カンピオーネ! 8 受難の魔王たち (集英社スーパーダッシュ文庫)

【カンピオーネ! 8.受難の魔王たち】 丈月城/シコルスキー スーパーダッシュ文庫

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魔王と姫、謎を求める!!
王の秘密に迫る探索の手! 護堂はその身を護ることができるのか!?
イタリアが誇る二人の少女騎士が出会う脅威の剣士!?
王の寝所の一端も明かされるミスティックファンタジー第8弾!!

ある日、護堂は東京の女子大に通うはとこのさくらの訪問を受ける。
さくら曰く、いま東京には暴虐の限りを尽くす魔王がいるそうで、その正体を突き止めたいとのこと。
もちろんそれは七人目の神殺し・草薙護堂その人に他ならず…。
困った護堂がとった行動は?
さらには、若き日の魔王・アレクとプリンセス・アリスが出会う聖杯にまつわる事件やエリカとリリアナが騎士となった際に出会った謎の人物との一件など新神話第八弾は珠玉の挿話集!!
とりあえず、護堂さんのみならず、草薙の一族は総じてヤバいというのがよくわかった(笑
なんだよー、護堂さんと前々から名高い爺様だけじゃなかったのか。恐るべし草薙家。男系のみならず、女系の方もアレだったのね。日頃から護堂さんの女性関係にうるさい妹の静花にもしっかりと草薙家の血が混じってる事が発覚。というか、草薙母が爺様に負けない男殺しだったことに爆笑してしまった。なんだよ、草薙家の女は代々「魔性の女」「天職・女王様」ってのは! どうやら静花にもしっかりとそうした血が流れているらしく、濃ゆい草薙護堂の女たちに混じってもまったく見劣りしていない。一般人とか関係ないのな。
その草薙家の血は、分家の方にもしっかり流れているらしく、はとこにあたる香月さくらも、これは相当のタマだ。先のリリアナの調査で発覚していたあの、子供の頃に護堂が結婚の約束をしていたという、あのはとこである。女王様とはベクトルが違うのだけれど、あの並外れた暢達とした鷹揚さは多分、エリカですら一筋縄でいかないぞ。暖簾に腕押し、だもんな。扱いやすそうだから油断するかもしれないが、なにかいつの間にか自分のペースに巻き込んでいるような、肝心の部分でコントロールしきれないところが見受けられる。おそらくこれは、リリアナや恵那ではちょっと無理だ。かろうじてエリカなら、彼女なら上手くコントロールできそうだけど。それでも、この娘についてはなし崩しにハーレムに居座ってしまいそうなところがある。さすがは草薙の一族(笑

シリーズ初めての挿話集。草薙護堂の平穏な普通の一日が描かれているわけだが、実は護堂さんの仰る普通や平和とは、一般的な意味における普通や平和とはかけ離れたものであることがついに露呈する。なんという巧妙な叙述トリック! な、はずがないでしょう(苦笑
このヒト、この期に及んでも自分が普通の高校生だと思ってる節があるんだよなあ。幾ら何でも無理がある。ありすぎる。もし仮に、護堂さんは神を殺してカンピオーネなどになっていなくても、魔術の世界に首を突っ込んでいなくても、一般人であろうとなかろうと普通の学生の範疇じゃねえよ!(笑
最近、とみに女性の扱いに長けてきてしまっているし。日光決戦以降はその傾向もかなり顕著になってきているのではないだろうか。

とりあえず、記憶の改竄をそれは良い手段だ、と何の忌避感もなく安心すらして受け入れてしまう護堂さんはさすがとしか言えない(笑
自称平和主義者なんだけど、護堂さんの清濁併せ呑む性質はやはり巷の主人公の性質からは逸脱してる。善良でイイ人なんだけど、許容できる領域が普通の人と全然ズレてるんですよね。その点、護堂さんは間違いなく「王様」なんですよね。特に荒事が起こらないこうした平穏なイベントのさなかですら自然に護堂さんの「王様」としての一面が浮き上がる事で、護堂さんの語る普通が如何にズレているか強力に伝わってきましたw
しかし、日光決戦以降、リリアナは完全に護堂さんと噛み合っちゃったなあ。以前の空回りっぷり、一人だけヒロインとして置いてけぼりにされていた時期からすると、隔世の感が有る。ホントに、護堂の傍で細々とプライベートを仕切る姿が堂に入るようになってるし。今や押しも押されぬ、護堂の副官、侍従長である。
ただ、リリアナのポディションが明確になったことで、余計にエリカの女主人として、宰相として、奥の院の取りまとめ役としての立ち位置が確固としたものになったのは皮肉な話だけど。
護堂さんも色々と受け入れちゃったのか、以前はエリカが色々と画策するのを困った顔で眺めていたのが、今やエリカが護堂さんを頭にした新たな魔術結社を立ち上げるために精力的に立ち回っている姿を、よくやってくれているなあと言わんばかりに満足そうに頷いている有様だもんな。もう完璧に王様だよ。


