの目利きは確かであり、その胸に芽生えた感情は本物である、という証左であるはずなんですけどね。

悪魔の方も相変わらず他人の迷惑顧みない悪事を働きまくっているのけれど、コンスタンティンを彼女の心の在処など無視して花嫁にしようとしていたくせに、彼女が自分を気にしてくれないことにやきもきしたり、ユリエルを心配する姿に嫉妬したり、コンスタンティンを奪ったユリエルに憎しみを抱いたりと、なんだかその感性、段々と人間みたいになってきたじゃないか。
悪魔と言われているけれど、異教の、というか古くから土地に伝わる祭りによって力を増すあたり、その出自はやはり純粋な邪悪などではなくて、古い精霊や異教の神にあたるものなんでしょうかねえ。実際人の心を弄んだりと悪いことをしているし、デリカシーとか無い奴だけど、妙に憎めない奴ですし。

そしてコンスタンティン。一巻ではヤンチャな暴れん坊だけれど此処ぞというときには随分と女性的だ、なんて描いたものだけれど、今回もその印象は変わらず。それ以上に今回強く感じたのが、彼女が務める助祭という聖職者の立場は、偽りのものじゃないんだなあ、と。今回の犯人の一人に、彼女が切々と訴えた言葉は、とても胸をうつものだった。神に言葉を借りるのではなく、自分の言葉で語りかけ、その人の心に訴えかける言辞だったように思う。本当に聖職者みたいで、なんか感動してしまった。

コンスタンティンとユリエルと悪魔、三人の関係は悪魔が仕掛けた儀式を阻止するためにユリエルがとった行動によって、そりゃもう大混迷を極めることに。ブラック・シープの正体を知らずにいるユリエルにとっては、まだ何も与り知らぬ所なんだが、こいつはこいつで一人で頭抱えて懊悩してるわけだし、三人が三人とも面倒な事になって大変ですねえ、という笑えるような笑えないような事態である。やっぱり笑えるな。苦笑だけどw
なんか、最後の最後にコンスタンティンの幼馴染のエリカが大勘違いの末にトドメ刺していきやがりましたが(笑
誰か、あの司祭助けてあげてーー

1巻感想