Xの魔王3 (MF文庫J)

【Xの魔王 3】 伊都工平/万国あゆや MF文庫J

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フェシナス王国王女として公務に復帰したカルセ。彼女は任務で地方に赴いている勇者アティスのことを思いつつも、ともに王都で公務をこなす魔王ミトラスのことが少しずつ気になり始めていた。一方、魔王ミトラスは、モテモテになった姿を見せつけ、改めてカルセに自分を認めさせるため、温泉療養地トゥールに「ハーレムを作る」と言い出す。婚約者であるアティスと仲間であるミトラス、ふたりの間で揺れ動くカルセの心。だが「世界の敵」たる存在・Ⅴ(クィンタス)が、魔物を率い、ついに進軍を始める――。魔王×王女×勇者のトライアングルファンタジー、風雲急を告げる第三巻!

……つまり、魔王ミトラスとはすなわち、願望機だったのか! いや違う、願望機として発動した結果こそが、魔王ミトラスという存在であったのか。彼女の願いを叶えるために現出した存在が魔王だったというのはなんという皮肉なのだろう。
そして、最大の皮肉は単なる装置としてあるはずだったミトラスが、勇者アティスの肉体に宿ったことで人の身に堕ちてしまったことで生まれた世界装置としての齟齬。
それが、人という不完全な存在であるが故の限界となるのか、世界に配置された装置としての精霊としての存在を乗り越え、新たな段階へと進むためのきっかけとなるのか、今こそが瀬戸際にあるということか。
無私なる慈愛の望みの結果が世界を呪い、魔王を生み出した。しかし、魔王は人となることで欲望を知り野心を得て多くのモノを欲するようになる。故に彼は悪を成すものとなり、それが故に魔王では居られなくなり、世界を人の手に取り戻そうとしている。
それを皮肉として見るべきなのか、人の業の悲しさと素晴らしさと見るべきなのか。何にせよこれは、これもまた、正義と悪の戦いとカテゴリーされるんでしょうかねえ。
いずれにせよ、ミトラスは健全とは真逆の悪しき、だね。人間になってしまったことで生まれた余分が、ミトラスにストレスを与えた結果、その解消法としてハーレムと称してあんな事を始めてしまう以上はそう認めざるをえない。ミトラス、ストレス溜めすぎだよw
賢君の息抜きとしてはアホすぎる。カルセ怒るよ、そりゃ。ただでさえ、ミトラスとアティスの間に挟まれて精神的にグラグラと不安定になってるのに。それでも、王族として些かも揺ぎ無く勤めを果たしているのは偉いのだけれど。
でも、カルセにとってミトラスが気になる異性になってきているのは間違いないとしても、ミトラスがなあ……そもそもこいつ、現段階でアティスの肉体に宿ることで基本ベースは男性になってるけど、元々性別が曖昧というか、無いような存在なんですよね。今回なんか、その本性ともいうべき精霊体としての彼女が表に出てしまっていたわけですし。安易に男女の好いた腫れたで括る事が出来る存在なのか。一方のアティスも今は女の子になってしまってますしね。まあミトラスは何だかんだとカルセをかけがえの無い存在として認識しているようだけど、果たしてそれが異性に対するものなのか、人間となったからこそ芽生えたものなのか。かつて、彼が彼女であった時代に願望機としての自己の存在を預ける事となった元聖職者の少女に対するそれと、今ミトラスがカルセにいだいているものは違うものなのか。
もしかして、少なからず今のミトラスは、イーシアの願望機としての役割を置き、カルセの願望機としての機能を果たそうとしている可能性も考え得るんですよね。
彼は人になったのかもしれないけど、でも現在も精霊ファウナであることは間違いない。願望機としての作用が、彼の人としての動機となっている疑いは否めない。
まあ、難しくややこしい事を抜きにして、恐ろしく単純化してしまうと、つまりはカルセのためなんだから、それでもういい気もする。
多分その先に、きっとイーシアが望んだ世界もまたあるのだ。

伊都工平作品感想