さて、今回は護堂さんの話だけでなく、他のカンピオーネ。サルバトーレ・ドニと黒王子アレクサンドルの短編も。特に、アレクについてはまだ本編でちゃんと出ていなかったので、どういうキャラなのか興味を募らせていたところなので、大変楽しめた。
以前、アリスがチマチマした性格などと評していたことと、ちらっと出たときに他の破天荒なカンピオーネたちに比べて生真面目な感じがしたので、もしかしてかなりまともな、珍しいカンピオーネなのか? などと思ったりはしませんよ、ええ。だって、カンピオーネだもんw
いや、それでも概ね良識的な人物であったのは意外でもあり、納得でもあり。基本的に性格もネジ曲がってもいないし狷介な人物でもないし、多少見栄っ張りなところはあるみたいだけど、こういう人柄なら護堂さんとも相性は悪くないんじゃないだろうか。
アリスとのコンビは思ったよりもいい雰囲気じゃないか。護堂さんにエリカが居たように、アレクと奔放なお姫様のアリスとの角のつつき合いは、アレクからすれば心外だろうけど、二人ともなかなか楽しそうである。あの様子見てると、アリスはアレクに夢中のようにしか見えないぞ。少なくとも、本当に天敵同士ならアリスはあんなに嬉々としてアレクにまとわりつかないだろうし、アレクもアリスをやり込めるネタを愉快そうに収集しないでしょうに。
武人や魔術師が多いカンピオーネの中で、アレクは考えてみるとかなり特異なポディションなんですな。言わば、自分の好奇心や知識欲を満たすのを目的としている学徒であり探求者、という立ち位置みたいだし。その為ならば、周りの迷惑省みず、というのは実にカンピオーネらしいw それでも、ちょろっと出てた話からすると、一般人相手には無茶や強引な事は避けてる、というか良心が咎める人らしいので、根はほんとイイ人なんだろうなあ。
ドニなんか、そういうの頓着しなさそうだし。でも、護堂さんやプルートー・スミスも基本的にイイ人ですし、今代の七人のカンピオーネは比較的話の通じる人が多いんじゃないだろうか。
そういえば、さらっと七人のカンピオーネの最後の一人の名前が語られてましたね。中東は洞窟の魔女、永遠の美少女アイーシャ夫人か……なんか、ヴォバン侯爵並みにヤバそうな予感がするなあw

アレクの話では、さらっとどうやら今後の展開の伏線となる話、「鋼」の最後の英雄についての話が。え!? こんなところで答えが出ちゃうの!? と一瞬驚いたけど、どうやらあくまで候補か、アバターの一つと考えるべきなのだろう、あの英雄は。
魔女たちの英雄の逸話と絡めて、相変わらずこの蘊蓄は面白い。あのメンバーの多くにそんな原典となる由来があることすら知らなかったよ。そして、唯一あの人物にだけ原典となるものがない、という話にも。この作品の蘊蓄話って、話はさして長くないのに情報密度が高くて内容も斬新で論旨も理解しやすく通っていて、論点も非常に纏まっているので、知識欲を異様に満たしてくれるんですよね。そして、その蘊蓄話はストーリーに関係ないどころかとても深く絡んでくるから、ついつい読んでいるこちらも釣られて考え込んでしまう。
さて、かの英雄の特性を踏まえた上で、東西に跨る存在か。一つ、予想する神格はあるんだけれど、あ、もし自分の予想があってるなら、今月出たあのラノベの主人公がそれに当たるのか!?
でも、これはよっぽど世界各国の神話や伝承を深く理解し解釈しないとなかなか的を射るのは難しいだろうなあ。
だが、こうして色々と考えるのは楽しいのう。


シリーズ感想