羽月莉音の帝国 5 (ガガガ文庫)

【羽月莉音の帝国 5】 至道流星/二ノ膳 ガガガ文庫

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新頭取、爆誕! そして中国進出!?
破たん寸前の日本商業銀行の買収に成功した俺たち革命部。だが想定しうる限りで最悪の人間に経営権を勝手に譲渡し、片山頭取は雲隠れしてしまった! 新頭取がTVや雑誌であることないこと吹きまくるせいで有名になってしまった銀行に、ガンガン集まる定期預金。融資の実態を探ると明らかになった、山のような不良債権。預金者に払う金利2.1%以上に稼がなければ即死確実。そこに満を持して登場──恒太開発グローバル金融商品? そして中国に打って出た革命部を待ち受けるものとは!? 話題沸騰中のビジネスライトノベル第5弾!
恒太の独断専行、どころじゃないな、暴走、あるいは見方によってはクーデターとしか言えない暴挙に呆れ返った前回の展開だったんだが、皆に糾弾されての弁明を聞いて、ちょっとは見直したんですよね。
一応、彼なりの考えがあり、緊急に動かなければならない、という判断があったのか、と。それでも、皆の意見も聞かずに勝手に革命部の方針を無視して、革命部の資産となった銀行を壟断したのはあかんですよ、どう考えたってあかん。それはもう、友人たちに対する裏切りや。
それでも、革命部の仲間というのは上司部下の関係ではなく、あくまで対等な同志であり親友であり家族である。その考えを重視するなら、恒太の行動は彼なりの考えもあったことだし、まだ許容の範囲内なのか、とも思ったのですが……。
その後も、莉音たちの考えや苦労を全く考慮せずに好き勝手し続けてる姿見てると、腹立ってきた。確かに、世間の衆目が彼に集まり、巳継たちはこれまでの好奇の目から遠ざけられ、経営と革命部の活動に集中できたりもしてましたけど、結局その集中して出来たことといえば恒太の尻拭いばっかりなんだもんなあ。否応なく銀行を手中に収めて、無理矢理にでも抱えていた不良債権の問題や、銀行の活用の仕方など一挙に状況は進展したけれど、そんなもんは結果論だもんなあ。恒太の暴走が招いた致命的な危機を場当たり的に回避しようと足掻いた結果であって、計画性なんてどこにも建てる余裕がなかったわけだし。
うーん、やっぱり腹がたつ。これでこいつが何の痛い目も見ずに成功するというのなら、モヤモヤとしたすっきりとしないものが腹に溜まりそうだ。

それはそれとして、恒太のお陰で溜まり続ける銀行預金。しかし、銀行の態勢がまだ整っておらず、しかも日本国内では望外の利率のお陰で、預金が貯まれば貯まるほど借金が膨らむのと同じ構図になり、いきなり破綻の危機。これって、恐ろしくヤバいんじゃないだろうか。資金運用のあてもないのに利率を餌に金を集めまくって、破綻ってよく耳にする詐欺と同じ顛末なような……。
幸いにして、アクアス社長のアイデアにより、証券化構想を主軸に自力で投資先を構築する体制を整えた革命部。だが、国内では既に市場が満たされていた為に、国外にその場を求めることになる。
それこそ、中国!

いや、その展開は理解できるんだが、わからないのが巳継たちの中国リスクへの認識の甘さ。最近の中国問題の盛り上がり以前に、もう何年も前から中国への進出についてのリスクについては繰り返し述べられてきたはずなのに、元々何も知らない巳継はともかく、莉音がその辺随分と認識が甘かったのには意表を突かれたな。
むしろこれは、話の展開上中国の話をしたかったが故に無理やり莉音の危機管理能力を歪めたような形に見えて、ちょっと違和感があった。確かに、恒太の暴走もあって切羽詰った状況もあり、視野狭窄に陥っていた、という状況設定はきちんと敷かれてはいたんだろうけど。
出来れば、これまで散々語りつくされてきた中国リスク、デメリットを踏まえた上で、それでも敢えて中国に進出するに足る輝かしいメリット、があるならそれを魅力的に語ることによって、中国に固執する理由に説得力を持たせて欲しかったんだけど、そこまで意のある話はなかったなあ、残念。危険性についてはねえ、そりゃもう此処何年にも渡ってこれでもかとばかりに言われてる。だから、逆の話があるのならその辺を知りたかったんだがなあ。

そして、陰鬱になるのは、金の話になるとどこをどう走っても暴力団に行き当たる、とでも言いたそうな話の流れ。ぶっちゃけ、社会の構図の成り立ち方がダーティーすぎて、滅入るわこれ(苦笑

さて、革命部のみんながそれぞれにいろんな形で成長してきて頼りになってきたお陰で、革命部部長莉音の当初のような神がかったカリスマ性が少々影を潜めてきてしまっているんですよね。
弱い部分を見せてくれるようになったのは、親しみやすくなったという意味では上々なのだけれど、同時に首領として物足りなくもなっているのです。
だから、また莉音すげえ、と言いたくなるような、世界を覆す革命劇の立役者にして黒幕として相応の、ビックリするような事をやらかして欲しいなあ。

シリーズ感想