喰-kuu- (MF文庫 J う 4-1)

【喰-kuu-】 内田俊/まりお金田 MF文庫J

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大食いの女の子は好きですか?
すぐれた戦士には例外なく、賞賛と敬意をこめて二つ名が送られる。ある者は《氷山に咲く花》と、またある者は《四つの胃袋を持つ男》と、そして彼女はかつて、こう呼ばれた戦士だった――《極大引力》。突然バイト先に現れた大食い少女・井ノ原みのりの勇姿に魅せられた主人公・ハチは「俺と付き合ってくれ」といきなりの告白に打って出る。そんなハチに対しみのりは「これを食べきることができたらお付き合いします」と、三十人前の超巨大ラーメン『食神』を指さすのだった――。大食いに身を捧げた者達の熱きドラマが今始まる!!

大食いという珍しいジャンルながら、夢に敗れ挫折を味わい失意の底にありながら新たな情熱を傾ける先を見つけ、熱意を滾らせ迸らせるという実に真っ当な、真っ当すぎるくらい真っ当な青春小説でありました。
……違う違うそうじゃないッ。あまりにも端から端まで真っ当すぎる!
卒なくよくまとまってて、青春小説としても普通に良く出来ていると思うんですけどね。せっかくの「大食い!」という特異なジャンルがこれじゃあ勿体無い、味気なさ過ぎる。
端的に言うなら  狂気が足りない!!
青春小説である以上、真っ当であることは当然なくらいに正しい。が、しかし器から皮から中身まで全部真っ当じゃあなあ。大食いですよ、大食い? そんなぶっちぎった素材をただただひたすらに正しく調理してどうするんですか。真っ当であるのはコアだけで十分、芯さえ正統であればいい。それを覆う器にこそ、狂気が、狂熱が、常軌を逸した熱量があって欲しかった。まさに、狂乱の殻があってこそ、剥いた中身にある芯たる真っ当さが際立つはずだった。
肝心の大食いがねえ。普通なんですよ。普通。酷く常識的な、理解の範疇にある大食い。正しい論理に基づいた、易しい大食い。
なんだかもっともらしい理論を実しやかに語りながら、実際は何を言ってるのかさっぱり意味が分からない! けど否応なく納得させられちゃうッ、みたいな、正気であることが恥ずかしくなってくるような、自分から狂乱の渦にはまってしまっていくかのような、あの望むべき狂気が無い、無い、無い。無いのである。
普通なんだ……。

普通に真っ当な、理性的で情熱的な、熱くも爽やかな青春物語を求めるならば、この作品は十分要求を満たしています。
なんかこう、勘違いした期待をしてしまっていたんだなあ……はぅ。

一つ、これは残念だったのが、せっかくの料理の描写が特に美味しそうには思えなかったところか。読んでるだけで思わずヨダレが出てきそうな、お腹が減ってきてしまうような、そういう描写がないと食べ物系はちょっと辛いかなあ。ってか、【ベン・トー】と比べる方が間違いか。あれの食べ物の描写の美味しそうなことといったら、常軌を逸したところがあるからなあ。